Hondaは、ディーゼルエンジンをガソリンエンジンに匹敵するレベルにクリーン化する画期的な新世代ディーゼルエンジン用NOx触媒を新開発、ガソリン車と同等のNOx排出レベルが求められる米国の排出ガス規制「TierII Bin5」排出ガスレベル(社内値)を達成した。この触媒は、触媒内部で生成されるアンモニアによる還元反応を利用し、窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に浄化する世界初の画期的システムを採用している。
新開発の触媒は、排気ガス中のNOxを吸着してアンモニアに転化する層と、触媒内で転化されたアンモニアを吸着して排気ガス中のNOxを窒素(N2)に浄化する層の2層構造を採用。酸素が多いリーンバーン状態でNOxと反応してN2に浄化するためにもっとも有効な物質であるアンモニアを触媒内で発生させることで、コンパクトで軽量なディーゼルエンジン用の浄化システムを実現した。また、ディーゼルエンジンの主要温度帯である200~300℃でのNOx浄化性能も向上している。
2003年の欧州アコードから採用し、その静粛性、動的性能やクリーン性能で高い評価を得ている「2.2L i-CTDiエンジン」をベースとし、燃焼制御をさらに高精度とすることなどで、触媒で浄化する前の排気ガスのクリーン化も実現している。燃焼室の形状最適化、噴射圧2000barコモンレールの採用による噴射時間の短縮、EGRシステムの高効率化などで、NOxやすすの発生を低減しながら、高出力化を実現する燃焼制御を行っている。
今後、こうした排気ガスの浄化技術に加え、セタン価が異なるディーゼル燃料や、OBD(Onboard Diagnostic System:車載式故障診断システム)などの技術的課題に対応し、3年以内に、このディーゼルエンジンを搭載した車を米国で販売開始する予定である。
現在、ガソリンエンジンのNOx浄化には、浄化率が99%にも達する3元触媒を使用しているが、この触媒は理論空燃比で性能を発揮するため、酸素量の多いリーンバーンのディーゼルエンジンでは10%程度のNOx浄化性能しか発揮できない。今回の新開発触媒は、リーンバーンの環境でNOxを効率的に浄化する能力を持つため、ガソリンエンジンに匹敵するクリーン性能を実現した。さらに、コンパクトなシステムのため、乗用車への搭載性も高いものとしている。
新開発「ディーゼルエンジン用NOx触媒」反応メカニズム(イメージ)
- 1)リーンバーン運転時に下層のNOx吸着層に排出ガス中のNOxを吸着。
- 2)必要な時期にシステムが空燃比をリッチバーンに制御し、NOx吸着層のNOxを排気ガス中から得られる水素(H2)と反応させてアンモニア(NH3)に転化。上層のNH3吸着層にNH3を一時的に吸着。
- 3)再度リーンバーン運転になった際に、上層に吸着されたNH3が排気ガス中のNOxと反応し、無害なN2に浄化。