2016年原油価格:「サウジの国家体制不安」を注視せよ

執筆者:岩瀬昇 2016年1月4日

 ちょうど1年前、「原油価格『下落のメカニズム』と将来予測」と題して本誌に寄稿した小文の中で、2015年の原油価格動向について「石油価格は向こう1年間ほど下落傾向あるいは低位安定が続き、それから再び上昇する、と見るのが妥当だろう」と述べた。
 この原稿を書いている2015年12月中旬までの過去1年間のブレント原油価格の推移は、下に示したようになっている。

ブレント原油価格の推移(2015年1月~12月中旬):Finacial Times Commodities より作成

 数年間100ドル以上で推移していたブレント原油価格は、2014年11月末のOPEC(石油輸出国機構)総会以降、大幅下落に転じた。2015年第2四半期に60ドル台で推移していた頃は「これはニューノーマルではない。必ず二番底がある」と判断していた。その後の急落と、年末に向けての安値の更新はご覧のとおりだ。そろそろ底値感が漂い始めた感がある。
 さて、これから上昇に転ずるのだろうか?
 
 1年前、価格動向を左右するファクターとして、1.OPECの生産枠、2.シェールオイルの減産動向、3.地政学リスク、4.需要動向、そして、これらすべての要素を織り込んだ市場参加者の期待、予測、心理状態を注目することが大事だと指摘した。
 これらの要因はどのように推移してきたのだろうか。

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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