しかしそんな憧れの山は、ゴミまみれなんです。ナショナル・ジオグラフィックによれば、氷の間からはゴミがはみだし、人の排泄物が高地キャンプを汚しています。最近では、エベレストにも行列ができるらしく、そう考えると無理もないことなのかもしれません…。そこでこの状況を改善するため、ネパール政府は新しいルールを発表しました。
もちろん今だってエベレスト山に登る人々は、自分のゴミは自分で持ち帰るのがルールです。しかし、生死を分ける究極の状況で荷物を軽くすることをせまられた場合には、ルールは単なる勧告くらいの重みになってしまいます。ネパール観光局が制定しようとしている新しいルールには、この問題を正すという意図があります。
「登山する人は、全員、それぞれ8キロのゴミを持って帰ってくる」
これが新しいルールです。この8キロというのは自分が排出したゴミに加えて8キロという意味。まず、登山者はベースキャンプの事務所で自分の荷物を測量してから登ります。そして戻って来たら同じ場所で、拾って来たゴミを見せなければいけません。ゴミが規定の8キロよりも少なかった場合は、どうなるか? それはまだ決定していません。しかしネパール観光局は、法的手段をとることも辞さないと発言しています。
エベレストのゴミ問題は50年もの間、解決されてきませんでした。この地で起きるゴミ捨ては、単なるポイ捨てとは違います。それは生存の問題でもあるからです。もし自分の最後のエネルギーを、空の酸素ボンベを運ぶことに使うか、安全に下山することに使うか? どちらを選ぶかと聞かれたら、前者を選ぶのは難しいことではないでしょうか。
このような状況を改善するため、エベレストを綺麗にする団体もあります。彼らは過去4年間で13トンのゴミを回収してきましたが、エベレストにはまだ何十トンものゴミがあると言われています。そのゴミとは缶のプルタブから、登山の途中で亡くなった方の遺体まで、様々なものが含まれています。
もしこの新しいルールが制定されたら、プロの登山家にどう影響するのでしょう? これは非常に興味深い話題です。現在、登山において重要視されているのは、いかに少ない酸素ボンベを用いて短時間で登頂するか、ということです。
でも、8キロのゴミ拾いが義務付けられたら装備の軽量化も重要なポイントとなるはずです。登山家用の製品を作っている会社は、色々なものを開発し始めるでしょう。もしかしたら数年後には、し尿を断熱材に換える化学物質なんかができるかもしれません。
この新しい取り組みによって登山業界はどう変わっていくのか楽しみです。いずれにしろ、早くエベレスト山が綺麗な姿になるといいですね。
top image by:paul prescott/shutterstock
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