【8月2日 AFP】日本郵政が運営する日本の郵便サービスは、遅配や配達物の紛失が当たり前ともなっている一部の国々での郵便サービスとは対照的で、国の誇りですらある──。郵便拠点のネットワークは小さな田舎町にまで広がり、遠隔地に暮らす人々にとって重要なライフラインとなっている。

 日本郵政は事実上世界最大の銀行で、保険や貯蓄サービス事業も展開する。郵便局は日本の高齢者たちが年金を引き出す窓口でもある。郵便物は祝日を含め週7日、玄関前まで届けられ、宅配便でもヤマト運輸や佐川急便などの大手に引けを取らない。

 国内2万4000の郵便局では従業員20万9000人(2012年7月1日現在)が働いており、その配達能力は圧倒的だ。その配達能力によりインターネット小売大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)といったネット販売業者の一部配送も、大都市であれば注文当日に荷物を届けることが可能となっている。地方の特産品なども注文から数時間後には保冷配送で都市部の家庭に届けられる。

 日本の郵政事業は2007年、小泉純一郎(Junichiro Koizumi)政権により郵便、貯金、保険、窓口の4事業に分割され(現在は郵便と窓口事業が合併され3事業)、このうち銀行および保険両部門の株式の10年以内の売却が計画された。だが、郵便局の規模と影響力、そして日本文化への定着から、その後の政権によってブレーキがかかった。その後、完全民営化は先に進んでおらず、07年以降も郵政関連株は政府が100%所有している

 株式売却による完全民営化が実現した際の恩恵は膨大だ。時価総額数十億ドルの株式は素早く買われ、膨れ上がった公的債務と税収低下に見舞われている国庫を潤すとみられている。

 完全民営化への停滞は、米国と欧州連合(EU)の通称当局者をいらだたせてきた。新規参入をねらう海外のライバルは、日本郵政の組織サイズは対抗できないほどの経済規模だとしている。

 労働組合などの既得権益が障害となっている面もあるが、日本人の生活に定着したサービスを提供していることへの愛着も、完全民営化への大きな「壁」となっているのだろう。

 日本の人々はこうも考えている──いったい誰が、数億枚もの年賀状を丁寧に仕分けして、元旦に配送してくれるというのだろうか、と。(c)AFP