日本の最大野党が蓮舫氏を新党首に選出 女性で父親は台湾出身

大井真理子記者

蓮舫氏の党首選出馬は議論になった

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蓮舫氏が日本の最大野党、民進党の初の女性党首に選ばれた時、ガラスの天井は二重の意味で破られた。片方の親が外国人の人が、主要政党の党首になるのは彼女が初めてだからだ。

蓮舫氏の父親(故人)は台湾出身で、母親は日本人だ。片方の親が外国人の赤ちゃんが全体のわずか2~3%しかいない日本では、彼女が野党党首になったことは大きな出来事だ(蓮舫氏は政治活動において姓を使わず、下の名前だけを使っている)。

しかし、蓮舫氏の選出をめぐり議論が全くなかったわけではない。台湾籍を放棄していなかったことについて、蓮舫氏はうそをついたと非難された。

日本では二重国籍は認められていない。片方の親が外国籍の場合、原則として22歳までにどちらの国籍を選ぶか決めなくてはならない。

蓮舫氏は、17歳のときに父親が代理で台湾籍を放棄してくれていたと思っていたと話していた。

複数の国の血を引く人は日本では珍しい

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蓮舫氏によると、放棄の手続きは、大使館にあたる台北駐日経済文化代表処で中国語で行われた。言葉が分からないため、手続きが済んだのか確認のしようがなかったという説明だった。

しかし実際には、手続きは済んでいなかった。台湾側の公式記録で、蓮舫氏が依然として台湾籍を持っていることが確認された。

蓮舫氏はそれを受けて謝罪し、台湾籍の除籍を申請した。しかし、この問題は蓮舫氏の今後の政治キャリアについて回ることだろう。

批判勢力は、蓮舫氏が国籍についてうそをついたことが問題なのだと言う。

蓮舫氏は、うそをついたのではなく間違いだったと主張している。

しかし今回の騒ぎは、複数の国の血を引く政治家を、日本が指導者として受け入れられるのかという問題を浮き彫りにした。

薄氷の上を歩く

2014年に日本で生まれた新生児のうち、片方の親が日本人以外だった赤ちゃんはわずか3.4%だった。複数人種の血を引く人は、日本ではまだ珍しい存在だ。

日本で言う「ハーフ(hafu)」の「エキゾチック」な外見は、エンターテインメント業界では受け入れられてきた。ただしそれはもっぱら、外国人の親が白人の場合に限られる。

日本人と米国人の両親を持つジャーナリスト、モーリー・ロバートソン氏は、「日本社会とメディアには、白人ハーフの見た目に対する、強い執着がある」と語る。「自分がこれまで生きてきて、白人以外の外国人とのハーフと比べて、いい扱いを受けてきたのは確かだ」。

私自身の娘も、両親の人種は別々だ。娘は目が大きくてまつげが長いとほめられることがあるが、それは私ではなく、夫から受け継いだ特徴だ。告白すれば、東京で10代を過ごした私も、大きな目と長いまつげが欲しくて仕方がなかったのは認める。

しかし、西洋的な外見のメリットには限界があるとロバートソン氏は指摘する。

「どんなにちやほやされていたとしても、社会規範を破ったが最後、あっという間に激しい偏見にさらされる。職場で欧米人らしく振舞い過ぎると、会議で聞かれていないのに意見を主張したりしたら、のけものにされる可能性がある」。

ロバートソン氏は、「複数の人種の血を引く出自で『楽をしている』人は、いつも薄氷の上を歩いているようなものだ。自分自身、何度も氷の下に落ちたことがある」と語った。

「人種の階層」

さらに、日本人ではない方の親の肌の色が濃かったら、もっと大変な思いをするかもしれない。

2015年にハーフとして初めてミス・ユニバース日本代表に選ばれた宮本エリアナさんは、父親がアフリカ系米国人で、子どものころに肌の色が黒いからといじめられた。

今年、ミス・ワールド日本代表に選ばれた吉川プリアンカさんは、帰国した時「ばい菌扱い」されたと語った

刷り込まれた「人種の階層」の意識があると識者は指摘する(写真はミス・ワールド日本代表に選ばれた吉川さん)

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ロバートソン氏は、「2人とも白人とのハーフだったら、周囲の反応は間違いなく違っていたはず」と話す。「白人が一番上で黒人が一番下という、上の世代から受け継がれた『人種階層』意識が、日本では根強い」と同氏は推測する。

若者の間では偏見はずっと弱まってきているが、ステレオタイプ的な見方はまだ残る。

ロバートソン氏は、「この都市伝説によると、白人は美しくクリエイティブ(創造的)。東アジアの人はその次に美しく、数学や科学が得意。一方で黒人は、スポーツと音楽が得意ということになる」と話す。

日本至上主義者?

日本で、特に日本のインターネット上で憎悪の対象になりやすいのが、在日朝鮮・韓国人だ。そのほとんどは、日本の植民地時代に日本に来た人か、その子孫だ。

在日朝鮮・韓国人はもう何十年にもわたり、日本で差別されてきた。日本国籍を取得していないのに、一部の地方自治体で投票資格が認められたり、福祉手当が受けられる、それは「特権」だ――というのが、その批判の一部だ。

日本名を使い、人種的な出自を隠して生活する人も多い。

日本人を中傷するために「在日」と呼ぶのは、ネット上ではありがちなやり口だ。私も言われたことがある。特に、日本を批判しすぎる、あるいは愛国心が足りないとみなす相手を、そう呼ぶのだ。

「ほとんどの日本人にとって、日常生活で関わる外国人や複数人種の人間の数は、あまりに少ない」と言うロバートソン氏は、日本人が抱く人種的なステレオタイプに悪意はないと考えている。

一方の蓮舫氏は、国籍論争の渦中でこう語った。「政治家として、日本人という立場以外で行動したことは一切ない」。