<ポイント> 20世紀初頭に初の黒人ヘビー級チャンピオンとなったジャック・ジョンソンをモデルに、スタンリー・キューブリック初期作品の脚本を担当していたハワード・サックラーが戯曲化してブロードウェイで大ヒット、トニー賞に加えピュリッツァー賞も受賞した名作ドラマを、『卒業』を大ヒットさせたプロデューサー、ローレンス・ターマンが製作した。監督は『コンラック先生』『ノーマ・レイ』など常に社会派の問題作を撮り続ける巨匠マーティン・リット。主演は『スター・ウォーズ』のダースベイダーの声で知られるジェームズ・アール・ジョーンズで、白人の妻役のジェーン・アレクサンダーと共に本作でアカデミー主演賞にノミネートされた。共演に『殺しのテクニック』のロバート・ウェッバー、『ダーティハリー2』(73)『大統領の陰謀』(76)のハル・ホルブルックなど。 ●原作戯曲「THE GREAT WHITE HOPE」で1969年にピュリッツァー賞(文芸・戯曲部門)を受賞したハワード・サックラーは、スタンリー・キューブリックの初長編映画『恐怖と欲望<未>』(53)や第2作『非情の罠』(55)の脚本を担当。本作の後には『原子力潜水艦浮上せず』『JAWS/ジョーズ2』(78)などで共同脚本に携わった。 ●原作となった舞台は1969年のピュリッツァー賞を受賞。トニー賞でも作品賞、主演男優、主演女優賞を獲得した。上演時間は4時間に及ぶ大作だった。 ●主演のジェームズ・アール・ジョーンズとジェーン・アレクサンダーはブロードウェイの舞台でも主演をつとめ、アカデミー賞にも同時にノミネートされた。 ●『スター・ウォーズ』のダースベイダーの声を担当したジェームズ・アール・ジョーンズは2010年にアカデミー賞の名誉賞を受けた。 ●原題の「偉大なる白人の希望」とは、黒人チャンピオンを倒す白人ボクサーであり、それを願うアメリカ社会の比喩である。
白人の不安、怯えを消し去る為に次々に繰り出されるジェファーソンの対戦者たち。 “THE GREAT WHITE HOPE”、今作の原題が暗喩するように、白人社会の希望とプライドを一身に仰いだ者たちに対しても、ジェファーソンの拳は容赦なく、彼の無敗記録は続いていくのだが、、、。 ここから先は是非御覧頂きたいのだが、クライマックスに向けての残酷な出来事と、理不尽で儚いラストは、当時席巻していたアメリカン・ニューシネマにも通じるものがあった。
DVD化されていないので、仕方なくVHSで購入しました。 アメリカではボクシング映画史上でも評価が高い作品なので、是非ともDVDやブルーレイなど、鮮明な画像でみたいものです。 【ストーリー】 初の黒人チャンプとなったジャックは、黒人から王座を奪い返すべく挑戦した「偉大なる白人の希望」(原題の”The Great White Hope”)を返り打ちにして、白人女性エレノアとの生活を送っていた。 そのため、チャンピオンでありながら、白人たちには敵視されてアメリカに居られなくなる。 海外でのタイトル・マッチも白人たちの妨害で実現せず、生活は行き詰まり、エレノアとの仲も険悪になっていく。 行き場を失くし、白人たちの策謀による八百長試合を持ちかけらるのだが……。 【見どころ】 黒人であることのプライドを貫いたチャンピオンの実話です。 人種差別の激しい時代のアメリカにおいて、黒人がチャンピオンになることは白人にとって許せない状況だったのでしょう。 原題の「The Great White Hope」は、そんな社会状況の中で、白人チャンピオンを誕生させるためのスローガンでもあるのですが、それがこの映画のタイトルになっているというのは、黒人チャンピオンに対する称賛のパラドクスでしょうか???
黒人初の世界ヘビー級チャンピョン、ジャック・ジョンソンの実話を基に舞台化されて大ヒットした作品の映画化。後にベトナム戦争の徴兵拒否によって世界タイトルを剥奪されたモハメッド・アリが、この舞台を見て、この内容は私の話であるといったのは有名な話。103分と短い映画で展開も早く、もともと舞台であったので、演出も舞台を見ているような背景の構成が多く、飽きさせない。ただ、アマゾンのストーリー紹介に、映画のクライマックスのすべてが書かれてあるので、これを読んでしまうと興味の半分は失われてしまうので注意。実在のジョンソンはフィルムや写真を見ると笑っているものが多いが、この映画でも、憎悪むきだしの人種差別者に対して、(付き合って怒った表情を見せずに)、満面の笑みで、ジョンソンは対応している。こうした対応は、まず普通の人間には無理なので、非常に驚くとともに、人間ジョンソンの大きさに尊敬の念が起こる。舞台と違うのはラストの屋外のボクシングシーンで、ジョンソンの当時のフィルムと比べると、その忠実な舞台の再現には驚く。鑑賞の際に注意したいのは、英語が難解なこと。俗語がふんだんに用いられ、私はアメリカで販売のDVDを英語の字幕で見たのだが、字幕を読んでも内容をとれない英文が多く、閉口した。本作の主役が、アカデミー賞候補にとどまったのに、その年に多くの受賞したのは保守的な“パットン大戦車軍団”というのも、興味深い事実。脇役で注目は、テレビシリーズ“大草原の小さな家”のレギュラーのモーゼス・ガン。本作は、歴史とは、一部異なる内容もあるので、この映画に興味を持った人には、優れたドキュメンタリー映画の“Unforgivable Blackness-Rise & Fall of Jack Johnson”を薦めたい(こちらの英語は比較的平易)。