【1月23日 AFP】現生人類の祖先にあたる320万年前の猿人の手が、道具の発明はできなくとも道具をつかんで使用する能力があったことを示唆する構造を持っていたとする研究論文が22日、米科学誌サイエンス(Science)で発表された。

 道具の発明を示す最古の証拠は260万年前のもの。今から200万~300万年前に現在の南アフリカにあたる地域に生息していたアウストラロピテクス・アフリカヌス(Australopithecus africanus、アフリカヌス猿人)は、これまでの説では道具を作っていなかったとされていた。だが、英ケント大学(University of Kent)などの研究チームが発表した論文によると、アフリカヌス猿人の手は、これとは異なる見方を示唆しているという。

 アフリカヌス猿人は、類人猿に似た顔と長い腕を持つ一方で、脳は大きく、直立二足歩行をしていた。木から下りて生活し、手の器用さや高い運動能力を獲得したと考えられている。

 今回の研究結果は、骨内部にある骨梁(こつりょう)と呼ばれる海綿状構造の新たな分析に基づくものだ。骨梁を調べることで、生存時に骨がどのように使われていたかを明らかにすることができる。例えば、骨梁は人間とチンパンジーとでは様子が大きく異なる。親指とその他の指を使って強くものをつかめる人間の手の動きは、チンパンジーの手では再現できない。

 だがネアンデルタール人の化石はこの点において、現生人類の手により密接に類似している。ネアンデルタール人は、道具を使ったり洞窟壁画を描いたりするための器用さを持っていた。

 アウストラロピテクスもまた「親指の骨と手のひらの骨(中手骨)に、親指と他の指との力強い対立運動を行っていたことを示す人間に似た型の骨梁」を有しており、この対立運動は「一般的に道具使用時に用いられる」と、ケント大は声明で説明している。

「これらの研究結果は、過去に発表された猿人の石器使用を示す考古学的証拠を裏付けるとともに、人類の初期の祖先が、人間に似た手の形態を、これまで考えられていたよりはるかに以前から、より頻繁に用いていたことを示す骨格証拠を提供するものだ」

 今回の研究には、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)、ドイツ・マックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)、オーストリア・ウィーン工科大学(Vienna University of Technology)の研究者らも参加した。(c)AFP