500万記事(Justy Finder)の解析でみえた報道の深層
ウイルスじゃねーYO!(1)
会社がら、インターネットセキュリティ関連の記事に触れる機会は多いのですが、しかたなく使っている言葉というものがあります。それは「ウイルス」です。インフルエンザに感染する原因などになる、いわゆる人間が感染するウイルスではなく、コンピュータに感 染するウイルスのことです。
現実界でも「それウイルスじゃなくて細菌だよね」っていうことは、ままあります。それと同じことで、コンピュータに害を及ぼすプログラムにもいろいろあり、それを説明する言葉もあるのですが「ウイルス」に比べていかんせん、わかりづらい。
初めに米国の学者によって「ウイルス」が定義されたときは、ほかのコンピュータプログラムをいじること感染能力を発揮するものを「ウイルス」としています。そのためワームやらトロイの木馬やらはウイルスに含まれないことになります。後になって経産省も定義していますが若干異なっていて、これは現在広く使われているウイルスの定義に近いものになっています。
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ということで、世間の波には逆らえず、仕方なくこういう悪いプログラムはひとまとめに「ウイルス」って言って(書いて)います。経産省の定義に従えば間違っているわけではありませんが。やっぱり最初に定義された方に従いたいじゃないですか? それに単にウイルスと言った場合、最初の方か、経産省の方か、どちらを指しているかもわからないですし。
「マルウェア」「ウイルス」誰が使う!?
じゃあ、悪意のあるプログラム全般をなんて言えば良いのかというと「マルウェア」という言葉があります。「悪意のある」って言葉を英語で言ったmaliciousの「マル」とsoftwareの「ウェア」を組み合わせた造語です。そんなわけで、有害なプログラム全般を指しては「マルウェア」と表現するのがより正確ですが、Justy Finderが収集したニュース記事を分析してみると、ウイルスが2013~2014年に4643本使われているのに対して、マルウェアは同期間で967本しか使われていません。普通に考えてウイルスはマルウェアの一種のはずですから、マルウェアのほうが多いはず。それなのにこの本数の差。一体なぜ!?
そもそも、マルウェアとウイルスって言葉はだれが使っているのでしょうか? 検索結果を見てみると「マルウェア」と使っているのはほとんどがITベンダーのプレスリリース(をニュースとして掲載したもの)関連。「ウイルス」は報道機関をはじめいろいろなところで使っていることがわかりました。簡単な話です。そりゃあ報道機関が使っていれば、みんなウイルスって言います。
で、これは解析結果から導き出される推測の域を出ませんが、日本でセキュリティソフトを出すベンダーは大半が実は海外の会社。報道機関は当然、日本の会社です。だから日本の報道機関は経済産業省の基準で書き、ベンダーは米国発の基準であるウイルスの用法に従った結果、あてはまらないものを「マルウェア」と言ったのではないでしょうか?
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