【6月3日 AFP】フランスの高級産業を代表するコルベール委員会(Comite Colbert)は5月下旬、“パリは治安の悪い街”という悪評が観光客を遠ざけ、高級ブランドの痛手となっていると警告した。

 世界で最も多くの人が訪れるパリでは最近、観光客を狙った強盗や窃盗、暴行などの事件が起こり、そのイメージに傷がついている。これを受け、「シャネル(Chanel)」や「ディオール(Dior)」をはじめとする75もの仏ブランドが加盟し、国内外でプロモーションを行なうコルベール委員会は、裕福な観光客を遠ざけないよう治安対策に力を入れるよう警察に要請した。

 同委員会のエリザベス・ポンソル・デ・ポルト(Elisabeth Ponsolle des Portes)氏は「パリは治安が悪いといわれている。海外からの観光客に頼るこの街にとって、この治安の悪さは雇用にもダメージを与える」と指摘し、「加盟するブランドの顧客などのネットワークからフィードバックを得ているが、彼らはパリがまったくもって安全でないという評価を下している。状況はとても深刻だ」と語った。

 フランス政府は外国人観光客の安全を保障すると約束しているが、ポンソル・デ・ポルト氏は「適切な政策」が必要だと言う。「アジアからの観光客が特に増えているなかで、パリが危険だからといってミラノやロンドンに人が流れる事態は避けたい」

 フランスの高級産業は、その収益の大部分を観光客から得ている。中でも、旅行先で大金を使う中流階級が増加している中国など新興国の観光客がその多くを担っている。中国大使館は先日、大量の現金を持ち歩くことで知られる中国人が路上強盗などの被害に遭うケースが増えていると報告していている。

 パリのイメージはさらに、19年ぶりにフランスリーグで優勝したパリ・サンジェルマンFC(Paris Saint-GermainPSG)の祝賀パレード中に起きた暴動によって追い打ちを受けた。暴動中には、悪質なPSGファンがエッフェル塔の近くで発煙筒を投げてバーやレストランに危害を加え、観光客の何人かを攻撃した。また、ルーブル美術館(Louvre museum)では4月、従業員が凶悪化するスリへの抗議としてストライキを起こし、パリの観光名所が一日閉館という事態に陥った。(c)AFP