武装勢力の攻勢でイラク石油開発に暗雲、世界市場にも影響
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【6月26日 AFP】イスラム教スンニ(Sunni)派の武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant、ISIL)」が攻勢を強めるイラクでは、南部の油田で計画されている事業の実現可能性が日ごとに薄れつつある。
イラクは石油輸出国機構(Organization of the Petroleum Exporting Countries、OPEC)第2位の生産量を誇り、石油確認埋蔵量では世界全体の11%を保有する。英エネルギー大手BPや米エクソンモービル(ExxonMobil)、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)などの国際石油資本(メジャー)に加え、中国海洋石油(China National Offshore Oil Corporation、CNOOC)、中国石油天然ガス集団(China National Petroleum Corporation、CNPC)が2008年以降、イラクの油田開発に大規模な投資を行ってきた。
国際エネルギー機関(International Energy Agency、IEA)のアントワーヌ・アルフ(Antoine Halff)氏は、AFPに「今後の(石油)生産を考えたとき、北米を除けばイラクが間違いなく最も重要な国だ」と話す。
イラク北部にある同国最大の製油所は武装勢力の攻撃を受けて操業停止に追い込まれたが、輸出の9割を占める南部の主要油田地帯はまだ無事だ。
イラク情勢の緊迫化を背景に、国際原油価格は1バレル当たり約109ドル(約1万1000円)から同114ドル(約1万2000円)超まで上昇した。英シンクタンクのキャピタル・エコノミクス(Capital Economics)は「イラクの供給の大部分が停止し、ブレント原油価格が140ドル(約1万4000円)を突破して過去最高値を記録する可能性もある」と予想する。
長期的には、情勢混乱によって廉価なイラク産石油が入手できなくなる恐れもある。
■世界の石油市場のカギ握るイラク
イラクは近年増産を続けており、日量は330万バレルに達している。IEAの予測では、2020年までに日量600万バレルに拡大し、OPEC全体の増産量の6割を占める見通しだ。
一方、世界の石油需要は2019年に日量1億バレルを超えると予想され、しかも発展途上国の需要が先進国を上回ると見込まれている。シェル・イラクのハンス・ネイカンプ(Hans Nijkamp)副社長は「上流部門(原油の探鉱・生産)では、16年から始まる予定の投資計画が数多くある」と述べた。
シーア派が多い南部の油田地帯をISILが掌握する可能性は低いが、首都バグダッド(Baghdad)の政府当局や石油会社の本社が攻撃される恐れはある。ISILが西部アンバル(Anbar)州で行ったような破壊工作やテロ攻撃によって混乱を拡大する可能性もある。
リビアやシリアといった石油生産国の輸出が停滞している点からみても、イラクの輸出増は極めて重要だ。とりわけ、資源需要が旺盛な中国にとってイラクの混乱は大きな問題だ。中国はイラクの石油産業における最大の投資国で、13年には米国を抜いて世界最大の石油輸入国となった。
IEAのアルフ氏は、中国は今後、石油の調達先をサウジアラビアやイラン、ロシアに替えるだろうとの見方を示した。(c)AFP/Caroline HENSHAW