4カ月間連続勤務や合計10万円以上の「自腹購入」を強いられたうえに、大学の単位もすべて落とした――。飲食チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」でアルバイトとして働いていた大学2年の男性と労働組合「ブラックバイトユニオン」が9月10日、フランチャイズ本部と店舗運営会社に対して、未払い賃金の支払いや、職場環境の改善などを求めて、団体交渉を申し入れた。
ブラックバイトユニオンは9月14日、東京都内で記者向け説明会を開いて、フランチャイズ本部「レインズインターナショナル」(横浜市)から団体交渉を拒否されたことや、店舗運営会社から団体交渉に対する回答を保留されたことを明かした。
●1日12時間労働で、4カ月間1日も休まず働く・・・
ブラックバイトユニオンによると、今回、男性が声をあげた背景には、あまりにも酷いアルバイトの労働環境があったのだという。
男性は2014年5月から、首都圏の「しゃぶしゃぶ温野菜」の店舗にアルバイトとして勤務。当初は「比較的まともな職場環境」だったが、2014年秋以降、店の人手不足が深刻化して、男性の労働時間が増加していった。
多忙さから、男性が昨年12月と今年3月に「辞めたい」と申し出た。ところが、店長から「辞めるなら、ミスが多いので懲戒免職にする」などと脅されたり、数千万円の損害賠償請求を示唆されたりなどして、辞めたくても辞められない状況に追い込まれたという。
男性は1日12時間労働で、今年4月中旬から8月中旬までの4カ月間は、1日も休んでいなかった。ブラックバイトユニオンは、今年7月の労働時間について「およそ350時間以上になる」と試算する。しかし、労働時間を管理する店長が不正をおこない、その間に本来支払われるべき賃金は半分以下しか支払われていない。また、合計10万円以上の「自腹購入」までさせられていたという。
●「典型的なケースがすべて詰まっていた」
深夜までに及ぶ長時間労働のため、男性は大学にほとんど出席することができず、今年度前期の単位はすべて落としてしまった。さらに8月12日には、帰宅中だった男性は、店長から「家に行くからな。殺してやる」という脅迫電話も受けたそうだ。男性は不安障害とうつ状態になり、現在のバイト先には勤務できないという診断書も出ている。
一方、4カ月連続勤務に応じることは想像しがたいかもしれない。どうして、男性はそこまで追い詰められたのだろうか。ブラックバイトユニオンの青木耕太郎氏は「男性は責任感が強く、非常に優しい性格。男性のミスのせいで店長がクビになる(のちに虚偽と判明)と聞いて、申し訳ないと考えたことがあった」と説明する。
青木氏によると、同ユニオンに寄せられる相談のなかにも、今回のように学生バイトが何十連勤も強いられていたり、多額の自腹購入をさせられたり、損害賠償請求をされるといった相談は多々あるという。ひどい場合は、休学したり、退学に追い込まれることがあるそうだ。「今回は特殊ではないが、典型的なケースがすべて詰まっていた」(青木氏)。
学生バイトが長時間労働・連続勤務を強いられている状況について、青木氏は「サービス業が伸びている中で、1店舗に正社員が1人程度しかおらず、学生中心のアルバイトで回すことが多くなっている。どうしても学生が加重な責任を負うことになっている」と話す。
男性は学業にも大きな影響が出てしまった。一番身近な人に相談できないものなのだろうか。青木氏は「うつ状態になってしまったことや、大学の単位をとれていないことなどは、身近な人に相談しづらかったり、理解してもらえないこともある」と話していた。