「なぜパンダは、みんな帰国してしまうのか」と。
これまでも日本を訪れ、帰ってしまったパンダのいかに多いことか。ニュースでは「2年間の契約を終えて帰国」などと言われていたが、まるで野球の助っ人みたいだ。それに、そもそもパンダはみんなレンタル制なのか? どうしても帰らないわけにはいかないのか。
上野動物園に聞いてみた。
「今回のシュアンシュアンの場合、『レンタル』というよりも、メキシコとの5年間の共同繁殖(ブリーディングローン)だったんです。最初の3年間は日本のリンリン(オス)がメキシコに行って、次の2年間、シュアンシュアンが日本に来たわけですが、結局、残念ながら繁殖は見られず、帰ることになってしまいました」
と広報担当者は説明してくれた。
ご存知の通り、ジャイアントパンダは世界自然保護基金(WWF)のシンボルマークにもなっている「絶滅危惧種」の希少動物で、野生のものをあまり捕ることができない。
そのため、パンダがいる国同士で協力し合い、繁殖をさせようという「ブリーディングローン」を行なうのだとか。これは通常、互いに貸し合うことで、金銭の授受はともなわないという。
一方、「レンタル」とは、中国から借りることだが、
「世界中のほとんどのパンダは、中国籍なんですよ。みんな中国政府の管理下で、あまり他国には出さない。出す場合も、保護の資金として年間1億円程度を支払うようになってます」
実は、中国籍以外のパンダは、日本のほか、メキシコのシュアンシュアンちゃん、ドイツに1頭いるだけ。
なぜなら、
「中国から借りると、子どもはみんな中国籍になるんです。たとえば、2頭生まれた場合、メキシコと日本のように共同繁殖であれば、子どもを1頭ずつふりわけるんですが、中国籍のパンダの場合は、何頭生まれてもみんな中国籍になるんですよ」
ということだった。
となると、日本国籍のパンダの子を産むためには、リンリンの相手はやはりシュアンシュアンちゃんだけということになるが、
「相性がよくないのかもしれないですね(苦笑)。繁殖にとっては、本当は、たくさんのなかから相性の良いものをペアリングさせるのが、いちばん重要なんですが」
パンダにとっても、人間がお見合いのようにくっつけるのはムリがある。となると、人工授精しかないそうだが……余計なお世話だが、パンダの繁殖は本当にむずかしいのだった。
(田幸和歌子)