2019年ハイブリッドSACDのリマスターを担当したのはHeba Kadryという女性。
チャーミングなルックスの人で坂本は近年の自分の仕事に彼女をちょくちょく登用しているらしい。
彼女によれば、使用したオリジナル・マスターは1/4アナログ・テープでテープスピード15ips(38cm/s)とのこと。
それって確か97年の「幸せな結末」で大滝詠一がスタッフに顰蹙を買いながら使った、90年代後半は既に、
ヴィンテージっぽい扱いになっていたアナログじゃなかったっけ。
なにか微妙にマイルドな風にリマスターしたのかな。YMOや細野晴臣と違って今回紙ジャケ仕様。
◆ ◆ ◆
いま私のリスニング・ルームにはレコード・プレーヤーがないので当時買ったアナログ盤の『B-2 Unit』を聴くことができない。
素人の耳ながらあの頃聴いた中で音が一番良く感じたアルバムというと、よく音楽ライターが挙げたがる盤 、
例えばRoxy Music『Avalon』などよりも『B-2 Unit』のほうが優れていたような感覚がある。
1980年の記憶をもう少し辿ってみる。このレコードを入手して針を落としてみたら、
派手なYMOと違って「音に隙間が多いな」という第一印象。後藤美孝の存在なんてまったく知らず、
「Thatness and Thereness」のヴォコーダーを通さない坂本の生声はなんともモゴモゴしてて。YMOでの、
ライブ演奏と比べてこっちのオリジナル版「Riot in Lagos」は地味に思えたしシングル「War Head」のような、
高揚感は皆無だし、ターン・テーブルに乗せる(いや録音したカセットを聴く)機会はそこまで頻繁ではなかった。
それがおもしろいものでヒットチャート(もはや死語だ)に縁のないアンチ・ポップな音楽が好きになると、
このアルバムのヨーロピアン趣味・Dubの残響・解り難さゆえのリピート性・ミニマルである事の美しさが病みつきになり、
逆に「Rydeen」を(松武秀樹がいなくなったYMOのライブ・パフォーマンスでは特に)聴くのが嫌になっていった。
◆ ◆ ◆
旧盤紙ジャケCDとの聴き比べはせずオリジナルLPの遠い記憶を思い出しながらSACD層で視聴する。
M1「Differencia」は昔のアナログでは打ち鳴らされる暴力的なドラムが圧倒的だったが、
本盤では他のパートの存在が強くなっている。M4「E-3A」ではバックのガムランっぽい音が一層明瞭に。
YMOのSACD程には音圧を上げないレベルで制作されているので、
SACDを聴ける方はいつも普通に聴く音量と少し上げた音量とで聴き比べてみると面白いと思う。
ピーター・バラカンがのちにいみじくも指摘しYMOのメンバーの中で特に坂本に顕著だった、
〝音を重ね過ぎてダメにする〟悪癖が、本作を作った頃はまだ顔を出していないのが大きなポイント。
Steve Nye/Dennis Bovell/Andy Partridgeの参加も大事だが坂本にはこの一点が最重要であることは、
後に海外で、変にごちゃごちゃしたソロアルバムよりもサントラのほうがずっと好まれたことからも明白だ。
David Baileyが撮った裏ジャケのポートレートも音楽同様に坂本のキャリアの中でダントツに美しい。
従来坂本は大人に向けて音楽を作っていたのにYMOのリスナー年齢層が10代がメインだった影響で、
この後、意識が少年少女向けになっていったのがなんとも遺憾だ。日本はお子ちゃまの国だからなぁ。
日本でYMO人気がピークに達したこの年、英国で坂本はJAPANに「Taking Island In Africa」も提供。
David Sylvianの歌を除くバックトラックは『B2-Unit』ともアトモスフィアは非常に近い。JAPANのみならず、
坂本のベスト・トラックとしても三本の指に入るこの曲。1980年は彼の創作の頂点だった。
せっかく細野晴臣『フィルハーモニー』SACDのボーナス曲に「夢見る約束」を入れたのだからこっちにだって、
上記に述べたシングル「War Head/Lexington Queen」を是非SACDで聴きたかった。
『B-2 Unit』の2ヶ月先行リリースだがマスター・テープの管理や権利が一緒じゃないのかしらん。
B-2 Unit
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, Hybrid SACD, インポート, 2019/10/4
"もう一度試してください。" | 通常盤 | ¥2,635 | ¥2,032 |
CD, 1994/9/28
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1,400 |
CD, CD, 2005/3/24
"もう一度試してください。" | 通常盤 |
—
| — | ¥1,500 |
CD, 1988/7/25
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1,880 |
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曲目リスト
1 | differencia |
2 | thatness and thereness |
3 | participation mystique |
4 | E-3A |
5 | isonic storage |
6 | riot in Lagos |
7 | not the 6 o’ clock news |
8 | the end of Europe |
商品の説明
内容紹介
ダブ的な手法を取り入れた、高度に実験的で過激な問題作、1980年作品。YMO活動中に発売された、坂本龍一の過激な問題作、オリジナルは80年発売。
POPMUSICのデニス・ポーヴェル、XTCのアンデイ・パートリッジ、大村憲司参加。ダブや、ミュージック・コラージュの手法を大胆に取り入れた、永遠の名作の1枚。本人及び、NYCスターリング・スタジオのテッド・ジャンセンによるデジタル・リマスタリング、新インタビユー掲載。
※その他のYMO関連商品は→こちら。
※YMO第四のメンバー松武秀樹インタビューは→こちら。
※初回盤(紙ジャケット仕様)は、なくなり次第、通常盤(ジュエルケース)に変更となります
メディア掲載レビューほか
POP MUSICのデニス・ポーヴェル、XTCのアンディ・パートリッジ、大村憲司が参加し、ダブやミュージック・コラージュの手法を大胆に取り入れた、高度に実験的で過激な問題作。80年作品。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)
登録情報
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 製品サイズ : 13.97 x 1.27 x 12.7 cm; 226.8 g
- メーカー : Sony Music Direct
- EAN : 4571191050915
- 時間 : 37 分
- レーベル : Sony Music Direct
- ASIN : B000793EAW
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 100,883位ミュージック (ミュージックの売れ筋ランキングを見る)
- - 34,850位J-POP (ミュージック)
- カスタマーレビュー:
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