摂氏1300度にも達する木星の大赤斑上空

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赤外線観測で木星の上層大気の温度を調べたところ、大赤斑の上空が周囲よりもかなり高いことが明らかになった。

【2016年7月29日 Boston University】

太陽から遠く離れている木星は低温の世界だと思われがちだが、その大気の上層部は摂氏500度以上もある。「熱圏」と呼ばれるこの層の存在は地上の天体望遠鏡やNASAの探査機ボイジャーによって40年前に明らかにされたが、その熱源は今でも不明のままだ。

米・ボストン大学のJames O'Donoghueさんたちの研究グループが赤外線で木星の高層大気を観測したところ、その一部が周囲よりもさらに高温であることが明らかになった。その部分とは、地球数個分ものサイズを持つ太陽系最大の嵐、大赤斑の上空だ。大赤斑の上空800kmのエリアは、摂氏1300度にも達している。

大赤斑の上層大気が高温となっている概念図
大赤斑の上層大気が高温となっている概念図(提供:Art by Karen Teramura, UH IfA with James O’Donoghue and Luke Moore)

「初めてデータを見たとき、にわかには信じられませんでした。さらに検証に1か月を費やし、否定のしようのない事実であることを確認したのです」(O'Donoghueさん)。

O'Donoghueさんたちは、大赤斑が周囲のガスを攪拌して上方へと向かう波を送るのだと説明している。大赤斑上空で荒れ狂う大気の流れによって、(流体力学的な)重力波と音波が発生する(ギターをかき鳴らした際の弦の動きにあたるのが重力波、空気の圧縮にあたるのが音波だ)。これら2種類の波が合わさったものが大赤斑によって上層大気へ送り込まれ、海岸に打ち寄せる波のようにぶつかり、温度上昇を引き起こしているというのだ。

大赤斑の北半分の上空だけに高温部分が現れることの説明や、温度が常に高いのかどうかの確認など、未解決の問題点もある。「木星の下層大気と上層大気との間で起こっている相互作用を示す、決定的な証拠かもしれません。大赤斑の活動と上層大気の高温の関係がはっきりと説明できるようになれば、40年間続いた謎も落着ということになるでしょう」(O'Donoghueさん)。

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