いやー、データってほんと面白い。
映画を観ていて、「この物語は事実に基づいています(Based on a true story)」という文、見たことありますよね。でも全部が全部事実なわけはありません。映画ですから面白くしないといけないわけです。かっこいいセリフを言わせたり、架空の人物を登場させたり、どこまで事実を脚色するかは作品によって大きく違うようです。でも実際どれくらい脚色の度合いに幅があるのでしょうか?
それを詳細まで説明して、かつ分かりやすくグラフィックスを使って教えてくれるのがこちらのウェブサイト「information is beautiful」。
映画は近年の有名作品10本しかありませんが、その作り込みに思わず感心してしまいます。ページを開くと映画のタイトルとどれくらい事実に忠実なのかが%で示されます。上から「The King's Speech(邦題:英国王のスピーチ)」=64.1%、「Rush(ラッシュ/プライドと友情)」=80.7%、「The Wolf of Wall Street(ウルフ・オブ・ウォールストリート)」=73.8%といった感じです。「The Imitation Game(イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密)」は全10タイトルの中で1番低く35.7%となっています。
各タイトルの下にある色のついた棒グラフは何を意味しているかというと、赤が多いほど事実と異なるシーンが多いということ。
緑色から赤色へと順に「事実(TRUE)」「まぁまぁ事実(TRUE-ISH)」「事実とちょっと違う(FALSE-ISH)」「事実と異なる(FALSE)」を表しています。
しかし上の部分のPedantry Level(細かいところまでどれくらい気にするかレベル)を「only the absolute truth(絶対的な事実のみ)」に変えると全タイトルの%が一気に下がります。「英国王のスピーチ」は48.9%に、「イミテーション・ゲーム」にいたっては16.6%まで下がります。
このウェブサイトがすごいのは映画を選ぶとそれぞれのシーンがなぜ間違っているかについても説明してくれているところです。ちょっと見てみましょう。
「イミテーション・ゲーム」の開始から8分5秒のこのシーン、「事実と異なる」と分類されていますね。写っているのはチューリングの上司であったデニストン中佐。この映画ではデニストンは暗号に対して理解の無い、チューリングを嫌ってクビにしようとする悪役として描かれています。では何が事実と異なるのでしょうか。ウェブサイトのこのシーンの説明を読んでみましょう。
事実:デニストンは20年以上にわたる暗号関連の経験があった。デニストンの孫たちは、映画がデニストンをチューリングの業績を邪魔する性格の悪い悪役として描くことで、自分たちの祖父の思い出に対して根拠のない中傷を行なっていると述べている。実際はデニストンはブレッチリーにおける暗号の仕事を完全に支援していた。ここで描かれているデニストンとチューリングのやり取りを記録しているものは何もなくチューリングは常に「スター」として見られていた。
「イミテーション・ゲーム」はこの他にもかなり大規模な「脚色」を行なっていることが分かります。映画ではアラン・チューリングはユーモアのセンスのない、社交性もない、友だちのいない独り者で、強迫性障害を持ち、自閉症スペクトラムにあったと描写しています。しかし彼と実際に仕事をした人のほとんどは、怒りっぽいところはあっても、尊敬された、社交性のある、同僚から好かれた人物であったと言っているようです。また同僚たちは彼が自閉症や強迫性障害を持っていたという兆候は全く見られなかったと言っています。またチューリングがソビエトのスパイについて知っていた、というのも全く事実と異なるようです。
こちらは映画「The Social Network(ソーシャル・ネットワーク)」。映画のシーンでは「ザッカーバーグがエリカをクラブで見つける。2人きりで話したいと言うが、エリカは無下もなく断る。サベリンのところへ歩いて戻り、フェイスブックを拡大すると決めたと言う」となっています。女の子に話しかけるも上手くいかない主人公が、これをきっかけにフェイスブックの展開を決める重要なシーン。しかし、これも事実と違うようです。事実の説明を見てみましょう。
事実:エリカ・アルブライトは存在しなかった。
そもそもそんな人はいなかったということですね。
詳しく読み始めると止まらなくなってしまう危険なウェブサイトですが、勉強になります。映画ってちょっと気をつけて観ないとダメだなと教えられます。1つ1つの説明がトリビアとしても面白いですが、データを分かりやすく視覚化した点に拍手を送りたいと思います。
source: Information is Beautiful
Esther Inglis-Arkell - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)