鍋の友、エノキタケはなぜひょろひょろ ?
お店で見かけるエノキタケ(上)はこんな白くてひょろひょろっとしたものですが、天然エノキタケ(下)は茶褐色でかさが大きく、柄は短い
めっきり寒くなってきた今日この頃。鍋のシーズン到来です。

鍋の食材には色々なものがあるけれど、主役にはなれないが入っていないとちょっとさびしいのがシャキシャキした歯ざわりが特徴のエノキタケ。鍋のダシがほどよくからんで自分の味を強く主張しないところが鍋にピッタリだ。

ところでエノキタケは白くてひょろひょろっとしていることは多くの人が知るところだが、エノキタケは天然のものと栽培されたものとでその見た目は全然違うというのをご存知だろうか。まるで別のきのこのようである。初めて図鑑で天然のエノキタケの姿を見たときはびっくりした。
天然のエノキタケはかさは茶褐色で栽培ものよりずっと大きく、柄はかさの色を濃くしたような感じで細くさほど長くはない。
天然のきのこと栽培されたきのこは何でこんなに違うのだろう。
栽培きのこの出荷量全国一を記録している長野県のJA全農長野に問い合わせてみた。
「きのこは天然のものと全く同じものを栽培するのは難しいのです。要はきのこの生えている山の中の土壌、腐朽ですね、それと100%同じような環境を作ることができないのです。その最たるものがマツタケです」

それにしても茶色のきのこが白くひょろひょろしているのは不思議だ。
今、手元にあるエノキタケには長野産JA中野市と書かれている。
そこでJA中野市にさらに詳しく話を聞いてみた。
「エノキタケの人工栽培の方法が確立されて、実際にこちらの農家で量産するようになったのは昭和30年代です。量がたくさんとれて、可食分、食べられる部分ですね、この可食分が多いものを作ろうと栽培していくうちに今のような長いひょろっとした形になっていったんです。きのこの色ですが実は昔のエノキタケは現在のように白くはなかったんですよ。
クリーム色がかったものだったんですが栽培をしているうちに中に色の白っぽいものが出始めて、その白いものだけを選別して販売したんです。すると、市場の評判がよかったんですね。消費者の方が白い方を求めるということで純白系の種菌が開発されまして現在のように白いエノキタケが出回るようになったんです」とJA中野市の佐々木さん。

純白系のものが出回るようになったのは昭和63年頃のことだそうでそんなに昔のことではない。

そしてもう一つ、エノキタケで昔から気になっていたことがあった。それはエノキタケのにおいだ。
市場に出回っている栽培エノキタケの多くは袋詰めされているが、袋を開けると甘酸っぱいような独特の香りというかにおいがする。
「私たちはアンモニア臭といっています。
きのこには石づきがついていて収穫した後も成長しているんです。エノキタケは袋に入れた後、その袋の中の酸素を使って呼吸するんですが、だいたい8時間くらいでこの袋の中の酸素を使い切るんです。酸素を使い切ってしまうとエノキタケは死んではいけない、と仮死状態になるんですね。仮死状態になるとエノキタケは自分の体の中にアンモニアを貯めるんです。そのため、袋を開けるとふわっとアンモニア臭がするんです」

そうだったのかぁ。あのにおいはエノキタケが作り出したアンモニアが原因だったのか。

「エノキタケの作り出すアンモニアは何ら問題ありませんが、このにおいが嫌という方にはにおいを消す方法、アンモニアを取り除く方法をお伝えしています。アンモニアはエノキタケが仮死状態の時に出すものなのでエノキタケが生き返ればにおいは消えます。ぬれたキッチンペーパーを2時間ほど石づきに巻きつけていただければエノキタケが息を吹き返して、体内に貯めたアンモニアを外に排出します。こうすれば独特のアンモニアのにおいは無くなりますよ」

天然のエノキタケはその名にあるとおり、榎の切り株などに冬場発生する。
やはり冬場に出るきのこだから鍋に合うのだろうか。出荷量も12月が一番多いのだそうだ。

佐々木さんによると、味に関しては天然ものと栽培ものではさほど変わりはないけれど、シャキシャキ感は天然ものが勝るそう。
でも、きのこの見分け方は素人には非常に難しいのでむやみに採って食べるのは禁物。これは? というものを見つけた場合はきのこの専門家に鑑定してもらうことをおすすめします。
(こや)
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