極貧生活を送って生活保護を求める30代だった若者を「若いから仕事は見つかる」と追い返した行政の態度は無慈悲すぎたのか-。大阪府岸和田市の男性(41)が同市を相手取り、生活保護の申請却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が10月31日、大阪地裁であり、田中健治裁判長は市の処分を取り消した。男性は中卒で特殊な技能や資格がなく、「組織的な人間関係のトラブルから仕事が長続きしない」という性格。「もっと頑張れ」という声も聞こえてきそうだが、男性は10円で買ったパンの耳を食べ、たらいの風呂で湯浴みするという困窮生活を送っていただけに、裁判長は「生活保護法の解釈を誤り違法」と市側を指弾した。
不遇な幼少時代、重ねた努力
判決や男性の話などによると、男性は大阪府大東市で生まれ、小学生の頃に両親が離婚して母子家庭で育った。母親は生活保護を受給したが、そこから近隣住民の冷たい視線に悩まされ始めた。
「母に頼んで当時流行っていたローラースケートを買ってもらったら、近所の人に『あんたのうちは生活保護やろ。今すぐ返してこい』と怒られた。泣く泣く返品しに行った」
学校でもいじめに遭い、小学5~6年生で不登校となった。勉強は遅れがちとなり、昭和63年に中学を卒業後は高校に進学せず、地元のレストランで調理の助手や洗い物の業務に就いた。
仕事も安定しなかった。レストランを半年で退職後、スーパーで1年、清掃業務で2年勤めた後、自宅に1年ほど引きこもった。そこからコンビニ弁当の製造のアルバイトを始めたが、やはり長続きせず8カ月で退職。いずれも職場の人間関係や風邪をひいて欠勤するなどしたことが原因だったという。