Ken Burns。
アメリカを代表するドキュメンタリー映像作家。
この"The Civil War"(アメリカ南北戦争)はもちろん、"Jazz"や"Baseball"などの長編TVドキュメンタリー番組をつくり、本国では今でも再放送が続き、不動の地位を築いています。
日本でも、ときおりNHKが放送してくれたことがありました。
某映像編集ソフトで"Ken Burn's effect"(ケン・バーンズ効果)として取り入れられている、古い写真をズームやパン、クローズアップで撮影してナレーションを加えることで、あたかも被写体本人が語っている動画のように見せる手法でも有名です。
これは、DVDの"The Civil War"をご覧になれば、あぁ!これネ!という「これ」です。
(今は日本語版のDVDが出ていないようで残念です)
その、アメリカ南北戦争を描いたドキュメンタリーでは、大統領から将軍、一兵士や市民まで、当時のありとあらゆるひとたちが残した手紙や手記がメインとして、非常に多く使われています。
このサントラCDにも、一部の手紙や手記の朗読が収められています。
そんな当時のアメリカの、ありとあらゆる音楽が再現・収録されています。
軍歌、行進曲、民謡、聖歌、黒人霊歌、当時の歌謡曲などなど多彩で、難しく言えば、当時のアメリカ音楽図鑑にあたるのでしょう。
曲の収集・検証だけでも、かなりのエネルギーを費やしていることが窺えます。
再現された歌や曲は、見事な演奏で、当時の雰囲気や、それらを唄ったり、奏でたりしたであろう人々の心情が伝わってくるようです。
一曲一曲は短いのですが、それぞれ胸に迫るものがあり、物足りなさは感じません。
白眉は"Ashokan Farewell"。
フィドルの名曲です。
泣かせます。
試聴で泣いてください。
そして、続きは、ポチっと注文して、CDが届いてから、たっぷり泣きましょう。
人類史上、初の近代的総力戦とも言われ、アメリカ(と民主主義?)の歴史に大きく刻まれた殺戮と破壊は、こんな音楽をも産みだしていたのです。
規模も威力も格段に増した現代の戦争は、どんな歌を唄わせ、どんなメロディを演奏させているのでしょうか?
ジャケットやブックレットで使われている写真も当時のもので、純粋に音楽CDとしても上質な一枚です。