ザンデルリンクのベートーヴェンは以前3・9番などの国内盤が分売されていましたが、音離れが悪くペチャとしたような音でブランドの確立に失敗していました。今回の輸入盤は比べものにならぬ程鮮明で分離の良い音質となっています。演奏は贅肉がなく引き締った古典的な演奏です。特徴はそのテンポの遅さでしょう。引き締っているため、聴感上はそうは聴こえないのですが。まず2番を除く1番から7番はフルトヴングラーのウイーンフィルのスタジオ録音、8番は1954年のライブ録音、9番は1951年、52年、53年なライブ録音と演奏時間を比べてみました。すると1番、3番、4番、7番、8番はザンデルリンクの方が演奏時間が遅く特に7番は差が際立っている。5番、6番は僅かながらフルトヴングラーの方が遅い。3種類ある9番はフルトヴングラーの方がかなり遅い。やはりフルヴンンの9番は独特なうねりなせいか?このテンポの遅さを「東ドイツの伝統」などとするのは単純すぎる話だろう。いつからザンデルリンクのベートーヴンは形成されたのか?ムラヴインスキーへのアンチ・テーゼが?現状では7番の知的で高貴な演奏が曲の印象すら変えるものとして夢中に聴いている。