一般に特殊相対性理論 (相対論と省略) は
の二つの仮定を礎に構築されている、と考えられています。しかし、 後藤教授によればアインシュタインはこっそりと何の根拠もない第三の仮説、
を導入し、それを元に相対論を作った、と主張します。ここでは後藤教授のこの主張が、 実はとんだ茶番であったことを明らかにしたいとおもいます。 |
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なお、結論だけをお読みになりたい方は 4.驚愕の真相・とんだ茶番だけお読みください(笑)。
(特殊) 相対論の基礎は、慣性系の間の座標変換です。座標変換というのは、トップに戻るある慣性系 K で見たときというとき、(t、P) と (t'、P') がどのような関係にあるかを数式で示したもの、と考えて良いでしょう。 相対論では、その座標変換はローレンツ変換というものになっています。時刻 t、位置 P(x, y, z)に起こった出来事が、K に対して運動している別の慣性系 K' で見ると時刻 t'、位置 P'(x', y', z')に起こったように見える最初に書いたように。一般に相対論は
- 特殊相対性原理
- 光速不変の原理
の二つの仮説から成り立っている(原理というと偉そうですが、これは単に理論を組み立てる際に前提とする仮説、くらいの意味しかありません) とされています。別の言い方をすると、慣性系の間の座標変換がローレンツ変換であることを、このふたつの仮説から導いている、ということです。
それに対して後藤教授が「もう一つ、アインシュタインはこの仮説をこっそり、何の根拠も無しに導入している」と主張する、
- 時空距離不変の仮説
とは、どういう物でしょうか。それをまず説明しましょう。
ある慣性系 K(x, y, z, t) で、位置
P0 : (x0, y0, z0) に置いた光源から光を発射し、位置P1 : (x1, y1, z1) にある光センサーでその光を受信する、という場合を考えます。光が P0 で光源から発射された時刻を
t0 、 その光が P1 でセンサーに受信される時刻をt1 と置くと、光速不変の原理により、光速は c ですから、という式が成り立ちます。「P0P1 間の距離」を式で表すと、(式 1-1) : (P0P1 間の距離) = c(t1 - t2) ですから、(式 1-1) と (式 1-2) をまとめて、(式 1-2) : (P0P1 間の距離)2 = (x1 - x0)2 + (y1 - y0)2 + (z1 - z0)2 という式が成り立ちます。さて、いちいち(式 1-3) : (x1 - x0)2 + (y1 - y0)2 + (z1 - z0)2 = c2(t1 - t2)2 (x1 - x0)2 などと書くのは面倒なので、と置いて、(式 1-3) を書き換えると、
dx = x1 - x0 dy = y1 - y0 dz = z1 - z0 dt = t1 - t0 (式 1-4) :となります。ここで、右辺を移項すると、dx2 + dy2 + dz2 = c2dt2 (式 1-5) :が成り立ちます。さて、この (式 1-5) の左辺は今後よく出てくるので、これをdx2 + dy2 + dz2 - c2dt2 = 0 と置いてしまいます。すると、(式 1-5) は、ds2 = dx2 + dy2 + dz2 - c2dt2 (式 1-6) :になります。ds2 = 0 この ds は相対論では重要な役割をもつ量で、「時空距離」「4次元的距離」と呼ばれることもあります。 今の計算の場合には ds = 0 ですが、一般の場合には ds は0とは限りません。 特に注意しなくてはならないのは、
ds2 < 0 となる場合もあるということで、 この時は ds は虚数になります。さて、ここまでは、慣性系 K でのみ考えていました。 この出来事を、K に対して運動している別の慣性系 K' (x', y', z', t') で見ると、どうなるでしょうか?
K' で考えたとき、
と置くと、この慣性系でも光速不変が成り立ちますから、(式 1-3) を導いたのと同じように、
- 光が光源から発射された時刻を t'0、
- その時の光源の位置を
P'0 : (x'0, y'0, z'0) - 光がセンサーに受信された時刻を t'1、
- その時のセンサーの位置を
P'1 : (x'1, y'1, z'1) が成り立つはずです。ここでまた、先ほどと同じように、(式 1-3') : (x'1 - x'0)2 + (y'1 - y'0)2 + (z'1 - z'0)2 = c2(t'1 - t2)2 と置けば、
dx' = x'1 - x'0 dy' = y'1 - y'0 dz' = z'1 - z'0 dt' = t'1 - t'0 (式 1-5') :が成り立ちます。ここでまた、(式 1-5') の左辺を ds'2 と置けば、dx'2 + dy'2 + dz'2 - c2dt'2 = 0 (式 1-6') :となります。ds'2 = 0 さて、今までは「光源から光を発射してセンサーで受信する」というあるていど具体的な例で計算しましたが、 任意の
の組み合わせについて、もし (式 1-6) が成り立てば、
時刻 t0、位置 P0 時刻 t1、位置 P1 ということが (原理的には) 可能なはずです。ですから、この時は、K' でみたそれぞれの時刻と位置、
時刻 t0に位置 P0から発射された光が、 時刻 t1に位置 P1に届く について (式 1-6') が成り立っているはずです。つまり、
時刻 t'0、位置 P'0 時刻 t'1、位置 P'1 ということが言えます (A ⇒ B は「A が成り立てば B も成り立つ」の意味) また、特殊相対性原理によって、K と K' は対等ですから、ds2 = 0 ⇒ ds'2 = 0 も成り立つはずで、結局ds'2 = 0 ⇒ ds2 = 0 (式 1-7) :ということになります (A ⇔ B は「A ⇒ B、かつ B ⇒ A」の意味)。ds2 = 0 ⇔ ds'2 = 0 (式 1-7) は、相対性原理と光速不変の原理の二つの仮説から導かれる「どの慣性系でも光速は不変」 という事実 (二つの仮説が正しい、という前提での事実) を数式で表したものです。 ここからがいよいよ後藤教授の出番です。
教授によると、アインシュタインは先の二つの仮定だけではなくて、
(式 1-8) :という式が成り立つ、という仮定を、何の根拠もなく持ち出して、それをつかってローレンツ変換を導き出している、 というのです。ds2 = ds'2 当然、(式 1-8) が成り立てば、(式 1-7) は自動的に成り立ちます。一方、(式 1-7) が成り立っていても、 (式 1-8) が成り立つとは限りません。つまり、(式 1-7) と (式 1-8) の間には飛躍があるわけです。相対論の基本であるローレンツ変換の導出に、 こんな論理の飛躍があるとしたら、大問題です。
この (式 1-8) が後藤氏の言う「時空距離不変の仮説」です。
アインシュタインがなぜ、このような不可解な仮定を導入したか、それを後藤教授は次のように推測しています。
- まず、(式 1-2) にも出てきた三次元の (つまり、通常の) 距離 dl
を考える。dl2 = dx2 + dy2 + dz2
- 特に根拠もなく、この式に第4の次元 (dw としましょう) を付け加えた時空距離 ds を、
と置くds2 = dx2 + dy2 + dz2 + dw2
- 更に全く根拠なく、第4の次元 dw が dt に c と虚数単位を掛けた ic・dt である、と仮定する
ds2 = dx2 + dy2 + dz2 + (ic・dt)2
= dx2 + dy2 + dz2 - c2dt2 - 三次元の距離が平行移動や回転に対して不変である、という事実から類推して、 時空距離は慣性系の間の座標変換に対して不変である、と勝手に仮定する
ds2 = ds'2 さて、アインシュタインが本当にそのような勝手な仮定を使っていたのかどうか、 それは最後の楽しみにとって置いて、 ローレンツ変換を導き出すのに本当にこの仮定が 必要かどうか、まずはそれを検証してみましょう。
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まず、結果を先取りして、ローレンツ変換がどういう式であるか、お見せしましょう。 ローレンツ変換といっても、変換の対象となる慣性系 K と K' の関係によっていろいろな式になります。 K から見て K' はどの方向にどれだけの速さで動いているか、 それぞれの系の座標軸はどちらを向いているか、 座標の原点はどこに取るか、時刻の基準点 0 はいつに取るのか... によっていろいろなローレンツ変換があるわけです。ここでお見せするのは、
という場合のローレンツ変換です。以下に示します。
- K の x 軸と K'の x'軸、y 軸 と y'軸、z 軸 と z'軸はそれぞれ平行
- K' は K の x 軸の方向に速度 v で運動する
- K での時刻 0、位置 (0, 0, 0) は K' での時刻 0、位置 (0, 0, 0)に対応する
- (式 2-1-1) : x' = γ(x - vt)
- (式 2-1-2) : y' = y
- (式 2-1-3) : z' = z
- (式 2-1-4) : t' = γ(t - vx/c2)
ただし、γ = 1/