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中国では、図書館向けの電子書籍が普及している。方正グループの電子書籍会社であるApabiは、2009年までに55万タイトルの電子書籍を提供してきたと言う。
中国の電子書籍事情とフォーマットについて、方正株式会社 の河田京三氏に話を聞いた。
■中国の電子書籍事情
北大方正グループは、北京大学が作ったIT企業のコングロマリットで、日本の方正もその一員である。
方正Apabi は、グループ内の電子書籍の会社で、図書館システムの提供からコンテンツ管理・電子書籍販売までの事業をおこなっている。
中国の出版社の85%に相当する500社と契約しており、2009年までに55万タイトルの電子書籍を提供してきた。また、2,000社ある新聞社のうち、30%程度である600紙以上と契約して、コンテンツを提供している。
Apabiのシステムの特徴は、強固なDRMを装備していることである。中国は偽物文化、コピー文化と言われているが、その防止策となっている。
また、CEBXという独自の電子書籍フォーマットを持っている。
■図書館における電子書籍
出版社から預かったコンテンツを電子化して、図書館に販売している。
中国には、図書館は13,000館、大きな図書館だけで5,000館ある。地方公共団体、政府、大学、人民解放軍、共産党も図書館を持っている。そのうちの4,500館が方正Apabiの電子図書館システムと電子書籍を入れている。2000年からスタートし、10年の歴史がある。
中国国外、欧米の主要な大学図書館、ハーバード、プリンストン、オックスフォード、ケンブリッジなどでも、中国語の電子書籍を調べるために、方正Apabiの電子図書館が入っている。
売り上げは、円換算で50億円に至っていない。日本と中国の購買力平価は10倍くらい違うので、それを見込むと500億円相当であり、日本の電子書籍と変わらないレベルである。
図書館を中心に電子書籍が普及しているとは言っても、金額ベースでみると0.5%であり、まだまだ発展をしていくと思われる。
■B to Cのサービス
この電子図書館のデジタルコンテンツを使って、B to Cのサービスも行っている。「番薯」「愛読愛看」というサイトがあるが、まだまだである。電子図書の売り上げの8割が図書館であるため、まだ市場が立ち上がっていない。
「番薯」のサイトでは、「買う」と「試読」ができ、試読では1章程度を読むことができる。中国の電子書籍端末は、Kindleに似ていると言われている。
■電子書籍フォーマットCEBX
方正の電子書籍フォーマットがCEBXで、日本版をJEBXと呼んでいる。PDFのようなレイアウト固定の電子書籍とEPUBのようなリフロー型電子書籍の2つの特性を1つのフォーマットに含んでいる。
中国語では、レイアウト固定を「版式」、リフローのことを「流式」と言うが、「版式」と「流式」の両方のデータを生成し、ビューワーのモード切替えでどちらを見ることもできる。
方正では、日本向けに総合的な電子書籍ソリューションを提供することを考えている。JEBXとは、CEBXを拡張して日本語の縦組やルビなどに対応するフォーマットである。
現在開発中のスマートレイアウトでは、ビューワー側で字詰め指定や段組の変更が可能になる。
日本では、コンテンツの電子化に向けての作業を行っている。また、中国向けに電子書籍を出したいという企業のお手伝いもしている。