透き通る涼しい秋の風が、山から降りてくる。急にお鍋が恋しくなる。
今年はブームのラー油を使ったお鍋にしよう。飲み物は日本酒、それもシャーベット状の旨いものを用意したい。そう「凍結酒」を。

兵庫県神戸市灘区に位置する灘五郷。江戸時代から、今なお全国に日本酒を出荷する蔵元が集まっている。その中の一つ、「神戸酒心館 福寿」を以前のコネタでご紹介した。蔵元でしか味わえない生酒。今まで飲んだことがない透明で繊細な味、フルーティーな香り、そして爽快な後味。目から鱗が落ち、筆者はすっかり日本酒のファンになり、蔵元でしかいただけないなんて切ない、このしぼりたての生酒を家に持ち帰りたいと考えた。

ところが、低温でも長期間(1年以上)保存すると、生酒の中にどうも好ましくない香りが現れることが知られており、生酒の美味しさは長期間の保存ができないことが常識だという。そこで福寿は約35年前に、「しぼりたてのお酒を凍結保存」するという新技術をもってこの問題を克服し、「凍結酒」を世に送り出した。

「しぼりたての新酒の品質を保つために、出荷前(醸造後すぐ)に凍結しています。
水とアルコールを分離させずに凍結保存する技術は、35年ほど前には存在しておらず、開発元である福寿が製法特許を長らく保持していました。現在は製法特許をリリースしていますが、『凍らして美味しい味わい』を常に研究・醸造してきた福寿は、一日の長であると自負しています」と、酒ソムリエ・湊本氏。

ではこの「凍結酒」、お鍋に合うのだろうか。お鍋の定番であるうどんすき。大阪・堺で200年続いた老舗料亭「耳(ミミ)卯(ウ)桜(ロウ)」は現在、「美々(ミミ)卯(ウ)」という名になり、今も愛されている。その「美々卯」の自慢の味の一つ、「うどんすき」に合うお酒に、福寿の「凍結酒」が選ばれている。

お薦めの「凍結酒」の美味しい飲み方はこうである。届いた瓶をぬるま湯か水につけて溶かし、シャーベット状にまで解凍し、スプーンで軽く混ぜて、冷たいままでいただくこと。それを少しずつ口に運ぶ。シャキシャキっとした歯ごたえは口に楽しいし、溶けた爽やかさが喉に広がって嬉しい。なにより旨い。

蔵元でなければ本来飲めない、辛口ですっきりとした味わいの日本酒を、いつでもどこでも楽しめる「凍結酒」。
日本酒は悪酔いすると敬遠しているならば、このお酒をいただくと、質の良い日本酒は悪酔いをもたらさないことに驚くだろう。ホットなお鍋とクールなお酒。絶妙なバランス。今年の冬はこれで決まり。
(W. Season/studio woofoo)
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