「起承転結は古い! ネット時代の文章術とは?」って記事が話題なんですよ。

「ほう」

起承転結は古い、転を省いた起承結がいいらしいですよ…。


「けけけ。すごいな、その主張。“まず結論を書け”と言われてんのに、なんで起承結なの? せめて結から始めようよ。そんなにストレートに言われてるのに。すぐに結論が知りたいって望まれてるのに、転を省くだけで、起承は残すの? そんなの読む? 起って何? 前書き? 時候の挨拶? いまどきいらないでしょ、そんなの。っつか、そんなに悠長なの? 
そもそも、“書籍を見ても『文章構造は起承転結』とまるで判で押したように書かれて”とか言ってるけど、そんなのもう珍しいよね。いまどきの文章本って、だいたい起承転結じゃなくて結論から書け、だよね、ほとんど。結論から書けって言われて、もう20年ですよ。20年前ですよ。犬だったらもう高齢で死んでますよ」

とはいえ、“結論→理由という構図”で書けばいいのでしょ?

「ダメダメ。そんな文章読まないって。そもそも、ネットの文章を、全部最後まで読む? 読まないでしょ。
それどころかタイトルだけ見て中身読まないでしょ、ほとんど。最後まで読む文章って、何十個のうち何個かだけでしょ。3ページあっても1ページ目だけ読んで、やめるでしょ。馬鹿サイトが、2ページから会員登録とかやってるから、なおさらでしょ。
そういう状況で、結論→理由なんて構成で書く人は、まあいい人だよね。都合のいい人、使いやすい人ね。言われたらその通りやります、って感じの。でもって、結論しか読んでもらえない。理由は読まれない。ってなると、新しいことを主張しようとすると、結論だけで伝わるわけないから、理由読まれずに、ツイッターで、「こいつ馬鹿?」「何言ってるの」「んな、わけない」とか罵倒されておしまい」

ああ、ありますね、よく。

「ただ、それなら、まだまし。罵倒されるぶんまし。
もっとやっかいなのは、うすうす気づいちゃう人。理由なんか書いても読まれないなって気づいちゃう賢い人。そうなってくると、もう結論からして、どうでもいいことしか言わなくなる。罵倒されるのは嫌だからさ。たいていの人は、そうだなーって思ってる、わざわざ言わなくてもいいようなことを、結論にもってくる。起承転結とか、漢詩の絶句の構成ですよ、それ古いって言う。当たり前でしょ、中国何千年の歴史の古さだと思ってるの、六朝時代だよ」

はあ。

「あとあれね、朝早く起きるための7つの秘訣とかそういうの。ほとんどが「規則正しい生活をしよう」レベルのことでしょ。
朝早く起きる秘訣は、朝早く起きられる生活をしろ、って言ってるのと同義なので、何も言ってないのと同じ。朝早く起きれなくて悩む人は、そもそも規則正しい生活ができないから悩んでるんであって、なんの解決にもならない。
当たり前のことを当たり前に言って賛同を得る、という手法ですな。
これで十分。はてなブックマークで上位ねらうだけなら、これぐらいの当たり前コースで十分だから。「ぼくもやってます!」とかツイートされるパタンね。
馬鹿は、自分でも正しいと思える主張を見つけて、そうなんだよねーって胸張りたいから、圧倒的な当たり前に賛同する馬鹿がたくさん出てきて、そうそう!って威張って遊ぶ馬鹿騒ぎ。当たり前は賛同しやすいので、これでもそこそこのアクセスが稼げる。毛繕いコミュニケーションで十分なのだな」

では、結局、ネットで書く文章の構成ってどうすればいいの?

釣結逃。つりけつにげ、ね。まず釣り。大げさな言葉(一瞬で! すぐに! 10倍! 劇的に! 絶対読むべき! 完璧に! 最強の! 心震える! 泣ける! たった10分で! できるヤツが!)もしくは「おっぱい」もしくは大嘘、とにかく何それ、っつてタイトルでクリックさせる。これ最初に大事。
んで、書くのは結論だけでいいのね。順序立てた内容なんで、誰も読まないから。
結論をずばっと書く。
んで、釣りなので、あとからいろいろ怒られたりしないように言い逃れの手を打っておけばいい。あー、あとね、釣謎屑屑屑結逃って構成もありな。釣っておいて、謎で煽って、あと適当な屑をだらだら書いておいて、結論を提示して、言い逃れをちゃんと置いておく、っつー。これでページを細かくわけて8ページとかにすれば、1つの記事でアクセス数が8倍弱になるわけだな。効率いいのよ」

はあ。もう少しまともなコミュニケーションしたいときはどうすれば?

「この構成でOKなんていう発想してるうちはダメだね。ちゃんと内容にあった構成を考える。そんなベーシックな大切なところの手を抜いて、コミュニケーションもなにもないでしょう。ラブレターを書くときに、起承結だぜ、とか、やってるヤツはモテないよ。そもそも内容より前に構成を決めうちする手抜きが、馬鹿の考えだからね。
内容が新鮮なものであるのなら、構成そのものも新鮮に考える。
そういうことをしたくなるほどに新しい内容を書いたものが、新しい世界を作り上げる手助けになるわけだな」

ううむ。もうちょっと丁寧に教えてもらえないでしょうか。

「やだよ。教えて教えて厨かよ、おまえ。あ、そういえば、堀井憲一郎の『いますぐ書け、の文章法』は、おもしろかったな。構成だけじゃないけど、書くってことは、いろんなことを最初にガッチリ決めて書くわけじゃないんだ、“「書き手であったはずの自分」さえも「読み手として驚かせる」ことができる”のが、文章を書く醍醐味だっていうのが伝わってくる良書だよ」(米光一成)
編集部おすすめ