海老名市立図書館で貸出券更新手続きが始まるそうで

CCC と TRC が協働して指定管理者となり、図書館の運営に当たると思われていた海老名市ですが、館単位で棲み分けが行われるようになってしまったようです。

海老名では、CCCとTRCの共同事業体が指定管理団体として選ばれたと聞いていたのでテッキリ書籍、DVDレンタル等はCCCが、図書館はTRCが分担して運営することになると思っていたのですが、TRCが担当するのは有馬図書館と学校図書館支援、中央図書館の運営はCCCのみで運営するそうです。

[From 海老名市図書館を訪問、谷一統括館長と面談しました : 瑞穂図書館を考えるblog]

広報誌では、8 月 10 日から自動貸出機対応に対応した貸出券への更新手続きが始まることがアナウンスされ、CCC が運営と担当する中央図書館も 10 月のリニューアルオープンまで、あと少しとなりましたね。
武雄市と同じように、海老名市専用デザインの T カードが用意されるようで、そのデザインも掲載されていますが、「スペシャルなデザイン」ではなくて、どこかで見たような…。。
#おそらく、後発になる多賀城市や周南市に準備されるであろうオリジナルデザインのカードも、どんなものになるのか、ある程度察しが付いちゃいましたね…。

で、文章をよく読んで見ると、最後の方に、

また、現在お持ちのTカードに図書貸し出し機能を追加することもできます。なおTポイントは「Tカード」だけの機能で、図書館内の書店やカフェ利用時に付与され、図書やCDの貸し出しなど図書館業務の利用時には付与されません。

[From 広報えびな 2015年8月1日号[PDF]]

と書いてあります。

条例と規約の間の埋められない溝

さて、この一文から考えるに、武雄市のように「借りた蔵書の返却タイミングで3ポイント/日が付与される」ということは、行われないようですね。

これはおそらく、海老名市の定めている個人情報保護条例との関係で、出来なくなったのであろう、なと…。
ポイントを付与するためには、図書館システムと CCC 側のシステムの間をオンライン接続する必要があるようですが、条例ではシステム間をオンライン接続することは禁じていますし、海老名市としてもそこは認めることが出来なかった、ということなのではないか思われます。

第14条 実施機関は、法令に特別の定めがあるとき又は公益上の必要があり、かつ、個人の権利利益を侵害するおそれがないと認められるときでなければ、オンライン結合(当該実施機関が管理する電子計算機と実施機関以外の者が管理する電子計算機その他の機器とを通信回線を用いて結合し、当該実施機関が保有する個人情報を当該実施機関以外の者が随時入手し得る状態にする方法をいう。次項において同じ。)による保有個人情報の提供を行ってはならない。
2 実施機関は、オンライン結合による保有個人情報の提供を新たに開始しようとするときは、あらかじめ、審査会の意見を聴かなければならない。その内容を変更しようとするときも、同様とする。

[From 例規表示:海老名市個人情報保護条例]

もう一つ、CCC の T 会員規約との整合性を考えた場合に、「第 12 条の 2」もポイントになっているのかな、と思うのです。

第12条の2 公の施設の管理に関する業務を行う指定管理者は、当該業務において、個人情報の漏えい、滅失及びき損の防止その他の個人情報の適正な管理のために必要な措置を講じなければならない。
2 前項の業務に従事している者又は従事していた者は、当該業務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。

[From 例規表示:海老名市個人情報保護条例]

ここでは、指定管理者も条例の対象となることが明示されており、「当該業務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ」てはいけないとも規定されていますから、CCC も指定管理者である限り、この条例に縛られることになります。

CCCが持つ個人情報は、利用者がオプトアウト手続きを行わない限り、第三者に提供されるようになっている上に、提供先の追加に関するアナウンスは利用者向けには行われない上に、不定期に増えるわけですから、「みだりに知らせている」という解釈が成り立つんじゃないかと思うわけです。
CCC としては、たった一つの自治体のために、全面的にオプトインに切り替える気なんて、さらさらないでしょうし、自社に有利な条文への改定を働きかけることで反発を招くようなことはしなくなかったのではないか、と…。

それでも、CCC による個人情報収集の片棒を、行政が担ぐことにならんか?

武雄市では、強権的に物事を進める市長が居たからこそ出来たであろう、蔵書返却時のポイント付与やそれに伴うシステム間の結合などが、海老名市では行われないとしても、 CCC としては個人情報は集めたいでしょうから、「海老名市オリジナルデザイン」の T カードへの移行を強力にプッシュしてくるんじゃないか、と個人的には予想しています。
CCC として一番避けたいパターンは、「既存の貸出券を単純に自動貸出機対応の貸出券に切り替えられる」ことのはず。

広報誌でアナウンスしているので、海老名市としては「海老名市立図書館」の名前の入った T カードを作ることを容認していることになるわけですが、T カードの規約に潜む個人情報の第三者提供に関するトラップを、海老名市は認識しているのでしょうかね?もし、認識しているとしたら、行政が CCC による個人情報収集(という営利活動)の片棒を、積極的に担ぐ形になってしまうような気がするのですが…。
個人情報保護条例の適用対象外と考えてるのかもしれませんが、「海老名市」の名前が入るカードなのですから、無関係だと言い切ることは難しいのではないでしょうか?

まぁ、CCCとしては、オリジナルT カードに切り替えさせることができれば、T-ID からどこ向けに発行したカードの利用者なのかは判るようですので、

しかし、Tカード番号の上8桁は、店舗で共通なので、武雄市図書館店で発行されたTカードの場合、公知の値である。しかも、次の4桁も、これまでに発見された写真で、「0000」「0001」「0002」のいずれかであることが判明している*5。どうやら、武雄市図書館店では連番で発行されている*6ようだ。

[From 高木浩光@自宅の日記 - 空前の武雄市TSUTAYAドヤリングで住所・氏名・電話番号漏洩の危機, 追記(4月1日)訂正あり]

あとは内部で「海老名市立図書館の利用者である」という属性情報を付与するなんてことは容易でしょうし、迂闊に子供の貸出券を T カード化しちゃう保護者がいたりすれば、子供の個人情報を手に入れることが出来る上に、親子関係の紐付けを行うという芸当も簡単に行えてしまうでしょう。

最後にもう一つ。今回、海老名市の中央図書館に導入される自動貸出機って、貸出機としての機能しか持たないのか、セルフレジ兼用なのかがわからないんですよね、今のところ…。
セルフレジと兼用だったりすると、その気になれば、ねぇ…。(以下、自粛)

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