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『ビビッドアーミー』などの悪質広告は規制されるべきではないか。ゲームを破壊する悪質広告問題

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近年、スマホ向け、ブラウザ向け広告にゲーム内容と実際が異なる悪質な広告が増えていっている。
今回『ビビッドアーミー』がそういった広告を自らネタにし始めた様子を見て、これが一般的になると問題があると感じているため、『ビビッドアーミー』などの用いる悪質広告・それに便乗した炎上商法を規制するべきではないかという話をここで行っていきたい。

悪質広告とは?
悪質広告とは、実際にゲームにかけらも登場しない要素を前面に押し出してプレイヤーを獲得する広告方法。Twitterなどでは“広告詐欺”と言われるが、正しいゲームの内容を伝えない質の悪い広告ということでここでは“悪質広告”とする。

スマートフォンでは『FF15新たなる王国』あたりから話題になったので、ご存じの方も多いだろうか。広告を見てゲームを始めると、いくらプレイしても広告で見た内容が登場しなかったり、ゲーム要素として登場せずに騙されるという問題だ。
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▲スマホのFF15は、TD風広告を出している。しかし、ゲーム内のミニゲームとして遊べるだけ。スクエニと協業の海外企業が広告を出しているが、これをスクエニが止められなかったもののか…。

多くは日本製のタイトルではなく、中国を中心とした海外製タイトルで利用される。
たとえば、『ホームスケープ』はマッチパズルだが、広告では完全に災害を止めるアドベンチャーっぽく描写され、ゲーム内容と異なる描写になっている。
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▲ホームスケープの広告

ゲーム内に登場しないエロシーンを流すゲームも多い。
記事タイトルにある『ビビッドアーミー』で言えば、エロ・女性キャラを主体とした広告を流している。
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ところが、実際に『ビビッドアーミー』をプレイするとミリタリー系のギルドバトルゲームで。
私がプレイしたときは、ロード画面のイラストがエロかった程度。基本的には同じ2体のオッサン兵を合成するとより上位の兵士ができるというマージ系であった。
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たちの悪いことに、こういった広告を出すゲームは売れなければ撤退し、売れるとそういった要素を後からギリギリ言い訳がたつレベルで実装したり、その金で別のきっちりしたゲームを出したりする。
つまり、自らがサービスするためにプレイヤーをだまして運営する性質のゲームが多い。

『ビビッドアーミー』も今は広告で登場するキャラにイラストが差し替えられているが、初期はそういった要素すらなかった。
「後から実装するならいいじゃないか」と思うかもしれないが、売り上げなければ永遠に実装されない可能性も高く、売れないゲームのプレイヤーは広告詐欺に騙されるわけだ。
最初から実装していなければ広告で出すべきではない。

ゲーム広告の実際
誤解されないように言っておくと、厳密に言えばゲーム広告とゲーム内容が異なることは結構ある。
多くのゲームは、実際にゲームで表示されるキャラクターや遊べる内容を表示しつつも広告ではゲーム内よりちょっと派手に演出していたりする。

プレイステーション時代のゲームなど、ゲーム内のムービーをメインにCMをしていたりして、ムービーシーンとゲームシーンの落差もあったりした。
ただ、これらは「実際のゲーム内容を少し良く見せていてゲーム内容としては正しい」し、「ムービーもゲーム内にある(もしくは同じクオリティで登場する)」。
実写で何かしらの会話をさせて、ゲーム内のドラマを想起させるような広告もあるし、テーマとあっていればそれも問題ないだろう。

▲俺の屍を越えてゆけCM。世代交代をテーマとしたゲーム内で実際に展開されるドラマが伝わる。

私が今回問題と考えているのは、実際にゲームに登場しそうでしないシチュエーション、内容をメインに押し出して誤解させる手法だ。

実態と内容が大きく異なるゲームの問題
有料のものを実際に誇大な広告で売り付けてしまうと詐欺になる可能性があり、明確にそれが違反であることは規定されている。では、基本無料のゲームは無料だからいいのでは……と、思われるかもしれない。
さて「このゲームは無料だから問題ない」という話がでるが、基本無料タイトルは「進めたら登場すると思って課金した」という理屈も成り立つ可能性がありグレーとも考えられる。

また、規定には「一般消費者の自主的かつ合理的な商品又はサービスの選択を妨げる表示」が問題とされている。実際、エロが登場すると信じて数時間プレイして出なかったという話も聞くし、合理的なサービスの選択を妨げているとも考えられるだろう。

実際、消費者庁にはそういった通報が増えているとも聞くし、お行儀のよい広告ではない。実際にプレイヤーの利便性を損ねる良くない広告であると思う。

悪質広告が、広告を破壊し、プレイヤーも損をする
ここからは、こういった悪質広告・炎上広告を良しとすると、メディアの価値が全体として毀損され、最終的にプレイヤーまで被害を受けることを書いていく。つまり、単に「うざい広告」で終わらないことを書いていきたい。

炎上広告や悪質広告は先にやったものが強い。
仕掛けた側は物珍しくて宣伝になるから良いのだ。ところが、こういった広告が成果を上げ始めるとだんだんと普通の広告のインパクトが弱くなる。
読者側も騙されなれると、記事や宣伝を見ても「どうせ嘘だ」と真面目に受け取らなくなる。
すると、正直に記事を掲載するゲームメディア全体に被害が及び始める。手間をかけて取材して記事を書いても取り合ってもらえず、収益が得られなくなるからだ。

普通の記事で稼げなくなる。すると、行きつく先はまとめサイトのようなネタ優先で実のないPV至上主義で稼ぐ道で、最終的にプレイヤーの利便性を損ねる(ゲームサイトがほぼ全部ゴシップ、まとめサイトでいいなら話は別だが)。

すでに「広告は信じられない」と思っている方も多いかもしれないが、それこそ過去にいろいろなサイトがPR表記もなく広告記事を掲載したり、悪質なまとめサイトの掲載記事を見て「広告が破壊された」結果だ。
商業でも最近はゲームと宣伝の信頼を両立しようとするメディアがあるが、そこに炎上商法を認めて取り上げるサイトが出てくることは、そういった努力を踏みにじる行為と言える。

誠実にゲームをアップデートし、良い内容を届けようと普通に頑張るゲーム会社の情報が目立たなくなるので、プレイヤーが良いゲームに出会う機会も減るだろう。
プレイヤーをだますことはマーケティングの勝利ではなく、単純に努力している会社を踏みにじる行為でもある。

大げさと思われるかもしれないが、8年ほどのまとめサイト全盛期は、少し人気のないゲームを褒めたり、行き過ぎと思われる議論に「それは違うのでは」というだけで驚くほど大量に「ステマ」などと書き込みがあった。
そこから「まとめサイトを見ていること・公言することは良くない」という認識が出てきて、現在は少しマシになってきたところで、過去に戻ろうとする行為は看過しがたい。

悪質広告は、日本のゲームも破壊する
さて、こういった広告が蔓延すると強烈でない広告は費用対効果が悪くなっていく。そして、ますますそういった広告が蔓延しやすくなる。そうなると、企業がとれる道は2つだ。

1.自社でも同じような広告を出す
2.そういった広告に流されないほど大規模なプロモーションを行う

ところが、1番の選択肢は難しい。日本に本拠地を置いている多くの企業は、あまりに過激な広告を流すと批判を受けてしまう。例えば、スクウェア・エニックスが「今夜はどの女を買いますかね……へへ」みたいな広告を出したら「大手企業が、性が!」と騒ぐ人がいて、下手すると炎上することは想像できるだろう。中小企業でもそのリスクは免れない。

しかし、海外をメインとした企業などは話が違っていて、1発当てればいいし、ダメだったら本国で再起するか、新しい企業を作って出せばいい。そういった土壌がさらに広がる。

実は、日本ではそういったゲームが大量にリリースされている。『アズールレーン』で知られるYostarのように真面目にサービスしている中国企業もたくさんある。しかし今、水面下では「やるだけやって、何かあれば逃げられるようにしておこう」とサービスしようとするあくどいメーカーも多く動いている。

昨年、中国からやってきた『戦姫コレクション』が夜逃げ同然に突然サービスを停止し、返金も行われずに話題となった(あとから声明が出たが、突然の夜逃げにアプリを削除して返金を受けられなくなったプレイヤーも多かった)。

そのときから調査して記事にしたいと準備しているが、現在中国からゲームをリリースして「成功したら法律的な問題をクリアする」「失敗したら夜逃げできるようにする」という形のサービスが増えてきているし、そういった処理を行う法務の需要も増えていることがわかっている。

すると何が起こるかというと、日本の企業はリスクを背負って広告展開をしなければならない中で、海外企業はやりたい放題という状況になり、日本のゲーム会社が被害を受ける。韓国ではすでにその方法で市場が乗っ取られており、下記の記事からその状況がうかがえる。
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つまり、こういった広告に加担することは海外企業のやりたい放題を許容することであるともいえる。
過去には、G123を運営しているCTW社もその影響を受けている。
CTW社は、消費者庁に措置命令を受けた『THE KING OF FIGHTERS '98 UMOL』の運営会社として名を知られていた。しかし、裁判が起こると「会社代表が中国企業Ourpalmと仲が良く、個人的に手続きをして会社を作ったが、そのときの流れでOurpalmに勝手に名前を使われてHPに表記されていた」という主張が認められ、和解している。
CTW社も、中国企業に勝手に名前を使われた“やりたいほうだい”の被害者で、スケープゴート的に使用されたらしい(ぜひ、被害を与えたOurpalmを訴えて欲しい)。
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▲措置命令を受けたKOF98'UMOL

そういったやりたい放題を許さないためにも、悪質広告には規定が必要ではないか、と思える。

そしてビビッドアーミー
そして今日、『ビビッドアーミー』という悪質広告を展開するゲームの記事が大手メディアに乗った。これには「クソ広告撲滅!」と題されており、「これまで出していた悪質広告に代わる売り文句を考えて商品をもらおう」というもの。
そのキャンペーン記事をみると、掲載媒体自体が彼らの広告を“思うところがある広告”と認め、運営自体も意図的にクソ広告であることを認識して炎上マーケティングを展開しているのがわかる。
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▲画像は4gamerより。

これまでは彼らの悪質広告も、彼らの意図として明確に行っているかうかがい知れなかったし、わからないうちは「迷惑だな」と個人的な感想の範囲でしかなかった。
実際、「イメージ広告」と「だますつもりの広告」と言うのは区別がつきづらい。裸体を描くとき、それが芸術なのか、猥雑なものなのか基準を設けて区別できないのと同じ問題だ。
だが、炎上マーケティングを意図的に展開し、それを手伝うとなると話は変わってくる。

この広告を掲載することは、掲載したメディア自らが炎上マーケティングを良しとする態度にほかならず、短期的にメディアが儲かったり、炎上で笑うプレイヤーもいるかもしれないが、最終的にはプレイヤー自身も被害を受ける。メディアも破壊される行為ではないかと思っている。

G123を展開するCTW社は、『ナイトメアクロノス』などでも悪質広告を出していて、そういった問題のある広告を意図的に出し続けていると推測できる。

また、G123はゲーム展開前はゲーム攻略まとめサイトで、私から見ると内容が薄くSEOは強い典型的なまとめライクなサイトでもあり、その時から方針が変わっていないことも見て取れる。
これはだます意図が感じられる広告を意図して出していることが推測され、実際に「そういった要素があると思って課金したが進んでもなかった」などの声もあり、何かしらの対策が必要な悪質広告ではないかと思えてこの記事を書くことにしたわけだ。

詐欺広告をとがめるのは、メディアの役割なのか?
では、メディアは広告を厳しく審査すべきか、というと非常に難しい問題だ。
メディアが過度に倫理観や規定を働かせてしまうと、本来は認められるべきものが認められなくなり、広告の機会が奪われてしまう恐れがある。
例えば90%の人が「クソゲー」と語るゲームがあったとしても、残りの10%にとっては「これが欲しかった」というゲームである可能性も存在する。
これに対して「クソゲーだから・僕には理解できないから掲載しません」と言ってしまうと、本来は10%の人のために作られたはずのゲームが世に出る機会を奪うことになる。

よって、新聞や実際のゲーム会社の取り組み以上の規定を設けるのは難しい。
R18で年齢制限の掲載コードに合っていませんとか、明確に法律に違反していない限りはゲームを掲載するというスタンスは一定の理解ができる。
ただ、明確にこういった悪意を感じられるものに関しては最低限拒否するべきではないか。メディアとして、広告・プレスリリース掲載可否の基準を示すべきではないかと感じている。

ただ、それは根本的な治療ではない。
結局のところそういった広告が出てきたとき、掲載しないと掲載しないサイトだけ金が流れず、損をする。スパムサイトに広告と金が流れ、最終的に真面目に拒否するメディア媒体だけが衰えていく。
さすがに今回の広告は止めるべきではないかと思うが、媒体だけで対応するには無理がある。

広告代理店に対応して欲しい
しかし、それを唯一止められる場所がある。それは、広告代理店だ。
広告代理店が悪質広告を認めなければ、大きなところに出稿できず、問題はだいぶ解決される。
悪質広告を認めることも、最終的にはプレイヤー、ゲーム業界、ゴシップサイト以外のゲームサイト、全体の利益を損ねると考えるし、日本広告機構(JARO)でも「うそ、大げさ、紛らわしい」が三大悪とされている。
悪質広告は、それに当たらないだろうか(イメージ広告と悪質な広告は紙一重で判断がつきづらいが、何かしらする時がきていないだろうか)

『アナ雪2』のステルスマーケティング問題でPR表記の記載問題はひと段落ついた(大手がコケるまでダメだったというのが悲しいが)。このとき、広告の信頼性というところで「だまし広告はダメ」という内容が多くのところで話されたと思う。
ならば、根っことして広告の信頼性に関わる「悪質広告」について広告会社も、媒体も規定を設ける議論がなされていいと思っている。

載せる媒体の皆さん、広告を出すゲーム会社の皆さん、広告を見ている皆さん、そして何より広告を集めて流す代理店(ここが取り締まったら悪質広告は一切消えるはず)の意見はどうだろうか。

具体的にどの程度の規制が望ましいのか?
「規制」と言う言葉に対して、回答を出すべきと指摘されたのでここに追記しておく。
文中にも書いたがイメージ広告とだまし広告の区別はつけづらいし、表現として過度な規制をするべきではないと思っている。
悪質な広告を避けるため、芸術的な広告もなくなってしまうのは良くない。表示される場所の制限を守っていれば、イラストや文字、動画表現としては守られるべきだ。

よって、「実際のゲーム内シーンではありません」「ゲーム内に成人向けの表現はありません」などと、実際と乖離している恐れがあるものは表記すべきと指針をJAROが作るのが良いと思っている。
「『ビビッドアーミー』は一周回って面白いからOK」などと言う人もいるが、それは騙された人が増えて悪質広告であると認知されたからで、最初に騙された人はそうもいっていられない。
騙さず、ネタとして面白いのが一番だ。

※1月25日 0:00 修正
一部わかりづらい、冗長と言われた個所を修正しました。また、ゲームタイトルについてCTW公式によりわかりやすい他のゲームの広告があったため、そちらを引用して例示タイトルを『ナイトメアクロノス』としました。

9:40追記
ゲームキャストが考える規制について末尾に追記しました。FF15についての表記を修正しました。
TDは出てこないと書きましたが、ミニゲームとして本編と関係なく遊べるそうです。

2月18日修正
詐欺的広告を悪質広告と改めました。
詐欺的広告とは、実際にゲームにかけらも登場しない要素を前面に押し出してプレイヤーを獲得する広告方法。Twitterなどでは“広告詐欺”と言われるが、詐欺とは確定していないのでここでは”詐欺的広告”とする。