水って不思議。
お湯のほうが水よりも早く凍る。一見矛盾するようなこの現象、高温のアイスクリームミックスのほうが低温のものよりも早く凍ったことに気付いたタンザニアの学生にちなんで、ムペンバ効果と呼ばれています。
何世紀もの間、著名な思想家たちが解明に挑むも、ついぞ仕組みが明かされることはなかったムペンバ効果。そこで登場したのが、シンガポールにある南洋理工大学のシー・チャンさんとその同僚たち。彼らはムペンバ効果の仕組みを解明したそうです。
少し化学の話をすると…水分子というものは、2個の水素原子と1個の酸素原子が共有結合で結ばれています。しかし共有結合している水分子にある水素原子と、別の水分子の酸素原子が近づくと、水素結合という別の結合が発生します。例えば、同系列の他の物質と比べて沸点が異様に高いといった水の特質も、この水素結合に起因します。
シー・チャンさん曰く、この水素結合がムペンバ効果を引き起こしているというのです。
水の温度が上がると、水の密度は小さくなります。つまり、水分子同士が遠くに広がり、水素結合間の距離も広がります。反対に、共有結合間の距離は縮みエネルギーを蓄えるそうです。その状態から温度が下がると、水分子間の密度が大きくなり、水素結合間の距離も縮みます。
それに伴い、狭くなっていた共有結合間の距離は広がり、蓄えていたエネルギーを手放します。このエネルギー放出のプロセスが冷却に等しいため、お湯のほうが低温の水よりも早く冷却される。この仕組みがムペンバ効果、ということ。
チャンさんの説はまだ査読されていないため、残念ながらムペンバ効果の仕組みを紐解いたと断定はできません。真っ当な説明に聞こえますが、実際はどうなのか気になるところです。
Jamie Condliffe(米版/たもり)