以前ギズモードに掲載されたFirefoxのインタビュー記事に触発されて、Opera広報の斉藤さんから「うちも是非取材してほしい!」と言われて先日インタビューに行ってきました。
Operaはブラウザを作る専門の会社として、世界で唯一の存在です。そのことをインタビューを通じてまじまじと実感させられましたよ。
今回お話を聞かせてくれたのは、Opera日本オフィス代表の冨田龍起さんとOperaウェブ エヴァンジェリストのダニエルデイビスさんのお二方です。
ギズモード(以下ギズ):Operaが生まれたきっかけを教えて下さい。冨田龍起(以下冨田):Operaはノルウェー最大の通信会社Telenorから独立したプロジェクトです。日本で言うNTTのような会社ですね。インターネット初期の94年から始まったこのOperaのプロジェクトは、当時にあったブラウザMosaicよりかはいい物が作れるだろうというきっかけで生まれたと言えます。当時リリースされていたNetscapeも開発が思ってたよりも遅く、ブラウザの印刷機能なども付いていなかったんです。それで我々ならより良い物を作っていけるだろうということになり、Telenorからスピンアウトして95年に作られたのがOperaです。ギズ:95年と言えばWindows95ですね。Windows95でもリリースされていたんですか?冨田:最初にリリースされたのはUnix向けで、それからWIndows 3.1からリリースされていきましたね。ギズ:Operaは歴史あるブラウザですよね。そんなOperaの特長はなんでしょう?冨田:Operaは全てのデバイスで動くことを一つの目的としています。例えば、Chrome・Firefox・IEなどではハイエンドな、最近のPC、タブレット、スマートフォンで動くことを前提にしています。それとは対照的に、Operaでは古い携帯端末からハイエンドPCまで、すべてで利用できるように設計しているんです。Operaの目的は「あらゆるデバイス上で最良のインターネット環境を実現させる」ことなので。それと、Operaは常に世界最速を目指しています。一度だけChromeに追い抜かれたことがありましたが、今ではそれをまた追い越し、Operaが世界最速のブラウザです。
ギズ:Operaが誕生するときにはブラウザ戦争やシェア争いが起きていた?冨田:ブラウザが独自に機能を拡張していって、自社が有利なようにシェア争いは起きてきました。具体的には第2次ブラウザ戦争前ですね。ダニエルデイビス(以下ダニエル):ウェブがW3Cの標準ルールを守っていないということはありました。ギズ:それは、今、競争を促すためにブラウザベンダーが増えているということにも繋がるのでしょうか?冨田:おそらくインターネットって20世紀最大の発明なんですよね。我々のビジネス・コミュニケーションもウェブ上で行われていて、それらはもっと浸透してきています。そういう意味ではインターネットの入り口であるブラウザを押さえるというのがビジネス面から見ても戦略的に重要だからでしょうね。それと、Operaの観点からいうと、多様性が確保されないと、イノベーションが鈍化するからです。さきほどありましたけど、ブラウザがW3Cに準拠していないという事が、今までの時代を見返すと問題だった。
そういう意味でNetscapeがいなくなって、Firefoxが出てくるまでずっとウェブの進化が遅くなっていましたよね。今はFirefox、Chromeなどが出てきて競争が激しくなって進化が加速していますけど、過去のようにIEを出しているマイクロソフト一社が独占するという弊害は大きく良くないですよね。それはオープンではなくて、ユーザーは選択肢がなくなり、その技術に依存しなくてはならない。そういう状況を打破するという考え方の元にブラウザベンダーが増えているのだと考えますね。
W3CやOperaがやってるオープンザウェブというのは、誰でも無料で使えてロイヤリティーフリーで、公開されている仕様を使って製品を公開していくのは大事なことです。
ダニエル:僕よくこんなにブラウザが出ていてユーザーがかわいそうだと言われますね。アップルとマイクロソフトはOSを含めたエコシステム全体を作ったので、ブラウザは必要ですよね。Chromeを作ってるGoogleはエンジニアが多いので最新のJavascriptAPIに集中していますね。Firefoxに厳しいルールはなくて、オープンソースらしく、対応したいものがあれば、誰でも自由に作れます。
で、Operaはブラウザ専門の会社ですから、お客様を第一に最適化して作っています。
ギズ:今の話を聞いていると考え方としてはMozillaが一番近いと感じたんですが、どう思われてるんでしょうか?冨田:近いとは思っています。標準化団体を通じて、ロイヤリティーフリーなオープンな仕様を策定して、それをベースにいち早く開発者の方に提供して、そこで開発者が作った技術を使ってコンテンツを作成するというのが我々が目指しているところなので、そういう意味では非常に近いです。HTML5というのも、OperaとFirefoxと一部Appleさんの3社が作ったグループで決められたものです。ダニエル:オープンに対する考え方ですね。OperaとFirefoxだけはオープンなフォーマットのみ積極的に採用しています。話はそれますが、例えばHTML5ビデオでは、二つのビデオフォーマットしか採用していません。H.264とGoogleが開発した完全にオープンなwebMですね。アップルとマイクロソフトがサポートしているのはH.264ですね。H.264はつい最近消費者向けにフリーになりましたが、特許はまだ保持していて、商用向けにはいつでもコントロールできる状況にあるわけです。ビデオを作るクリエイターが自由に使えないという心配があるならばwebMを支持するべきだと思います。冨田:世の中が少しずつオープンになっていく流れの中で、Operaはクローズドソースですが、Firefoxはオープンソースという違いはあるものの、同じビジョンを共鳴していると言ってもいいでしょうね。ギズ:横に逸れますが、アップルはiOSでAdobeのFLASHは完全に使わないと宣言しているわけですけど、Operaから見てどう思われますか?冨田:FLASHはこれほどまでウェブ上で普及していますよね。ただ、私は選択肢が大事だと思っています。開発者にとってFLASHベースで開発しているなかで、それを全て廃止するべきではないと思います。もっと広い視点から見ると、FLASHはプラグインが載っていないと使えないわけですよね。これからiPadみたいなのが増えてきた場合に、FLASHは使えない。そうなると、コンテンツが流通できなくなるという制限がでてきますよ。ダニエル:FLASHはウェブの一部になりましたよね。FLASHとは違いますがH.264などはまだ歴史が浅いのでオープンになるよう解決できる問題だと思いますね。ギズ:以前ギズモードがFirefoxのエヴァンジェリストにインタビューした記事で、「Operaはなにしているか分からない」と言っていましたが、今の話を聞くとちゃんとミッションはありますよね(笑)ダニエル:いえ、私たちも何と戦っているか分かりません。教えて下さい(笑)ギズ:Operaが目指すところはオープンザウェブということではないんですか?ダニエル:ちゃんとお答えすると、Operaが目指しているのは「世界の誰でも素晴らしいインターネットの体験ができる」ということですね。これを第一に考えて仕事をしています。冨田:Operaが何をしているか分かりにくいっていうのはあるかもしれません(笑)Operaは幅広くやっていてますけど、一つのことを目指してるのは間違いありません。ギズ:Chrome・Firefox・Safari・IE・のイメージを一言で教えて下さい。ダニエル:IE:最近変わりました。今までは最悪でした。
Firefox:重要な存在。
Safari:デザインやUIが強い。
Chrome:Googleのエンジニア
ギズ:貴重なお言葉ありがとうございます!ギズ:このインタビューの前に、編集部内で持ち上がったのが、OperaはスマートフォンからPC、Wii、テレビなどに採用されているので、ブラウザ会社の中では一番儲かってるんじゃないか!? っていう話があったんですけど、実際どうですか?冨田:いや、それはないです(笑)Operaは会社なのでそういう情報は公開しているので是非見て下さい。ギズ:昔からOperaは世界最速ブラウザとして認識していたんですが、それは今も変わらないですか?ダニエル:Yes!冨田:一回だけ抜かれましたけど(笑)ギズ:Chromeにですか?冨田:そうです。Chromeが出た時に、一時的にですが、10倍ほど差を付けられたことがありました。それもすぐ抜き返しましたけどね。ChromeはユニークなJavascriptエンジンを作ってきたのでそういうこともありましたね。ギズ:ブラウザ開発の上で、Javascriptエンジンに対する優先順位はどれくらいなんですか?ダニエル:Javascriptはトップです。以前まではHTMLとCSSどちらも重要でしたが、今ではWebアプリケーションが多くなり、HTMLレンダリングの部分が少なくなったというのもあって、Javascriptはとても重要視しています。ギズ:ギズモードもJavascriptのせい?でとても重いです...。ギズ:それでは最後にお聞きしたいんですけど、現在、オープンザウェブは守られていますか?ダニエル: Not bad!!(悪くないよ!)Operaの冨田さん、ダニエルさん、斉藤さんありがとうございました!
[Opera]
(大野恭希)