銅の製錬方法は乾式製錬法と湿式製錬法に大別されます。湿式製錬法は1990年代から生産が飛躍的に増大し、現在は世界の銅生産量(約1900万トン)の約20%が湿式製錬法により生産されています。乾式製錬法は、採掘した銅鉱石を粉砕→選鉱→溶錬→電解精製というプロセスにより銅地金とします。一方、湿式製錬では採掘した鉱石を積み上げるなどして、上部から希硫酸を散布することで銅を浸出し、溶媒抽出→電解採取というプロセスで銅が生産され、乾式製錬に比べて資本・生産コストが低く抑えられます。
世界の銅資源の約65 %は斑岩銅鉱床と呼ばれるタイプの鉱床中にあり、現在の銅生産の主体となっています。通常、このタイプの鉱床では、地表部から深部に向かい、酸化鉱物帯、二次硫化鉱物帯、一次硫化鉱物帯で構成され、それぞれ品位、性状により経済的及び技術的に適用可能な製錬方法が異なります。一般的に、酸化銅鉱は湿式製錬、硫化銅鉱は乾式製錬により銅地金となります。
バイオリーチングは、微生物の機能を利用した湿式製錬方法です。鉄酸化細菌と呼ばれる溶液中の2価鉄イオンを3価鉄イオンに酸化する能力を持つ微生物が使われます。この微生物を活用して、希硫酸を散布するだけでは銅が浸出されないあるいは浸出が遅い硫化銅鉱を湿式製錬することが期待されています。
典型的な斑岩銅鉱床の模式断面と製錬方法の関係図
JOGMECでは、鉱石の低品位化等に対応するために、低環境負荷・低コスト技術として注目されているバイオリーチング等による硫化銅鉱石の湿式製錬技術開発を実施しています。JOGMECの金属資源技術研究所(秋田県鹿角郡小坂町)において、リーチングを促す微生物の探索・評価や、様々な鉱石試料を対象としたカラム浸出試験、チリにおいて実証試験を実施しています。今後はバイオリーチングだけでなく、他の酸化剤を使ったリーチングについても検討を行い、低品位化する銅鉱石の効率的な回収技術の技術開発を進めていきます。