坂の上の雲(一)
著者 司馬遼太郎
維新で賊軍とされた伊予・松山に、三人の若者がいた。貧乏士族の長男で風呂焚きまでした信さん(後の秋山好古)、弟で札付きのガキ大将の淳さん(真之)、その竹馬の友で怖がりの升さ...
坂の上の雲(一)
商品説明
維新で賊軍とされた伊予・松山に、三人の若者がいた。貧乏士族の長男で風呂焚きまでした信さん(後の秋山好古)、弟で札付きのガキ大将の淳さん(真之)、その竹馬の友で怖がりの升さん(正岡子規)である。三人はやがて、固陋なる故郷を離れ、学問・天下を目指して東京に向かう。しかし、誰が彼らの将来を予見できただろうか。一人は日本陸軍の騎兵の礎をつくり、一人は日本海大海戦を勝利にみちびき、さらに一人は日本の文学に革命を起こすことになるのである。
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書店員レビュー
明治時代の日本の近...
ジュンク堂書店那覇店さん
明治時代の日本の近代化の歴史背景を題材にした、司馬遼太郎の歴史長編小説です。
日露戦争でコサック騎兵を破った秋山好古、日本海海戦の参謀秋山真之兄弟と、日本の近代文学に多大な影響を及ぼした正岡子規を中心に、昂揚の時代、明治を書いた作品です。
NHKのスペシャルドラマで放送されています。その原作を、是非一度読んでみてください。
一身独立して一国独立す
2011/12/21 01:25
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHKでドラマ化されたことを契機に、再び話題を呼んでいるようだ。
戦争賛美の作品と誤解される恐れから、生前の作者は本作の映像化・ドラマ化等の2次使用を許諾しないという立場をとっていた。
そのためかドラマ化にあたっては種々の「政治的配慮」が見られるので、ドラマから入った人は、ぜひ原作も読んで、比較していただきたい。色々な発見があって、より楽しめると思う。
明治維新と相前後して伊予松山に生を享けた正岡子規と秋山真之。そして真之の兄の好古。
本作は、この3人の明治人を軸に、明治という時代の精神を描いた大河小説である。
ただし正岡子規死後の日露戦争の記述が非常に詳細で、「小説日露戦争」の趣がある。
おそらく作者自身が執筆しているうちにノッてきてしまい、当初の構想よりも拡大したのだろう。
そういう意味では、日露戦争の描写を圧縮して3人の青年期を丁寧に描いたドラマ版の方が、全体としてのバランスは良いかもしれない。
本作の主題は日露戦争ではなく、あくまで明治の時代精神である。
作者は、近代国家日本の揺籃期と己の青春期が重なった、すなわち国家の勃興と自らの栄達が何の葛藤もなく共存し得た幸運な時代を駆け抜けた男たちの楽天的な刻苦勉励を通して、ひたすら前のみを見て上昇し続ける明治日本の「明るさ」を感動的に叙述している。
自主独立、立身出世主義、無邪気な愛国心、武士道精神。
これらを手放しに称揚するのはノスタルジーに傾斜しすぎている、という批判はもちろん成り立つとは思う。
しかしそれでもなお、私は本作に限りない共感を寄せるのである。
自信をなくしかけている日本人へ
2003/03/07 19:10
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の主人公は日露戦争で活躍した秋山兄弟と正岡子規、、と最初はそれでも別段不自然さは感じない。しかし、後半になるにつれて、物語は連合艦隊を指揮した東郷平八郎と旅順で陸軍を指揮した乃木希典を中心に回っていく。あえていえば、主人公は日露戦争そのものではないか、とさえ思う。
乃木将軍とともに旅順でロシア軍と戦った経験のある人々は、旅順と聞いただけで、同胞のことを想起し、涙が止まらなくなってしまう人が昔は多かったらしい。しかし、現在ではそれらの人々はもはやこの世にいないであろう。だが、司馬先生の本を読むことによって、追体験することは現代でも可能なのです。文学の普遍性はまさにここにあると、感じざるを得ない。
クライマックスは世界最大の領土を誇るロシア軍に立ち向かう弱小国日本の勝利を描く対バルチック艦隊戦。東郷平八郎の将帥としての器量、当時の日本人の優秀さ、どれひとつを書いても勝利はありえなかった。本当に、よく勝ったもんだ、と何度見ても不思議に思ってしまう。いったい、どのようにして勝利を得たか? それはいくつもの選択肢を逐一取捨選択していった、男たちの決断の積み重ねである。
司馬先生はそれを克明に再現なさる。
中東の国々には、坂の上の雲に登場する乃木将軍と東郷元帥、そして有色人に唯一挑戦しそして勝利した日本人への尊敬をこめて、未だに名前に「ノギ」や「トウゴウ」とつける人がいるという。海外の国でも知っているわが国の誇るべき歴史を是非、坂の上の雲を通して知っていただきたいと思います。
戦後史観へのアンチテーゼ
2014/09/13 09:26
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争というものに、正義の戦争、悪の戦争があるとしたら、日露戦争は間違いなく正義の戦争であった。これは、ロシアの侵略に対峙した日本が、生き残るか滅びる(あるいは植民地化される)かの瀬戸際を乗り切るために何としても戦わねばならなかった、またそれに勝利したことで西洋列強の植民地支配に苦しむアジアの諸国民に希望と勇気をあたえ、世界史を大きく前進させた、そういう戦争であった。
しかし残念なことに、我が国が世界に誇るべきこの戦争を、戦後の日本では、日本が列強の仲間入りをし、近隣諸国をいじめ、ついには太平洋戦争と敗戦という悲劇を生むきっかけとなった悪の戦争と教えられてきた。われわれは国のために尊い命を捨てた祖先を敬うこともなく、反対に彼らを恥じるよう教えられてきた。すべては戦後日本の教育界、学問界、マスコミにはびこる反日左翼勢力の仕業である。
『坂の上の雲』は、そんな史観が蔓延していた1960年代終わりから70年代初めにかけて発表され、当時の社会に大きな衝撃をあたえた司馬遼太郎のベストセラー小説である。当初、日露戦争で陸軍騎兵隊を指揮した秋山好古と、その弟で日本海海戦の参謀秋山真之、そしてその友人で俳人の正岡子規という愛媛出身の3人の物語という体裁ではじまった本書は、巻が進むにつれ、日露戦争記という様相を呈するようになった。それも、旅順戦、日本海海戦などのメジャーな戦いについてだけでなく、たとえば、ロシアを国内からかく乱させるために、明石元二郎がおこなったボルシェヴィキへの支援活動、小村寿太郎らによる外交交渉、極寒のロシアから灼熱のアフリカ沿岸、インド洋を通って極東へ向かうロシア艦隊に対して日本の同盟国イギリスがおこなった執拗な嫌がらせ等々、日本がこの戦争を有利に進めるためにあらゆる面から画策した努力のすべてが描かれる、壮大で多面的な歴史ドラマとなっている。
何といっても感動的なのは、明治の軍人がもっていた徳の高さである。どんな危機的な状況にあっても冷静さを失わない東郷平八郎元帥の器の大きさ、旅順攻略にてこずる最中に届く次男戦死の報せを淡々と受け入れる乃木希典大将の悲壮、己の戦略による旅順攻略を乃木の功労に帰した児玉源太郎陸軍参謀長の深慮、またいずれの将も敗軍の敵将に対しては敬意といたわりをもって接したことなど、どれも感涙なしには読めないものばかりである。
歴史小説である以上、本書には史実と異なる部分も数多く見受けられることは認めるべきである。しかしそれでも、日本の近代史を最初から悪と決めつける戦後史観へのアンチテーゼともいえるこの作品は、司馬史観の原点として、今も燦然と輝き続けている。
今年の秋から約2年、NHKのスペシャルドラマの原作です。
2009/02/07 22:12
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年の秋から約2年、NHKのスペシャルドラマの原作です。
主人公は、秋山好古、真之兄弟。日露戦争を戦った日本軍の兄は陸軍で、弟は海軍で活躍しました。
彼ら兄弟は、四国松山の出身です。同郷に正岡子規がおり、物語はこの三人を中心に進んでいきます。
第一巻は、青年時代。兄は士官学校へ。弟は海苦戦兵学校へ。
兄弟というものは、役割を持って生まれているかのようです。
兄はどっしり構えて頼りがいのある風貌と行動。
弟はどこか変わり者の天才肌。
この時代、留学して日本を世界的な視点から見ることが、若者に求められた役割でした。
現代でも、やはり留学は単に知識を得るだけではなく、広い視野をもつために不可欠なようです。
まだ、平和な時代から将来を見据えた行動をしなければならないのは、今も昔も同じはず。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
熱い息吹と鼓動が感じられる物語
2009/11/30 15:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yuki-chi - この投稿者のレビュー一覧を見る
近代国家の仲間入りをした日本。
この小説の主人公はまさしくこの時代の小さな「日本」という国。
そんな日本と共に時代を駆け抜けた3人の男。
四国・松山出身の秋山好古・真之兄弟、真之の幼馴染正岡子規。
1巻では、彼らの幼少から青春時代が描かれている。
当時、日本の政治、軍事は薩長に握られていた。
非藩閥人や小藩の子弟たちは、学問を熱心に学ぶことで大成しようと努力する。
「男子は生涯一時を成せば足る」
秋山兄弟、正岡子規もそれぞれが自分の身の丈にあったもの、
自分が成し遂げるべきものは何かを模索する。
生まれたばかりの日本という新しい国が先進諸国と並ぶことができるよう
理想を掲げ、懸命に生きた明治の人々。
眩いほどにキラキラと輝いていて、勢いがある。
現代の日本の社会や若者には、失われてしまった熱い息吹きや鼓動も伝わってきて、心が震えた。
兄弟、おさななじみが織り成す歴史の不思議さ
2006/01/17 01:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:金魚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりにも評価の高い作品なので読まれた方も多いと思います。軍人秋山好古・真之兄弟、文人正岡子規の三人を主人公として日露戦争を中心に明治時代を描いた一大叙事詩です。
壮大なテーマのため、全8巻の大長編になっていますが、読んで飽きがこない、というよりどんどん引きずり込まれるものです。
しかし、かたや兄が陸軍で世界最強と謳われたコサック騎兵集団を抑え、一方で弟が海軍で全ての作戦を練り、ロシア艦隊を撃ち破るというまるでドラマのような現実。運命というか歴史の不思議を感じずにはいられません。
高い場所へと
2024/02/02 09:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本という國ががむしゃらになって上を目指し始めた明治時代。
その時代を秋山兄弟を主軸に描き出す。
国一眼となって必死に坂道を登る。
それははるか頭上の雲を掴もうもする行為だったのか、それとも眼下に広がる風景を見下ろしたかったのか。
司馬先生のまなざしを感じる作品。
3人の個性
2022/02/06 19:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:strawberry - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の生活を支えるため、教師になりその後士官学校に入り明治の騎兵の
第一人者となった秋山好古と幼い頃は腕白大将で大学予備門に入学し後海軍に入った秋山真之、病気であろうと3食をしっかり食べ執筆を続ける正岡子規の個性が面白く描かれている。
司馬史観の代表作
2021/07/14 11:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代日本の思想潮流の一つである「司馬史観」の代表作である。最初読んだときは作者司馬遼太郎の筆力で主張される司馬史観に洗脳される思いであった。この作品に基づいた歴史観が一大潮流となったせいで、逆に様々な反論がでてきていくらか客観的に読み返すことができるようになった。いずれにしても日本の世相を動かすことができるほどの作品である。
数世紀のちも繙かれんことを
2021/06/01 17:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
とりあえず、この第一巻の冒頭二頁だけでも、
読んでおく値打ちがあると思うのです。
それほどに、日本社会に大きな影響を与えた
作品だと思うのです。
秋山兄弟よりも先に正岡子規が
登場するところが面白いですね。
坂の上の雲 一巻
2017/03/10 00:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Misha. Bear - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去に同書を読んだことが、ありましたが、やはり、司馬先生の作品の中ではトップ3だと思います。明治期の市民のエネルギーと身を起こすため勉学に努力する姿勢は、今の時代にも繋がると思いました。今回、電子図書で購入し、常に携えて、読書を楽しんでおります。
自分は何ができるか
2017/02/18 07:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴーすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた名作。
日露戦争に向かってっていく日本の話としてとらえられがちだけど
何もないところから、自分たちにできること、国のためにできること
それぞれの立場で一生懸命に生きた若者たちの物語と読むのが良いと思う。
少し、仕事に自信を無くしていたら
こういう本を読むのが良いのではないだろうか。
若者にとって刺激的な小説
2016/11/29 13:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さむがり - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末から明治初期の日本を舞台にした小説です.
この時代の少年たちは志が高く,それに行動力が伴っており,現在の自分と比較すると自分が情けなく感じます.そのため,この本を読むと自分の生活を見直し,改善したくなると思います.そういった点では,自己啓発書のような側面も併せ持つように感じられます.
また,小説としても,3人の主人公を中心に周囲の人間の描写が上手くされており,非常に楽しめます.
愛読書
2016/10/17 10:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルファ - この投稿者のレビュー一覧を見る
まさに名著、何回も読み返しています。秋山兄弟と明治という時代の雰囲気に浸る至福の時間をもたらしてもらえます。
我が国が近代国家として発展していく昂揚の時代を描いた傑作
2016/08/05 09:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、我が国の著名人が「読んでよかった本」の上位にあげている司馬遼太郎氏の名作です。明治維新をとげ、近代国家としての仲間入りをしたばかりの我が国の躍動の時代を生きた三人の四国松山出身の男達についての物語です。その三人とは秋山好古、秋山真之、正岡子規です。全8冊からなる長編歴史小説です。