【10月29日 AFP】26日の議会選挙で親欧米派が圧勝したウクライナで、分離独立を掲げる東部の親ロシア派が来月2日に独自に予定している選挙について、ロシアのセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相が容認する考えを示した。これにより、ロシアがウクライナとの対立を再び深めた形だ。

 ラブロフ露外相は28日付の露日刊紙イズベスチヤ(Izvestia)に対し、ウクライナ東部の選挙は「合意された通りに実施されるべき」であり、ロシアは「結果を承認する」との見解を示した。ウクライナの分離独立派に対しロシアが表明してきた支持の中で、最もあからさまな動きの一つといえる。

■危ぶまれる国内の和平プロセス

 欧米諸国の支援を受けるウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領の報道官は、東部の親露派による独自選挙は、ウクライナ政府と親露派武装勢力の「和平プロセス全体を危機に陥れる」と批判している。親欧米派が大勝を収めた26日の議会選の結果を受けて、国内では停戦違反が急増している。

 親露派が掌握するウクライナ東部ドネツク(Donetsk)では28日、迫撃砲の爆音や小火器による銃撃戦の音が鳴り響いた。また、2週間近くにわたって包囲されていたルガンスク(Lugansk)近くのSmile村では、ウクライナ軍の兵士2人が死亡。軍は検問所の放棄を余儀なくされた。

■ポロシェンコ大統領は自治権付与の方向

 分離独立派との和平に向け、ポロシェンコ大統領が掲げている主要政策の一つが、東部地域に、独立を認めるのではなく自治権を付与することだ。しかし、26日のウクライナ議会選をボイコットした独立派が独自に予定する選挙が近づく中、和平実現はかつてなく困難さを増しているようにみえる。

 ポロシェンコ政権はこれらの問題に加え、汚職や巨額の債務という問題も抱えている。さらに、ロシアの天然ガス供給という、ほぼ永遠の危機ともいえる問題の解決にもあたらなくてはならない。欧州連合(EU)がロシアに対する制裁の維持で合意している中、29日にはEUが仲介するガス供給をめぐる協議にウクライナ、ロシア両国の代表が出席する予定だが、協議の難航が予想される。(c)AFP/Anna MALPAS with Sebastian SMITH in Kiev