【7月25日 AFP】米国で臓器ドナーの男性と、この男性から提供された腎臓の移植手術を受けた患者が死亡した原因が、共にアライグマを媒介して感染した狂犬病であることが23日、米研究チームの調査報告で明らかになった。

 このまれなケースに関する報告書は、同日に発表された今月24日号の米医学誌「米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)」に掲載されたもの。同誌は、今年3月に米保健当局が発表した2人の患者の死亡に関する最終的な調査結果を報告している。

 米空軍の20代整備士とのみ伝えられているドナー男性は2011年、釣り旅行に出かけた際に食中毒にかかり、それが原因で死亡したとされた。医師らは当時、狂犬病への感染を認識していなかった。

 ドナーからは腎臓のほか、心臓と肝臓などが計4人に移植され、左腎の移植手術を受けた陸軍の退役軍人が手術から1年6か月後にあたる2013年2月に死亡した。他の3人は狂犬病を発症しておらず、現在も生存している。3人はドナーが狂犬病に感染していたことを知らされると共に、狂犬病の予防接種を受けた。

 研究者がドナーの記録をさかのぼって調査したところ、「過去6か月以内に狂犬病の可能性がある動物と接触したか」という質問に対し、男性は「ノー」と答えていた。だが、その後のドナーの家族に対する面接調査で、入院の1年6か月前と7か月前の少なくとも2回、男性がアライグマにかまれていたことが判明した。さらに報告書によると、「死亡前のドナーの症状は、狂犬病の症状と一致していた」という。

 研究者らによると、このドナーのケースは、ある種の狂犬病がヒトに感染した後、発症するまでに要する期間については、ほとんど知られていないことや、臓器の拒絶反応を防ぐための免疫療法が疾患の進行を遅らせる一因になっている可能性があることを示している。

 また研究者らは、「われわれの知る限り、これはワクチン未接種の患者が狂犬病に感染したドナーから固形臓器移植を受けた場合、すべてが狂犬病を発症するわけではないことが確認された初の報告例だ」としている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN