Apple Watchの小さなパーツには、アップル最大の挑戦が込められているだろう

  • author 湯木進悟
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Apple Watchの小さなパーツには、アップル最大の挑戦が込められているだろう

シンプルなUIこそ解となる。

Macにはマウスがあり、iPodにはクリックホイール、iPhoneにはタッチスクリーンがありました。どれも業界初の超奇抜で革新的なインターフェースではなかったのに、アップルが手がけたことで機能美にユーザが感動し、ブレイクが起きてきたようにも思えます。

今回発表されたApple Watchだって今までアップルがリリースしてきたプロダクト同様に、機能的な美しさを持っていないわけがありません。

Apple Watchは、前例にないほどに噂されてきたものとは違ったデザインを持っていました。そもそもiPhoneとは違って部品などのリークは一切ありませんでしたからね。そのため、イメージとのギャップに拍子抜けしてしまった方も少なくないように思えます。噂では丸型ディスプレイになるとか、フレキシブルなスクリーンになると言われることもありました。

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一見「普通」に見えるデザイン

でも結局、ステンレスケース・アルミニウムケース・18金ケースやバンド、バックルによるエディションヴァリエーションこそあるものの、なんとも腕時計らしいデザインのApple Watchが姿を現わしてきたのでした。あまりにオーソドックスすぎて、中には、腕時計として装着できる「iPod nano」の次世代モデルか? そう勘違いしてしまった人もいるかもしれません。

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何がオーソドックスなのかというと、あのゼンマイ式の腕時計を彷彿させるリューズのようなサイドのボタンです。アップルが「デジタルクラウン」と呼ぶUIにこそ、Apple Watchの最大の魅力が詰まっているのではないでしょうか。

スマートウォッチのジレンマへの解

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スマートウォッチが抱える最大の弱点は、腕に装着できるサイズゆえに制限を受けてしまうディスプレイサイズでしょう。主に他社のスマートウォッチは、ひたすらタッチスクリーンでのUIのみにこだわっていたように思えます。

ところが、Apple Watchが用いたアプローチは、デジタルクラウンをクリックホイールのように回して活用することで、ズームイン・ズームアウトからスクロールまで対応させることでした。ホーム画面に戻りたい時は、デジタルクラウンをプッシュするだけ。一見、エキサイティングなデザインには思えませんが、使えば使うほど、その素晴らしさに感動する革新性を備えているように感じます。このような基本的な問題を解決する高い汎用性を持ったツールがデジタルクラウンなのです。

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シンプルなUIを突き詰めていくと、可能な限りハードウェアボタンは廃する方向性に進むことは少なくありません。ダイヤルキーパッドが廃され、ほんの少しのハードウェアキーのみを搭載する最近のスマートフォンのデザインのように。でも、逆の流れで、ハードウェアボタンを必要とするUIをスマートウォッチに加えねばならないという場合、それをどのようにスマートに追加することができるのか?

各メーカーが悩み続けた課題に対するアップルのアンサーが、昔からある腕時計のリューズに似せたボタンの追加でした。今後出るスマートウォッチのスタンダードを示したであろうデジタルクラウンは、時間が経つほど偉大だったとの評価を受けるようになる気さえします。

タップでき、クリックでき、スクリーンと「対話する」

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Apple Watchはサイズと使いやすさの板挟みを解決するための特徴が3つあります。1つはサファイアガラスに包まれたタッチスクリーン、2つ目はSiriによる音声操作、そして3つ目がスクリーンの特殊機能です。

それは、タッチスクリーンがiPhoneやiPadにはない圧力感知の度合いまで考慮されている点。同じタップ操作でも、スクリーンに触れる強度でアクションを変えられるのです! 単に触れるだけの平面的なものではなく、タッチの強さまで加えた3DのUIに進化しているという感じでしょうか。

その他には、アップルが「Taptic Engine」と呼んでいるリニアアクチュエータの性能も特徴的です。見逃さないけれど、それでいて煩わしくはない、ポンポンと軽く肩を叩いて呼ばれるような感覚で、Apple Watchがユーザの手首を軽く叩いて触覚に訴える通知を出してくれますよ。

本体の動きを感じ取って、ユーザが画面を見ている時にはスクリーンをオンにするなど、その機能は画面を越えてユーザに働きかけてくれるのです。

アップルのUIが変わるとき

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ブラックのバックグラウンドにアプリのアイコンが散りばめられ、タッチやデジタルクラウンの操作によって各アプリがズーム表示されては起動していく。これまでのiOSにはなかったUIの真価がどれほどのものなのか、Apple Watchが実際に発売される2015年を迎えるまでは適切な評価を下すことはできないでしょう。

わざわざ、最初は選択すらできないほどのアイコンをディスプレイにびっしりと表示しておきつつ、そこからズームインさせるワンクッションを求めるUIにはリスクがあるのも事実です。だってそれは今までアップルが大事にしてきた直観性とは一線を画すもになるかもしれないのですから。

でも、これまでだってアップルは固定観念を崩してきたのです。あのiPhoneが登場してきた頃には、一部では「ダイヤルキーパッドのない電話なんて流行らない」と過小評価されていたのに、今となっては全面タッチスクリーンこそがスマートフォンのスタンダードになった歴史を築いてきたのです。

Apple Watchはアップルにとって大きな挑戦になると思います。新たなアプローチが吉と出るか凶と出るか、それがわかるのはしばらく先ですが、やはりどこか期待してしまう魅力を秘めていることは言うまでもないでしょう。

Kelsey Campbell - Gizmodo US[原文

(湯木進悟)