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中華人民共和国(中国)
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● 滞在時の留意事項
1 パスポートの携帯等
(1)「出入国管理法」により、16歳以上の外国人はパスポートを携帯しなければなりません。また、ホテルへの宿泊、航空機、高速鉄道、長距離バスの利用、主要観光地への入場の際にパスポートの提示を要求されます。
万一の紛失に備えて、パスポートの写しや写真(人定事項を記載したページ)をとり、パスポートとは別に保管してください。
(2)パスポートを紛失した場合には、以下の手続きが必要になります。
○最寄りの派出所における「事案発生証明」入手
○出入境管理局における「パスポート紛失証明」入手
○日本国大使館(総領事館、領事事務所)におけるパスポート再発給
○出入境管理局における中国ビザの取得
※3日から最長10営業日が必要とされています。
2 滞在目的を問うための質問状
市中において中国の公安当局が外国人に対して身分証の提示を求めたり、滞在目的を問うための質問状(名称については、詢問筆録、問詢函等)を記載させるべく、滞在先のホテルに警察官が訪問し、事情聴取を行うことがあります。一般的に旅行の目的を尋ねる等の質問とされています。
3 居留・宿泊の際の「宿泊登記」
「出入国管理法」により、外国人は、居住または宿泊開始後24時間以内に管轄の公安機関において「宿泊登記」をする必要があり、怠った場合2,000元以下の罰金が科せられます。厳しく管理している都市もありますので、注意が必要です。
サービスアパートやホテルに居住、宿泊する場合は施設が「登記」を代行しますが、友人宅や会社の社宅等に宿泊する場合、日本から来た親族や友人を自宅に泊める場合、個人でアパートの長期賃貸契約を結ぶ場合は、自ら「登記」を行う必要がありますのでご注意ください。
なお、「居留許可」の申請や居留期間延長等の手続を行うためには、「登記」に基づいて発行される「臨時住宿登記表」が必要となります。
4 滞在期間の延長
悪天候による帰国便の欠航や、急病、交通事故による入院等、本人の責に帰すものでない理由から滞在期間を延長せざるを得ない場合は、滞在地の公安局に対し、航空会社の欠航証明書や病院の診断書等を添えて滞在期間の延長申請ができるとされています。個別に公安局の出入境管理局(庁)に照会してください。
5 「居留許可」
入国後「居留許可」手続きが必要な外国人(就労または180日を超える長期滞在者)は、中国入国後30日以内に管轄の出入境管理局(庁)へ「居留許可」を申請する必要があります。
居留期間を延長する場合は、「居留許可」有効期間満了の30日前までに申請が必要です。「居留許可」の発行や居留期間の延長には最長15営業日が必要とされています。
また、パスポート番号の変更等「居留許可」の内容に変更が生じた場合は、変更事由が生じた日から10日以内に変更の申請が必要です。
6 就労
あらかじめ、労働部局から「就労(工作)許可」を受けた上で、就労査証(Zビザ)を取得する必要があります。短期間の渡航でも、現地受入先への技術指導や興行等は就労にあたるとされます。渡航目的が就労に当たるか否かについては、労働部局に必ずご確認ください。
中国入国後は、労働部局から「外国人工作許可証」の発行を受け、管轄の出入境管理局(庁)において「居留許可」を申請します(※「外国人工作許可証」および居留許可の両方を取得前に就労した場合、出入境管理法違反となりますので注意してください)。居留期間を延長する場合は、「外国人工作許可証」の更新も行う必要があります。
「出入国管理法」には、不法滞在には1万元以下の罰金または15日以下の拘留を科す、不法就労には2万元以下の罰金および15日以下の拘留を科し、悪質な場合は国外退去処分とするとあります。なお、留学生やインターンシップの資格保持者はアルバイトが可能とされているものの、手続は複雑で、実際に許可を得られることはほとんどないようです。
7 出国制限
「出入国管理法」には、未結了の民事事件を抱え、裁判所より出国許可を得ていない場合、出国できないとされています。実際に、民事事件の被告となり中国を出国できなくなった日本人のケースがあります(パスポートを差し押さえられることもあります)。
また、「出入国管理法」には、刑事事件の被告人または被疑者である場合、刑事罰の執行が完了していない場合、外国人は出国できないとされています。
8 二重国籍者
父母の一方を日本人、もう一方を中国人として中国で出生した者は、届出により日本と中国の国籍を取得します。
中国政府は二重国籍を認めておらず、中国国内において日本人として長期滞在や就学する予定がある場合、中国において「退籍」(国籍離脱)手続をする必要が生じる可能性が高くなります。中国国籍の「退籍」手続完了までに長期間(2〜3年程度)を要することがあるので、あらかじめご留意ください。
二重国籍状態の者が、中国旅券を使用して中国に入国した場合や日本国旅券を所持していない場合は、中国政府は中国人として取り扱うため、邦人援護を行う必要が生じた時に困難が生じる可能性がありますので、あらかじめご注意ください。
9 交通事故
2022年の中国における交通事故による死亡者数は6万676人でした(同年の日本では2,610人)。
交通ルールの大きな違いは、走行車線が逆の右側通行であることや多くの交差点では赤信号でも車両の右折が可能であること等です。また、多くの電動自転車やバイク等の小型車両が交通ルールを守らず信号無視や逆走、歩道上を走行しているので、車を運転する時だけでなく、歩行中も十分な注意が必要です。
また、中国でも飲酒運転は違法行為です。違反した場合には法律によって厳正に処罰されますので、飲酒運転は絶対にしないでください。
タクシー等に乗車している際に事故に巻き込まれた場合、シートベルトを着用していないと、乗車する運転手(または相手車両の運転手)の過失であっても、任意保険の補償を100%受けられない可能性がありますので、シートベルトは必ず着用してください。
万一、交通事故に遭遇した場合は、まず交通警察(122)に通報してください。事故現場の保存が義務づけられているので、警察官の到着までは車両は決して移動させないでください。
なお、被害に遭っても、日本と中国の経済格差や賠償に関する法制度の違いから、事故を起こした相手方から十分な賠償を受けられる保障はありません。渡航前に海外旅行保険に加入することをおすすめします。
10 いわゆる「スパイ行為」等
(1)中国は、2014年に「反スパイ法」(反間諜法)を制定し、2023年4月には「スパイ活動」への対策を強化する改訂を行う等、「国家安全」に危害を及ぼす行為への対策を強化しています。当局から関連法規に違反したとみなされると取調べや長期間の身体拘束を余儀なくされたり、重い刑罰を科されたりするおそれがあるので注意が必要です。
刑法や反スパイ法には、「スパイ罪」、「スパイ行為」等が規定されていますが(後記(3)に詳述)、幅広い行為が「スパイ行為」とされている上、「その他のスパイ活動」も「スパイ行為」の1つとして規定されているため、列挙されているもの以外にも様々な行動がスパイ行為とみなされる可能性があり、これらの法律の内容が当局によって不透明かつ予見不可能な形で解釈・運用される可能性もあります。
また、いわゆる「スパイ行為」のほか、中国では、「軍事施設保護法」、「測量法」等に違反するとされる行為も「国家安全に危害を及ぼす」とされ、拘束や刑罰の対象になる可能性があります。
さらに、2024年2月、中国国内の機関や企業による国家秘密の管理徹底を目的として国家秘密保護法の改正が行われ、5月1日に施行されました。国家秘密の定義や具体的な運用について不透明であるため、入手した情報の共有や発信が違法とみなされる可能性があります。
(2)具体的な留意事項
上記のような関係法規に関して、特に以下の諸点に十分留意してください。
ア 刑法第110条、反スパイ法第4条第2号には、「スパイ組織に参加する」、「スパイ組織及びその代理人の任務を引き受ける」といった行為が「スパイ行為」に当たるとされています。
中国側は具体的にどのような組織や人物が「スパイ組織及びその代理人」に該当するか明らかにしておらず、国家安全当局から「スパイ行為」をしたとみなされた場合、厳罰に処せられる可能性がありますので、この点、特にご留意願います。
注:中国で発行されている反スパイ法の解釈本(王愛立主編「中華人民共和国反間諜法釈義」)によれば、「スパイ組織」とは「外国政府若しくは国外の敵対勢力が設立する、我が国の政治、経済、軍事等の面における国家秘密、インテリジェンス等の情報を収集し、若しくは我が国に対して転覆、破壊等の活動を行い、我が国の国家安全と利益に危害を及ぼすことを主な任務とする組織を指す」とされています。
イ 中国政府の国家秘密、インテリジェンス等を持ち出したり、国外の組織にそれらを提供したりするのみならず、国家秘密、インテリジェンス等に該当するとされる情報(文書、データ等を含む)を何らかの手段で取得、保有しただけで、「スパイ行為」とみなされ、厳罰に処されるおそれがあります。
ウ 「軍事禁区」や「軍事管理区」と表示された場所は、軍事施設保護法により、許可のない立ち入りや撮影等が禁止されていますので、特に注意する必要があります。
エ 無許可のまま国土調査等を行うことは違法とされています。GPSを用いた測量、温泉掘削等の地質調査、生態調査、考古学調査等に従事して地理情報を収集、取得、所有等をした場合も、「国家安全に危害を及ぼす」として国家安全当局に拘束される可能性があります。(手書きのものを含む)地図を所持するだけで、その対象とみなされる可能性があります。
オ 「統計法」では外国人による無許可の統計調査も禁止されており、学術的なサンプル調査(アンケート用紙配布等)を実施する場合等でも、調査行為が法律に抵触することがありますので、共同調査を実施する中国側機関(学校等)との十分な打合わせが必要です。活動内容が「調査」や「情報収集」に該当する可能性がある場合には、細心の注意が必要です。
カ 上記の各行為については、最近の行為(直近の中国入国時の行為)のみならず、過去の行為(以前の中国入国時の行為や中国以外での行為等)についても調査等の対象になり得ることに注意する必要があります。
(3)中国国家安全部が公表しているスパイ事案摘発等の例(中国人のみならず、外国人にも関係する可能性がある事例があります。)
ア 外国人が、中国の国家機密を違法に外国に提供した。
イ 外国人が、国家機密情報を含む大量の情報を収集した。
ウ 出会い系アプリで知り合った女性からの依頼を受け、報酬を得るため、および女性の歓心を買うため、中国軍艦の停泊地や出港の様子を撮影した。
エ 軍用飛行場の施設、戦闘機の配置などを違法に何度も撮影し、ネット上で公開した。
オ 外国人が外国機関の指示を受け、自然保護区で多数の野生植物の標本や種子サンプルを違法に発掘・採取し、違法に海外に輸送した。
カ 観光を名目に中国の自然保護区に複数回入り込み、大量の昆虫サンプルを採取し、国外に持ち出していた。
キ 中国の国家級湿地保護区と森林等において、検査機器を多数設置し、地理、気象、生物などの機密データを違法に収集した。
※国家安全部WeChat公式アカウント(公衆号:gh_b056d127ad86)より抜粋。
(4)関連規定(反スパイ法、刑法)
ア 「スパイ行為」の定義
「反スパイ法」第4条
「本法に言うスパイ行為とは以下の行為を指す。
(一)スパイ組織及びその代理人が実施する、若しくは他人に指示、資金援助して実施する、又は国内外の機構、組織、個人がそれと互いに結託して実施する、中華人民共和国の国家安全に危害を及ぼす活動。
注:中国で発行されている反スパイ法の解釈本(王愛立主編「中華人民共和国反間諜法釈義」)によれば、「国外の機構」とは、「中華人民共和国の国境外の国・地域の機構、例えば、政府、軍隊及びその他の関係当局によって設立された機構を指す。また、上記の国外の機構が我が国国内に設立した支部機構若しくは代表機構も国外の機構に属する。」とされており、「国外の組織」とは、「主に中華人民共和国の国境外の国・地域の政党、社会団体、非政府組織及びその他の企業、事業組織等を指す。同様に、上記組織が中国国内に設立した支部組織若しくは代表組織も国外の組織に属する。」とされています。
(二)スパイ組織に参加する、若しくはスパイ組織及びその代理人の任務を引き受けること、又はスパイ組織及びその代理人に頼ること。
(三)スパイ組織及びその代理人以外のその他の国外の機構、組織、個人が実施する、若しくは他人に指示、資金援助して実施する、又は国内の機構、組織、個人がそれと互いに結託して実施する、国家秘密、インテリジェンス及びその他国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品の窃取、偵察、買収、不法提供、又は国家の職員を策動、誘惑、脅迫、買収し、裏切るようにさせる活動。
(四)スパイ組織及びその代理人が実施する、若しくは他人に指示、資金援助して実施する、又は国内外の機構、組織、個人がそれと互いに結託して実施する、国家機関、秘密に関わる機関若しくは重要情報インフラ等に対するサイバー攻撃、侵入、妨害、制御、破壊等の活動。
(五)敵に攻撃目標を指示すること。
(六)その他のスパイ活動を行うこと。
スパイ組織及びその代理人が中華人民共和国の領域内において、又は中華人民共和国の公民、組織その他の条件を利用し、第三国に対するスパイ活動に従事し、中華人民共和国の国家安全に危害を及ぼすものは、本法を適用する。」
イ 刑法上の「スパイ罪」の罰則規定等
(ア)刑罰(いわゆる「スパイ罪」)
「刑法」第110条:(1)スパイ組織に参加する、またはスパイ組織や代理人の任務を引き受ける、(2)敵に攻撃目標を指示する行為で国家の安全に危害を及ぼした場合は、10年以上の懲役または無期懲役に処するとし、情状が比較的軽い場合は3年以上10年以下の懲役に処する。
「刑法」第111条:国外の機構、組織または人員のために、国家秘密またはインテリジェンスを窃取、偵察、買収、不法に提供した者は、5年以上10年以下の懲役に処するとし、その情状が特別に重い場合には、10年以上の懲役又は無期懲役に処し、情状が比較的軽い場合は、5年以下の懲役、拘留、管制又は政治的権利の剥奪に処する。
「刑法」第113条では、上記刑法第110条の罪や刑法第111条の罪等について、中国及び人民に対する危害が特別に重大、または情状が特別に悪辣である場合には、死刑に処されることがあります。
この章の罪(国家安全危害罪)を犯した場合には、財産没収を併科することができるとしています。
(イ)行政罰
「反スパイ法」第54条により、行政拘留(15日以下)や罰金(5万人民元以下または違法所得の2倍以上5倍以下)に処される可能性があります。
※中華人民共和国反間諜法(https://www.gov.cn/yaowen/2023-04/27/content_5753385.htm )
※国家安全機関の行政法執行手続規定
(http://www.legaldaily.com.cn/index_article/content/2024-04/26/content_8989528.html)
11 写真撮影、政治活動、宗教活動、集会等
写真撮影は、撮影した対象が国家機密に触れると判断された場合は重罪となりますので、撮影可能な場所なのか否かを事前によく確認しておくことが肝要です。
特に、軍事関係の施設・設備、国境管理施設等の一部の公的施設等では写真撮影が厳しく制限されており、決して興味本位でこれらの施設等を撮影しないようにしてください。逮捕に至らなくても当局から一時拘束さ