「月面着陸時に立てられたアメリカ国旗は、まだあるのか?」
長年の謎がついに解けました。NASAの調査によると、月面に立てられたアメリカ国旗(星条旗)は「6本中、1本を除いてすべて存在」していることが明らかになったそうです。
もし問題があるとすれば、旗がすっかり退色して、もはやアメリカ国旗ではなくただの白い旗になっていることかもしれませんね。でもそれも長い年月があればこその話で、すっかり色あせたナイロン生地に当時のデザインを想い重ねられるのは、むしろ感慨深いことかもしれません。
月面に国旗が残っているか否かの論争は、アメリカ国内で何十年と続いてきました。しかし技術者や歴史家の専門知識をもってしても、決定的な答えは導き出せなかったそうです。1969年当時、1枚5.5ドル(2012年では33ドルくらいの価値)だったこの旗の製造企業「アニン」の経営者デニス・ラカルーバさんですら、旗がいまだに直立しているとは夢にも思わなかったくらいですから。
「月面にまだ何かが残ってるなんて信じられない。正直に言おう。旗はだんだんと灰と化していくものだよ。」
ルナー・リコネサンス・オービター(アメリカの月周回無人衛星。以下、LRO)のカメラマン、マーク・ロビンソン主任調査員も旗の存在には懐疑的でした。彼はラカルーバさんと同じように、旗は跡形もなく消えていると考えていたようです。
ところが彼は、自らのカメラによってその間違いに気づかされます。LROは白くなった旗が月面に残っている姿を捉えて写真におさめました。それどころか、当時のタイヤ痕がいまだにくっきりと残っていることまで確認できたそうです。
今回撮影された写真では、月面に旗の影が落ちている様子も捉えています。月の自転によって月面の影がどう変化するのか確認できる動画もあるので、ぜひあわせてチェックしてみてくださいね。
ところで、存在が確認できなかった唯一の旗は、いつ、どうして失われてしまったのでしょうか? その旗は、初めて月面着陸を達成したアームストロング船長とオルドリン飛行士が立てた記念すべき1本なのですが、ちょっと意外な理由で消失してしまったのだそうです。
オルドリン飛行士曰く「アポロ11号の月着陸船クルーは、宇宙船からあまりに近い場所に旗を立ててしまったんです。それで、月周回軌道上の指令船コロンビアに乗船していたマイケル・コリンズと合流するため宇宙船を発射させたら、旗が吹き飛んでしまいました...」
ああああ、それは残念すぎる...。でも、人類初だからこそのエピソードかもしれませんね。
平和を求めてここに来た
月や布素材の専門家は「無風の月面でなびく5.5ドルのナイロン旗は、完全に白くなっている」との見方をしています。つまり、アメリカ国旗のデザインは微塵も残されていません。もしこれが地上なら、43年前に同じ旗を立ててもまだデザインがうっすら確認できるようなのですが、月には退色を防ぐ大気がないので地上よりも退色の進行がはるかに早いのだそうです。
月の専門家、ポール・スプーディスさんは以下のように述べています。
「40余年、星条旗は月の厳しい環境下にありました。焼けるような日光に照らされた100℃の世界に14日間さらされたかと思えば、今度は感覚を失うほど冷たいマイナス150℃の世界に14日間さらされるというサイクルを繰り返してきたのです。しかし、それよりも大きなダメージを与えた要因は、太陽からダイレクトに注がれる強烈な紫外線でしょう。地上でも、日光に長年さらされた布はだんだん色あせていき、やがては取り替える必要性がでてきます。アメリカによる月面着陸の象徴も、空中で吸収されずに月面まで届く太陽の紫外線によって退色したとみられます。いくつかの旗は、この過酷な環境下で物理的にも朽ち始めているかもしれませんね。」
ロビンソン主任調査員やラカルーバさんも、同意見だそうですよ。
アームストロング船長、オルドリン飛行士、そして司令船操縦士のマイケル・コリンズ氏が月面に立てたモニュメントには、次のように書かれています。
「惑星『地球』から来た人間が、月で最初の一歩を踏み出す。
我々は、全人類の平和を求めてここに来た。」
西暦1969年7月
ニール・A・アームストロング、マイケル・コリンズ、エドウィン・E・オルドリン
ちなみに、この文章を刻むために月で初めて使われたフォントは「フーツラ(Futura)」とのことです。
※ 一部修正しました。ご指摘有り難うございます。
Jesus Diaz(Rumi/米版)