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2000年3月から2003年3月にかけて録音された本作『Universal Syncopations』は、あふれるような叙情性と魅力的なリズムに彩られており、ECMレーベルから生まれた「現代の古典」としての特徴をすべて兼ね備えている。チェコの誇る偉大なベーシストにして、ウェザー・リポートの創設者のひとりであるミロスラフ・ヴィトウスは、全編にわたってピツィカート奏法を繰り広げ、すべてのトラックで作曲(もしくは共同作曲)を担当している。
また、過去数十年間で最高のミュージシャンであり、現代のジャズ・シーンの最大の功労者であるヤン・ガルバレク、チック・コリア、ジョン・マクラフリン、ジャック・ディジョネットが参加。ヴィトウスとガルバレクは、以前にも2回ほどECMの録音で共演している。1991年の『Star』と1993年の『Atmos』だ。2人のメロディックでダイナミックな交感は本作の要といえるだろう。両者とも力強く、ジャズそのものという演奏を披露しており、長年レコーディングで証明してきた実力をここでも発揮している。そして、マクラフリンが矢継ぎ早にフレーズを繰り出し、それを受けてディジョネットが刺激的でマルチなプレイを聴かせる。この2組がリズムのぶつけ合いを演じる中、全体に統一感を与えているのがコリアだ。
アルバムのオープニングとクロージングを飾るのは、ヴィトウス/ガルバレク/ディジョネットのトリオによる追憶の念に満ちたチューン。その間に挟まれた「Medium」ではヴィトウスとディジョネットがデュエットで演奏する。ウェイン・バージェロン、ヴァレリー・ポノマレフ、アイザック・スミスのブラス隊をフィーチャーした3曲(うち1曲は楽想がどんどん移り変わっていく10分間の大曲「Univoyage」)では、ハーモニーとリズムを時おり中断させる手法が見事な効果を上げている。このようにアレンジは多彩を極め、ほかにも心地よいリラックス感に包まれた「Tramp Blues」、ヴィトウス/ガルバレク/ディジョネットがよりアブストラクトで瞑想的な演奏を展開する「Beethoven」、ヴィトウス/ガルバレク/コリア/ディジョネットが交互にからみ合う「Sun Flower」と「Miro Bop」の2曲がある。
これほどヴァラエティ豊かな内容を持ちながら、本作にはバラついた印象がまったくない。30年前、ヴィトウスによる画期的な1969年のアルバム『Infinite Search』(マクラフリン、ディジョネットをフィーチャー)がアトランティック・レーベルから再発売された際に、ライナーノーツを執筆したMichael Cuscunaは次のように述べていた――「ベースの名手であるミロスラフは、みずからの弾くベースを中心に楽曲を組み立て、展開させる。ただし、彼はベースを全体の焦点と考え、品格のある扱い方をするので、決して見苦しい自己主張に陥ることがない」。
この言葉はそっくり『Universal Syncopations』にも当てはまる。これは大人の味を持つ、聴きごたえ満点の音楽が詰まったアルバムだ。最初から最後まで、個性的な作曲センスと巧妙なインプロヴィゼーションが絶妙なバランスを保っている。(Michael Tucker, Amazon.co.uk)