iOSとOS X、ますます統合されていくかも。
Bloombergによれば、アップルはMacで使ってきたIntel製チップを自社設計のチップに置き換えることを検討しているようです。これは、iPhone 5でのA6チップ、第4世代iPadでのA6Xチップの使用と同様の変化です。
アップルはここのところ、自社設計チップへの新たな興味を示し始めてきていました。9月には、iPhone 5に使用しているA6チップがアップル自身がARMのリファレンスデザインを使って自社デザインしたカスタムコアだったことを認めました。かつてはCortex A9とかA15といった既製のコアをちょっといじる程度でしたから、これはアップルにとって大きな変化でした。A6は電力効率とパフォーマンスの両方を改善し、その数週後に発表されたA6Xではグラフィックス処理性能も向上していました。
アップルが独自チップ開発に力を入れるという予想は、同社がサムスンのチップ設計のトップだったジム・マーガード氏を引き抜いたことでエスカレートしました。彼はAMDに16年勤めた後、サムスンが開発するExynosチップに携わっていました。その後すぐほぼ予想通り、アップルはサムスンのチップから距離を置こうとしていると伝わってきました。2010年にARMチップを設計するIntrinsity社を買収したことも役立ちそうです。
さらに今年10月末には、ボブ・マンスフィールド氏がアップルの上級副社長として復帰し、ワイヤレス技術と半導体開発をまとめるテクノロジー部門の指揮を取ることになりました。Bloombergへの情報提供者によれば、同氏はiOSとOS Xの体験を統合することに以前から興味を示していましたが、それには全デバイスでの自社開発チップ採用が必要になりそうです。また、iOS開発トップのスコット・フォーストール氏とはその点で温度差があったと言われていますが、10月末の同じタイミングでフォーストール氏の退社も発表されています。
アップルがIntelのチップセットを実際使い始めたのは2006年、iMacにCore Duoが採用されたときでした。それ以来アップルはIntel標準のチップを使い続けてきました。今まで多少の問題がなかったわけではありませんが(たとえばアップルのパートナーであるNvidiaがライセンスの事情でIntelのCoreシリーズ互換のチップを作れなかったり)、大体においてアップルとIntel双方にとって状況はうまくいっていました。
でも、Intelはモバイル仕様のチップ製造で出遅れぎみで、そのMedfieldチップは小さいデバイスで必要な効率を出せずにいます。それに対しARMは64ビットチップを開発するのみならず、マイクロソフトと協働して自社の64ビットアーキテクチャ上でフルバージョンのWindowsを動かそうとしているという情報(詳細はこちら←英語です)もあり、ARMの入れ込みようがうかがえます。
MacにARMチップが使われるという噂は新しいものではなく、以前から聞こえてはいます。でも今違うのは、アップルが自分自身でコアを作っているってことです。ARMのリファレンスデザインを使ってはいますが、設計はアップル自身がしているのです。
ではなぜ、これまでアップルはチップを自社開発しておらず、今も検討中なんでしょうか。いくつか理由はありますが、まずはとにかくパフォーマンスです。Cult Of Macのジョン・ブラウンリー氏が、なぜARMがMacで採用されないかについて長文記事(英語)を書いていましたが、それによればARMチップの性能は最新のIntelのチップの能力についていけず、近いとすら言えません。もうひとつ大きな理由は、OS XやMac App Storeなどにあるアプリの移行プロセスがどれだけ大がかりになるかということです。2011年、OS X LionでPowerPCアプリのサポートが終了したときでさえかなりの反響がありました。
もしアップルがiPhoneやiPadだけでなくMacも自社製プロセッサに切り替えるとしたら、それはアップルにとってもユーザーにとっても業界全体にとっても、非常に大きな意味を持つことでしょう。今後の動きが注目されます。
Kyle Wagner(原文/miho)