「いやほんと違いますね。普段よりちょっと長く運動できるし、次やる時もずっと爽快で強くなった気分ですよ」と在学生も効果にびっくら仰天(動画1:30-)。しゃべってる内容はドーピングそのものなのにドーピングじゃないという...。
プロのアスリートがステロイドを違法に使うのには、激しい試合や怪我の後の体の回復を早め、すっきりした気分で次の競技に臨めるように、という目的もあります。体の芯の温度を低くしてやるのも、回復を早めるコツ。
その点、このグローブなら体の中核体温をあまりにも効率よく下げてくれるので、回復にかかる時間を短縮する効果は下手するとステロイド以上かも、とスタンフォード大では言ってるんですよ。市販化も思ったより早くなりそうな気配です。
体熱を最も効率良く放射する部位と言えば、手、足、顔ですが、この一般知識を基にスタンフォード大で開発したのは片手の周りに真空を生み、そこに体から熱を直接吸い上げるグローブ。
最新版は硬質プラスチックのグローブで、これは携帯式クーラーのようなものにホースに繋がっている。気密式グローブにグラン研究員が手を差し込むと、内部にわずかの真空が生まれる。すると手のひらの血管が広がり、動静脈吻合(AVA)に血が流れてゆき、そこでグローブのプラスティックの裏地を流れてる冷却水で急速に冷やされる、というわけだ。
この方法なら全身氷水に浸かるよりずっと手軽だし、他の手のひら急速冷却術の落とし穴も回避できる。寒冷な気候ではAVAへの血流が停止近い状態になってしまうので、手を冷やし過ぎても体の中核体温には影響がほとんどなかったりする。そういうこともあるので一口に冷却と言ってもバランスが微妙なんですよ、とグラン研究員は語っている。
恐ろしいことにこの手袋、造った本人たちも想像しなかったほど効き目は絶大で、患者のけがの回復が早まっただけじゃなく、アスリートには天啓と呼んでいいぐらいの効果が出たんです。
最初は研究者たちもそうとは知らなかったんですが、運動オタクのラボ常駐技師が試してみたところ、トレーニングセッション1回当たり懸垂180回が限界だったのに、6週間後にはななんと620回できるように変貌! 懸垂連続何回でワンセットとやる時、セット1回おきに手にグローブ嵌めて数分冷やして、ほんでまた懸垂やる、という風に変えただけなのに。それだけで前の運動で体に残った疲れが一掃できたんですね~はい~。
こんな手袋がラボから野に放たれたら今のドーピングどころの騒ぎじゃないですよね。特にオフシーズンで日夜厳しい訓練に励む選手への影響は大でしょう。発売時期は不詳ですが、話の感じだと市販化モデルの最終調整な印象...。いんや~レブロン・ジェームズがこれ使ったら、どうなっちゃうんでしょうね! くわばらくわばら...
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Adrian Covert(原文/satomi)