蜜月はいつまで続く? マイクロソフトはOpenAI製モデルを減らす方針か

  • author Thomas Maxwell - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岩田リョウコ
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蜜月はいつまで続く? マイクロソフトはOpenAI製モデルを減らす方針か
Image: DANIEL CONSTANTE / Shutterstock.com

賢い未来プランを持ってるっぽいぞ。

Microsoft(マイクロソフト)とOpenAIは、これまである種共生の関係にありました。MicrosoftはOpenAIに数十億ドルの資本提供して、そのお返しとして、現在Microsoftの生産性ソフトウェアスイートに組み込まれている最先端モデルへの早期アクセスをもらっていました。

しかし、仲の良かった2社は今、違う方向に進んでいるようです。ロイター通信は、MicrosoftがOpenAI以外が開発したモデルを365 Copilot製品に追加することを検討していると報じています。

OpenAI離れしていくMicrosoft

今回の報道によるとMicrosoftが、OpenAIの最先端モデルGPT-4は企業顧客のニーズを満たすには高額すぎるのに、処理速度は十分でないと考えているのが理由のようです。

Copilot 365はWordやPowerPointなど、Microsoftの生産性アプリケーションスイートに組み込まれたAIパワードアシスタント。このツールは企業のあらゆるデータを取り込み、さまざまな機能を提供しています。

例えば、ユーザーが複数のアプリを検索する必要なく素早く情報を見つけられる機能や、企業の最も収益性の高い事業部門のリストを迅速に生成する機能、さらには会議やメールを即座に要約する機能なども搭載されています。

とはいえ、Copilot 365はコストアップした割に期待外れという声が相次いでいます。

Business Insiderの最近の記事では、Microsoftの従業員が匿名で「ひどい」「見せかけだけ」と評し、75%の確率で正常に機能しないと指摘。顧客側の反応についても、経営コンサルティング会社ガートナーが発表した123人のITリーダーを対象とした調査では、自社にとって大きな価値があると回答したのはたったの4人でした。

ただし、カスタマーサポートの簡素化など、大規模言語モデルの活用で成果を上げている企業の事例を報じる記事もちゃんとあることは事実です。

365 Copilotは出来が良くない?

Business Insiderの取材に応じた顧客の中には、365 Copilotが高すぎるという具体的な指摘もありました。

OpenAIのChatGPTはフロンティア的な汎用モデルで、膨大なデータで訓練されているため、実行コストが高く処理も遅くなりがちです。そのため、ほとんどのモデルは既知のものから未知の事柄を予想、推理する推論処理を軽減した「ライト」バージョンで提供されています。

Microsoftは「Phi-4」などの小規模なモデルを社内で開発していて、ロイター通信は、同社は「365 Copilotをより高速で効率的にするために、他のオープンウェイトモデルをカスタマイズすることを検討している」と報じています。

まぁ、Microsoftが OpenAIへの依存度を下げたいと考えるのは理解できることですね。もしMicrosoftの見方が正しく、AIが次世代のコンピューティングの革新になるのであれば、基幹技術を独立した企業に依存することは理想的ではないですもんね。

Microsoftの二刀流収益

MicrosoftはこれまでOpenAIに数十億ドルを投資していて、投資の回収が完了するまでは収益の75%を受け取り、その後も同社の大きな株式を保有することになります。つまり、社内で独自のモデルを開発しながら、現在の急成長を続ける可能性のあるOpenAIへの投資という宝くじも持ち続けることで、リスクを分散させているわけです。

現在のOpenAIは最前線を走っていますが、懐疑的な見方をする人々の中には、AI競争の真の勝者はまだ分からないと指摘する声もあります。90年代に多くの検索エンジンが登場したものの、後発のGoogleが現れて、すぐに頂点に立ったのと同じような感覚かもしれません。それを考えると、Microsoftがリスクを分散させる戦略を採っていくのは、賢明なチョイスかもしれません。