どうしてXiはつながりにくい? ドコモのネットワーク担当者に直撃してきた

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    どうしてXiはつながりにくい? ドコモのネットワーク担当者に直撃してきた

    最近Xiの速度、遅くないですか?

    2012年に全ての携帯端末キャリアが開始したLTEサービス。スマホやタブレットを使っていると本当にLTEの電波が入って便利だなと思う時が増えました。

    一方でギズモードの編集部周りでは、「ドコモのXiは速度遅いよね」という声を徐々に聞くようになりました。さらに、追い打ちをかけるようにLTE通信速度の遅さを証明する調査結果も出てきました。

    ・がんばれドコモ! 世界各国の通信キャリアのLTE通信速度比較で日本は9位

    モバイルがこれだけ普及した環境で、つながりにくいXiは致命的ですよね。なによりドコモがこの問題をどう意識しているのかが気になりますよね。

    そこで今回、NTTドコモの無線アクセスネットワーク部 無線企画部門 担当部長の平本義貴さんに、Xiの現状や、つながりにくくなっている原因について伺ってきました。

    「つながって当たり前」なのになぜつながらない?

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    関東地方のXi対応エリア

    ギズ:LTEは高速通信が売りですが、都市部ではXiがつながりにくいという声がよく聞かれます。これについてどう思いますか。

    平本さん:Xi契約者数が1000万人を超えたころから、駅周辺の朝や夕方、23時台のピーク時でお客様の利用が集中すると体感されるスループット(データ転送速度)が落ちてきてしまっています。このような調査結果やウェブ上のユーザー様のご意見は社内でも随時見ています。

    ギズ:ドコモ社内には本当にフィードバックが届いているのでしょうか。

    平本さん:ドコモでは定期的に全国調査も行なって、その中からユーザー様の声をチェックしています。またドコモショップなどを含む各チャネルからユーザー様のフィードバックをいただいています。これらの声を総合的に確認しながらニーズへの対応を進めているところです。

    ギズ:具体的な対応の内容をお聞かせ頂けますか。

    平本さん:都市部のユーザー様からスループットの高速化を望まれる声があります。ですが、都市部にユーザー様が多くなる傾向があります。従って利用が集中した時間帯やエリアではどうしてもスループットが遅くなりがちになっています。

    都市部ですと特に駅周辺が通信速度が落ちる率が高いので、そこは設備増強で対応していく必要があります。

    ギズ:なるほど。ドコモでは「つながりやすさ」をどのくらい意識しているのでしょうか。

    平本さん:ドコモでは通信は「つながって当たり前」と思っています。ユーザー様の通信がどれだけの確率で届いたかとか、LTEから3Gエリアへ瞬時に通信を切り替えるハンドオーバーが成功したかなどは、トラフィックデータで常にモニターしています。ですので、問題点が発生すれば迅速に改善していく姿勢です。

    ギズ:他社と通信速度の比較は検討されていますか。

    平本さん:客観的なデータで他社様と通信の品質で比較ができるのであれば検討する価値はあると思います。ですが、例えはドコモがある場所で速度を100回測定してその結果を発表したとしても、そのデータには信頼性にかけるということは認識しています。ドコモのサービス内容を広く知ってもらうことを目指して、広範囲のユーザー様に納得いただけるデータを示すことは一つの課題だと思っています。

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    ギズ:今(インタビュー中)、Xiを使っているのですが、LTE 3G圏外が頻繁に起きてつながりません。これはどうしてなんでしょうか。

    平本さん:その理由はですね、この場所(インタビュールーム)は高層階だからで、ここでは通常の基地局でのエリアからの電波が届きません。それにこのフロア(32階)ではドコモユーザーの密度が異常に高くなっているので、普通でも繋がりにくい状況です。

    ギズ:高層階では基本的に電波は弱いのですか。

    平本さん:基地局はアンテナから電波を下に向かって発信していますので、基本的に高層階には届きません。その場合はIMCS(インクス)という電波中継装置や小型基地局のフェムトセル、ブースターを設置するなどして改善できると思います

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    ドコモ春モデル発表会で加藤社長が発表した下り75Mbps対応基地局数

    ギズ:なるほど。高層ビルでの利用には注意が必要ですね。話は変わりますが、速度に対するニーズにはどのくらいの期間で対応することができるのでしょうか。

    平本さん:75Mbps対応の場合では、速度向上を目的として都市部での集中的な基地局の順次追加を進めています。

    2012年にはXiの対応基地局数を2万3000局に増やしました。この中で下り最大75Mbpsに対応する基地局を今年3月には4000局、6月までには1万局へ拡大する予定です。短期間で基地数を拡充することでLTEサービスを他社に先行して攻めたいと思います。

    ギズ:新しい基地局は普通どのくらいの期間で設置ができるのですか。

    平本さん:新しい周波数帯を追加する場合には、新しいアンテナの追加などシステムを構築しなければならなくなりますので、数ヶ月という期間になってしまいます。ですので現状は既存のトラフィックが今後1〜3年にどのくらいまで伸びるかを予測した上で設備構築を進めています。

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    ギズ:高速通信環境はどうやって作っていくのですか。

    平本さん:具体的にはトラフィックが集中するエリアでは75Mbps化のための基地局を配置して高速環境を強化します。そして、1.5GHz帯を追加したり800MHz帯も活用するなど周波数を増強して、国内最速の下り速度112.5Mbpsまでの高速化を図っていく予定です。2013年3月末までに全国22都市、6月末までに50都市以上の対応エリアへの拡大を目指して、全国的に展開しています

    ですが、112.5Mbpsでサービスを展開できるエリアが現在は新潟や沖縄、四国など各地の都市に限定されています。東名阪や九州などのエリアでは現在1.5GHz帯が業務用無線に利用されているからです。これらのエリアで100Mbps/112.5Mbpsのサービスが提供できるようになるには、許可が下りる2014年春まで待つ必要があります。本格的な全国展開ができるようになるまで各地でネットワークを構築し、2014年度には1.5Ghz帯での112.5Mbpsサービスに切り替えたいと思っています。

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    ドコモ春モデル発表会で披露された国内初の下り最大112.5Mbps対応端末

    ギズ:ドコモは他社よりもLTEサービスで新しいことにチャレンジするイメージなのですが、特にアピールしたいポイントは何ですか。

    平本さん:Xiの高速性=国内最高スピードの提供は大きな競争力だと思っています。現在は100Mbpsサービスですが、112.5Mbpsサービスエリアも徐々に対応を増やしていきます。来年度に向けては最大受信速度を150Mbpsに高速化していくための対応を始めています。

    もうひとつは、これまで通信サービスを全国展開して蓄積されたノウハウです。これまで3Gネットワークを全国展開してきた技術がLTEの展開に引き継がれ、短期間で設備増築に生かされています。

    サービスの制御面では、Xiのパケット通信とFOMAの音声通信との切り替えを行う高速ハンドオーバー機能を早くから採用しています。通信速度が落ちる、通信が止まるなどの事態を防ぐことができます。ユーザーデータに基づいたチューニングを行えるところも強みの一つです。

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    ギズ:新しいサービス「LTE-Advanced」についても教えて下さい。

    平本さん:ドコモでは2015年をめどにXiよりもさらに高速な新システム「LTE-Advanced」の準備を進めています。そこに向けては最大速度を112.5Mbpsから187.5Mbps以上に高速化する予定です。ですのでドコモでは、今後もトラフィックピーク時におけるシステムのスループット向上は特に意識して取り組んでいきたいと思っています。

    ギズ:話は変わるのですが、FOMAはいつ終了するとか予定はあるのですか。

    平本さん:FOMAの終了予定は実はあまりありません。その理由は2つあります。一つは、現在市販の端末での音声通信は3Gで行なっているからです。LTEで音声通信を行うには、「VoLTE」(ボルテ)という音声通信をデータ化する新しい規格に準拠する必要があります。もう一つは国際ローミングからの観点です。3G音声通信を展開する海外オペレーターとの間での調整が必要になってきます。ですので、FOMAの音声サービスはかなり長く残ると予想されます。

    ギズ:VoLTEのサービスインは予定ありますか。

    平本さん:検討はしていますが、時期は決まっていません。

    ギズ:今後も3GとLTEネットワークが混在していくことになりますか。

    平本さん:現状ではLTEはデータ通信のみでの利用になります。ただ3Gネットワークはすでに全国普及がほぼ完了していますので、今後はLTE化に通信がシフトした分だけ3G用の設備が減っていくことになります。

    ドコモの災害対策「大ゾーン基地局」

    ギズ:また話が変わりますが、ドコモが発表した災害対策の取り組みについても教えて下さい。

    平本さん:3.11の震災では、広域で停電が起こったり、津波で伝送路が切断されたまま回復しない自体が長引きました。ドコモでは基地局や設備を充実させ災害時でも信頼性ある通信手段を保証していたつもりでしたが、予期せぬ要因が重なったため、大部分がエリア外になりサービスの再開が遅れ、多くの方の通信手段に影響が出てしまいました。

    その教訓を踏まえ2011年4月から社長からのトップダウンで災害時における様々な対策を進めて来ました。

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    ギズ:その一つが「大ゾーン」基地局ですね。

    平本さん:「大ゾーン」基地局は、災害用に使われる基地局で、広域な通信エリアの確保を目的にしています。半径7kmのエリアカバーを目標にしています。基地局は震度7の地震に耐震性を持つ建物を選び設置しています。また停電対策も進め、エンジンおよびバッテリーによる無停電化に加えて非常用の伝送路を無線で構築するマイクロ波通信を設備しました。

    東京都は6カ所を含む全国104箇所に配置が完了しました。

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    ドコモではこの他にも、Xiに対応した移動型基地局車を導入することも決定し、2013年夏までには30台の車が順次導入される予定だそうです。下り最大75Mbps対応に加え一部の車両では下り最大112.5Mbpsの高速通信にも対応するそう。

    LTE Xiはひとりでも多くの人に体験してほしい

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    ギズ:これからXiを使ってみたい人へのメッセージをお願いします。

    平本さん:Xiの高速通信を多くの方に体感していただきたいと思っています。弊社は高速通信を実現しなければいけないと強く意識しておりますので、75Mbps化や周波数帯追加でより良いサービスを実現していきます。

    「つながらない」、「Xi対応してほしい」といったユーザー様の声には迅速に対応できるように、エリア拡充を加速して行きたいです。

    ギズ:今日はありがとうございました。

    インタビューを終えて

    お話から伺えたことは、75Mbps化の速度向上に向けた真面目な姿勢です。国内最高通信速度を向上させようとする戦略は、日本のモバイル時代の通信環境と変えてくれるかもしれません。ですが一方で、競争が激しく過渡期である今、通信速度の安定性は重要課題であることに変わりはありません。エリア拡大を急ぐあまり不安定なサービスとして認知され続ければ、一般ユーザーから理解を得ることは難しくなるなあとも思いました。

    新しい技術として今年ドコモに期待したいのは、インタビューにも出たLTEの音声通信VoLTEの商用化です。他社が3Gサービスを今後どうして縮小させていくかによっては、VoLTE対応の製品も近いうちに見れるかもしれません。

    docomo Xi

    鴻上洋平