2010年は、平城遷都1300年。奈良では記念事業として、さまざまなイベントが開催される。


ところで、当時の奈良の都を表す「平城京」。今の中学・高校の教科書には“へいじょうきょう”とともに、“へいぜいきょう”とルビ(振り仮名)が振られてることが多いのをご存知だろうか。

僕が使った1990年代前半の中学校の教科書を改めて見たら、「へいじょうきょう」としか書いてなかった。一体いつから変わったんだろう。各年代の教科書を編集している東京書籍株式会社に話を伺った。

「まず当社の高校教科書では、少なくとも昭和58(1983)年度版以降“へいじょうきょう”と“へいぜいきょう”を併記しています(この年に教科書をリニューアル)。中学の教科書には、その後併記するようになりました」

どうして併記するようになったの?
「25年以上も前ということで、変更理由の記録が残っておらず、当時の社会的状況などをふまえて変更したとしか言えませんが……一般的には漢音への統一と言われています」

漢字の音読みには、漢音と呉音がある。「平」は漢音で“へい”、呉音で“ひょう”。「城」は漢音で“せい”、呉音で“じょう”。これを漢音に統一すると“へいぜい”になる。

「漢音に統一した読み方を併記した理由は、研究者を中心に“へいぜい”が使われていることや、日本史研究の根拠となることが多い『国史大辞典』(吉川弘文館)の“平城京”の項目に、“へいぜいきょう”と読みが書かれていることなどが影響しているかと思います」

ただ、「京」を“きょう”と読むのは呉音。漢音だったら“けい”と読む。
ってことは、すべて漢音に統一すると“へいぜいけい”になるはず。うーん、納得できない。
でもこれは、小学校の教科書に“へいじょうきょう”としかルビを振っていない理由と近いかもしれない。
「小学校で“へいじょうきょう”だけなのは、発達段階を考えてのものです。小学生に2つルビをふったものを提示すると、学習上混乱してしまうのではないかと考えて、“へいじょうきょう”のみにしてあります」
そっか、“へいぜいけい”にしないのも、読み方よりわかりやすさを優先させたってことなのかも。

ちなみに奈良時代の人たちは、平城京を“へいぜいきょう”と呼ばずに、“ならのみやこ”って呼んでたとされる。平城京は平地に築かれた都だから、「平らな場所」を意味する「なら」に「平」という漢字があてられた、というのが有力説。

ルビの枠は2つ。読み方は少なくとも3つ。
あなたの教科書には、どの言葉が書かれてましたか?
(イチカワ)
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