壁に開いた「のぞき穴」から見る悪夢。“非常に好評”のサイコスリラー『The Hole』は、崩壊する日常と隣人の闇を描く傑作短編ホラー【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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壁に開いた「のぞき穴」から見る悪夢。“非常に好評”のサイコスリラー『The Hole』は、崩壊する日常と隣人の闇を描く傑作短編ホラー【プレイレポ】

PS2風のローポリが特徴的。

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壁に開いた「のぞき穴」から見る悪夢。“非常に好評”のサイコスリラー『The Hole』は、崩壊する日常と隣人の闇を描く傑作短編ホラー【プレイレポ】
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今回は、Bober Brosが手掛け12月6日にリリースされた新作ホラー『The Hole』のプレイレポートをお届けします。なお、本記事はネタバレ要素を含むので、閲覧の際は十分ご注意ください。

“ジャンプスケア一切なし”の強烈な短編ホラー

本作は、一人称視点のストーリー主導型ホラーアドベンチャー。プレイヤーは、アパートの隣室から聞こえる騒音と共に開いた「壁の穴」をきっかけに、その穴にまつわる謎と秘密を暴き出していきます。深淵の奥には一体なにが待ち受けているのか……。

執筆時点でのSteamレビュー総数は219件と少ないものの、88%がポジティブな「非常に好評」ステータスを獲得。開発元Bober Brosのデビュー作『It's Just A Prank』も同様にホラーゲームファンから支持を集めています。

まず目を惹くのは、PS2時代を彷彿とさせる猥雑なローポリゴングラフィック。ゲーム全編にわたって粒状感のあるざらついたテクスチャーで構成された世界と登場キャラクターが、一層の不気味さと嫌悪感をプレイヤーに与えています。

また本作は、ホラー作品にありがちな「安っぽいジャンプスケア(意図的なびっくり演出)」は一切なし。崩壊する日常、狂気に侵されていく隣人たち、仄めかされる底なしの暗い真相……など、徐々に追い詰められる精神的恐怖と抑圧感をテーマに展開する、過激なホラースリラーでした。

日本語字幕対応

言語は日本語字幕/インターフェイスに対応。会話やテキストメッセージに関する翻訳精度は「まぁ悪くない」といった印象で、一部未翻訳の場面があったことが残念。ストーリーを解釈する上では特に問題はありませんでした。

操作はキーボードマウスに対応。一部操作はコントローラーでもプレイ可能です。その他の設定は、ゲーム音量やグラフィックスなどシンプルなものでした。

平穏な日常の終わり

物語は、主人公が住むアパートの自室から始まります。彼がここでどんな生活を送っているのか、まずはいろいろと探索してみましょう。

ソファがあるメインルームには、壊れかけのテレビが置いてあったり、古びた電話があったり、別段変わったところはなく、小綺麗に整理されています。他には、洗面のあるシャワールームやダイニングもある普通のアパートといった様子です。

主観視点はズームすることも可能なので、よく観察しておきます。気になる場所があれば調べてアイテムを入手してイベントを進めていく、ゲームとしてはオーソドックスなつくり。しかし、本作はいわゆる「インベントリ画面」がないので、アイテムは床に放置するか持っておくかの2択。それが逆に「ゲームっぽさ」を消し、ストーリーに没入しやすくしていました。

「ビールを飲まなきゃやってられない」らしく、ビールを探しに台所へ。基本的にはイベント目標に従って行動すれば、迷うことなくゲームが進行します。

ゴキュゴキュゴキュッ……喉越しに爽快な音を立て飲み干します。

ビールを飲んでリラックスした後は、ゴキゲンな音楽を流しましょう。いろんな場所にカセットテープが転がっているのでカセットデッキで再生します。

今回は、ガレージ・ロックを彷彿とさせるリフが印象的な「ボーバー・ブロス」からの一曲。軽快なリズムと明るい曲調が気持ちいい。主人公いわく「クソみたいな日々をやり過ごすための唯一のバンド」だそうです。

そしてシリアルを電子レンジで温めてお腹を満たします。

次の目標は溜まっていたゴミの処理。ダストボックスは外にあるのでエントランスへ出ます。長い廊下は薄暗く不気味な雰囲気です。

壁に目をやると奇妙なポスターを発見。その得体の知れない光景に若干の恐怖を感じます。いったいどんなアパートなんだここは……。

廊下を抜けるとダストボックスがありました。なぜか下階に続く階段にはバスタブが置かれていて通行不可能ですが……とりあえずゴミを投げ入れます。これが「クソみたいな地獄から抜け出す大きな一歩」とのこと。

ビールを飲み、シリアルを食べ、ゴミを捨てに行く…これが彼のルーチンワーク。今度はソファでくつろぎテレビを観ましょう。こうして平穏な日常生活が永遠に続くのかと思われました。しかし……。

「壁の穴」からのぞく隣人の狂気

リラックスしてテレビを観ていると、突然画面が砂嵐になり映像が途切れます。「お前だけが俺を正気に保ってくれるんだよ」と、激しく動揺する主人公。荒んだ生活ぶりや言動から察するに、彼の精神はかなり不安定なようです。

すると、テレビ横の壁からドリルを回しているような騒音が聞こえてきます。その耳をつんざく音に「もう無理だ!」と憤り、やめてくれるよう隣の住人と話すことに。

会話は選択方式でやりとりの内容が変化します。とりあえずナメられないように「ドアを開けて出てこい」と隣人に詰め寄ると……

「俺はお前と違って働いてる」「俺が何しようが勝手だ」と非常に喧嘩腰。まともに説得できる雰囲気ではありません。仕方ないので諦めて自室へと帰ります。

戻ってくると部屋に異変が。さっきまで無かったはずの「穴」が壁にポッカリと開いていました。

穴をのぞいてみると……その先には、黒いタイツを履いた女性らしき人物がベッドに横たわっています。

すると場面が切り替わり夜に。再び様子を伺うと、激怒する男とすすり泣く女の姿や泣き叫ぶ赤子の声など、謎の穴の数は増え続け、隣室からの騒音もさらに激しくなっていきます。それは明らかに家庭内暴力を連想させ、思わず嫌悪感を抱いてしまいました。

精神を落ち着かせ日常を取り戻そうと、いつものようにビールを飲み、シリアルを食べ、ソファーでくつろいでテレビを観ようとする主人公ですが……。

深淵の奥には何が待つのか

「穴」が増え始めてから、異常な出来事は更に加速していきます。例えば、チャイムとともに現れた「アガサ」という少女に、「かくれんぼしよう」と誘われたり……

主人公の父親の形見でもあったカセットプレイヤーが何者かに盗まれたり……

極めつけは消費された大量のビールの残骸。さまざまな異変と同期するかのように、主人公自身にも精神的な変調が起き始めてきます。

すると、またアガサの姿が。詳しく聞いてみると「パパが失敗するたびに叩いてくる」らしく、助けを求めにやって来たようです。

アガサの話に触発されたのか、主人公自身も幼い頃父親にひどい仕打ちを受けていたようで、「アザは消えても心の傷は消えないんだ」と告白。ネグレクトや虐待など機能不全家庭で育った暗い過去が明かされます。

今度は、壁に穴を開けた“隣人”が「お前の叫び声がうるさいんだ」と言いがかりをつけてきました。しかし、穴から見た通り、妻らしき女性に怒鳴り声を上げていたのは隣人のほう。「デタラメいうな!奥さんはどうしたんだ?」そう喝破すると……

「うまく黙らすことに成功したのさ」そう悪びれもなく言い放った隣人。手元には、ガタガタと揺れるアタッシュケースが置いてあります。まさか中身は……!言い知れぬ不安に背筋がゾッとします。

テレビノイズのような砂嵐が画面全体を覆ったと思った次の瞬間。

巨大な女性の足が襲ってきます!壁を這ってくる姿は怪物のよう。パニックになりながら必死で逃げていきますが、冷蔵庫や洗濯機、ソファなどが行く手を妨害してきます。

捕まると終わる。直感がそう言っています。このシーンは視点の独特さも相まってとりわけ緊張感と恐怖を感じました。

そしてフラッシュバックと共に、男が斧を拾い上げそれを振り下ろす姿が映し出されます……。

そして、徐々に明かされていく真実。彼が犯した罪はいったい何だったのか、「隣人」の本当の正体は誰なのか……衝撃の展開が待つエンディングは、ぜひプレイヤー自身で体験して欲しいと思います。


本作は、「家庭内における虐待・暴行・レイプ」といった深くて重大なテーマを、「壁の穴」というギミックを通して見事に描いており、登場人物の精神的変化と追い込まれていく過程を巧みに表現していました。

明確に言及されていないシーンや、飛び飛びのストーリー展開など、物語全体を把握しづらい側面も確かにありましたが、逆にあれこれと考察しがいがあるのではないでしょうか。

何より、PS2風の独特なローポリゴングラフィックと、ジャンプスケアのないホラー要素は非常に不気味で怖かったし、クリア時間も40分~1時間程度のカジュアルに遊べるので、オススメの傑作短編ホラーだと思います。

  • タイトル:『The Hole』

  • 対応機種:Windows PC(Steam)

  • 記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)

  • 発売日:2024年12月6日

  • 著者プレイ時間:3時間

  • 価格:350円
    ※製品情報は記事執筆時点のもの

スパ君のひとこと



壁の穴から見える闇が恐ろしかったスパ……!「深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだ」を地で行く結末が衝撃的すぎたスパ




ライター:DOOMKID,編集:キーボード打海

ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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編集/「キーボードうつみ」と読みます キーボード打海

Game*Spark編集長。『サイバーパンク2077 コレクターズエディション』を持っていることが唯一の自慢で、黄色くて鬼バカでかい紙の箱に圧迫されながら日々を過ごしている。好きなゲームは『恐怖の世界』。

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