Googleアナリティクスのマルチチャネルで、Googleディスプレイ広告のビュースルー効果が評価できるように
2013年06月24日
ライター:寳 洋平

米Googleは2013年6月19日(米国時間)、公式ブログにて、Googleアナリティクスを通じてGoogleディスプレイネットワーク(=以下GDN)のイメージ広告やYouTube動画広告のビュースルー効果がマルチチャネルレポートで可視化できるようになると発表した。
現在、ホワイトリストの参加を募集している。

この機能改善の要点と、今後GoogleディスプレイネットワークやGoogleアナリティクスを使ったWebマーケティング活動に、どのような影響が考えられるかをお伝えします。

  1. マルチチャネルレポートとは
  2. マルチチャネルレポートではこう見える
  3. リマーケティング隆盛のGDNの施策が変わるか?
  4. アトリビューションモデリングによるCPAやROASの再算出

マルチチャネルレポートとは

Googleアナリティクスのマルチチャネルレポートは2011年8月、Googleアナリティクス公式ブログで「隠されていたコンバージョン経路の封印がついに」という印象的なタイトルで紹介された。
この機能により、ユーザーがコンバージョンに至るまでの検討期間中、コンバージョンをアシストしたチャネルのクリックによる効果を評価できるようになった。

それまで、コンバージョンに直接関わったチャネルを中心に評価がなされており、検討段階の後半で機能するチャネルに、評価やマーケティングコストの配分が寄りがちだった側面がある。ユーザーがまだ浅い検討段階で、さまざまなチャネルを通じてサイトに訪問し、製品やサービスへの理解を深めていても、その効果が数値として見えにくかったからである。
マルチチャネルの登場は、コンバージョンに直接関わるチャネルばかりでなく、どのチャネルにもそれぞれ役割があることを明らかにした価値が大きい。

しかしながら、それらマーケティングチャネルの貢献度はすべて、あくまでもクリックに基づく評価だった。チャネルの一つであるディスプレイ広告や動画広告には、他のチャネルとくらべて「見せる」という意味合いが強い。
そのため、クリックはされていないものの、ユーザー行動に影響を与える「ビュースルー効果」があることが知られており、その貢献度の可視化が課題となっていた。

ディスプレイ広告のビュースルー効果の事例として、2013年5月に川崎で開催されたアクセス解析サミット2013で発表された、無印良品のドイツで新規出店したECサイトの事例が記憶に新しい。
取り組みのなかで、ディスプレイ広告のインプレッションとオーガニック検索のブランドKW検索回数の増減とが相関関係にあることがわかり、ブランド認知の目的でディスプレイ広告を活用することになった実例が共有された。これからブランド認知を拡大していきたいと考える企業のWebマーケティング担当者にとって心強い事例であると同時に、ビュースルー効果を積極的に捉えた好例とも言えるだろう。

GDNインプレションレポートではこう見える

さて今回の機能改善で、GoogleアナリティクスのGDNインプレッションレポートを可能にすることにより、ディスプレイ広告(や動画広告)のビュースルー効果を、マルチチャネルレポートで見ることができるようになる。

マルチチャネルレポートで数値として見られる

コンバージョン経路のレポートに、このようなアイコンが表れる。

コンバージョン経路のレポート

目のアイコンがディスプレイ広告のビューで、動画のアイコンが動画再生のビューになる。

ディスプレイ広告と動画のアイコン

このレポートを可能にするには、GoogleアナリティクスとAdWordsがリンクされていること、必要な権限があること、Googleディスプレイネットワークに対応した新しいトラッキングコードが入っていることが条件になる。このトラッキングコードは、2012年7月の弊社コラムでも紹介した、リマーケティング with Googleアナリティクスを活用するときに書き換えたのと同じものである。
また、最初にGoogleアナリティクス上で、GDNインプレッションレポートを有効にする必要がある。詳細は日本語のヘルプを参照してほしい。

GDNインプレッションレポートを有効にするためのオプション

リマーケティング隆盛のGDNの施策が変わるか?

Googleは2013年5月にCustomer Journey to Online Purchaseというツールを発表したが、Webマーケティングの世界ではカスタマージャーニー(顧客の旅)という言葉が徐々に浸透しつつある。顧客が自社の製品やサービスを購入、または愛用するまでの一連の行動を「旅路」とみる視点である。
この顧客の旅のうち、特に前半部分をざっくり分けると「まだブランドや製品を知らない」ステージと「知ってはいるが、まだ購入やアクションに至っていない」ステージの二つになるだろう。

そのうちの前者、「ブランドを認知していないユーザー」に対するアプローチは、これまでもっとも評価が見えにくかった領域の一つだ。
現在GDNの施策では、一度訪問したユーザーの再訪問を捉えるリマーケティングが盛んだが、これは後者、「知ってはいるが、まだ購入やアクションに至っていない」ステージにいるユーザーへのアプローチになる。

しかし、ビジネスを拡大していくには「そもそもまだブランドを知らない」ステージにいるユーザーへのアプローチも大切である。
今回のディスプレイ広告のビュースルー効果の可視化は、特にこの初回接触のアプローチに対する、重要な評価の指標になり得ると考えられる。

この場合、施策はリマーケティングではなく、コンテンツにマッチしている広告を表示させるコンテンツターゲットや、サイトに訪問したユーザーと行動が似たユーザーをターゲットする、類似ユーザーリストの活用が挙げられる。
今回のビュースルー効果の可視化により、このようなGDNを使った「まだ見ぬ顧客」へのアプローチにも光が当たりそうだ。

アトリビューションモデリングによるCPAやROASの再算出

マルチチャネルレポートによって可視化したビュースルーを含むアシスト効果とラストクリックの効果を、どのような重み付けをして評価するべきか。
例えば、すべてを均等だと考えるか、初回接触と最後の接触を重要と考えるかにより、チャネルの評価は大きく変わってくる可能性がある。

Googleアナリティクスの無料版でも公開となったアトリビューションモデリングツールでは、あらかじめ考えられるいくつかのパターンをモデル化して提供しており、モデルごとの比較が簡単にできる。
AdWordsの費用データならば自動で、その他の費用データもCSVでアップロードでき、重み付けを変えたときのCPA(Cost Per Acquisition)やROAS(Return on Advertising Spend)の再算出が可能だ。

基本チャネルグループのサンプル

これらの指標により、ディスプレイ広告を使ったまだ見ぬ顧客へのアプローチはもちろん、各チャネルに投資するコストの判断が可能になるだろう。
Googleアナリティクスを使ってマーケティングチャネルにかける適切なコストをしっかり見きわめる、そんな環境が整ってきていると言えそうだ。

以上、機能改善に伴って簡単にまとめましたが、いかがでしたでしょうか?
アユダンテはGoogleアナリティクスとAdWordsの認定パートナーとして、今後もGoogleアナリティクスやAdWordsを活用するみなさまにとって有益な情報をわかりやすくお伝えしていきます。

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