主に、コーヒーには牛乳を入れてる方へ。
コーヒーと牛乳のバランスって、大事ですよね。ほんのちょっと入れる人も、真っ白になるくらいドバドバ入れる人も、朝(またはランチ後とか、午後のひと時とか、残業中・・・などなど)のコーヒーの出来不出来で、一日の仕事の効率まで違ってくるような気がします。おそらく牛乳派の方は、ホットコーヒーの場合はベストな牛乳投入量をマスターされてるのではないでしょうか。でも、アイスコーヒーの場合はどうでしょう? じつは微妙な違いですが、アイスコーヒーでは、ホットコーヒーより少ない牛乳の量でコーヒーの色が薄くなるんです。
その現象の理由として、「アイスコーヒーは氷が溶けて薄まってるから? 」と一瞬思いたくなりますが、それはあまり当たっていません。たしかに、氷が溶けるとコーヒーの色は薄くなります。でも、それはアイス用のコーヒーを冷蔵しないような、あまり手をかけてないタイプのコーヒーショップでの話です。
もっと専門的なコーヒーショップでは、コーヒーは氷を入れる時点ですでに冷やしてあっていて、さらに氷が溶ける分だけ濃いめに入れられています。それでも、アイスコーヒーはホットコーヒーよりも牛乳で色が薄くなりやすいんです。それはどういうことでしょう?
化学メーカーのダウ・ケミカルの流体力学専門家、マイク・サキラリスさんがその秘密を明かしてくれました。彼によれば、牛乳やクリームは、たんぱく質が乳化されたものです。生乳を専用の装置で分離させると、クリームと脱脂乳になります。次にホモジナイズ(均質化)の過程でクリームと脱脂乳が高圧で細いチューブに通されます。それによって脂肪分子は分解され、脱脂乳の中にある水分子とくっつきやすくなります。これが乳化です。
乳化されていることで、牛乳は特有の白い色をしています。でも牛乳がホットコーヒーに入ると、乳化した状態から熱によってたんぱく質と水に分解され、白い色が薄くなります。
アイスコーヒーでは、乳化状態を分解する熱がないので、牛乳やクリームの白い色がそのまま残り、その分コーヒーは白くなるわけです。では、ホットとアイスで色が違うなら、味はどうなんでしょう? サキラリスさんによれば、味は非常に主観的なものなので、科学だけで説明するのは難しいそうです。「乳化状態が分解されると味への影響は多少あるはずですが、定量的に計るのは難しい」ということです。
なので我々はテイスティング・テストをしてみました。サキラリスさんは、コーヒーの味の影響をなくすため、ハーフアンドハーフ(アメリカではよくコーヒーに加える、牛乳とコーヒー用クリームを混ぜたもの)のみでテイスティングするよう勧めてくれました。温めた牛乳と冷たい牛乳の味が単体で違うなら、コーヒーに入れた場合でも違う味になる、というわけです。
テストでは、ハーフアンドハーフをガスコンロで1分間温めて摂氏60度にしたものと、冷蔵庫から出したばかりで約摂氏2度のハーフアンドハーフを比べてみました。すると、冷たい方には、微妙にヨーグルトを思わせるような酸味がありました。温めた方は酸味がなく、より柔らかい甘味を感じました。
確かに、たとえば同じカフェラテでも、ホットとアイスでは微妙に味とか濃厚さとかが違うような気がしてきました! そんなわけで、今度アイスコーヒーを飲むときは、ちょっと気にかけてみると面白いかもしれません。牛乳は少なめでOKってことと、ホットより風味がちょっと強いかも、ってことです。
Kristen Philipkoski(原文/miho)