「絶好調!」の口グセで知られ、1980年代の読売ジャイアンツを牽引した名物プレイヤー、中畑清さん。2012年からは横浜DeNAベイスターズの監督として、プロ野球界にさまざまな話題を提供しています。ジャイアンツ時代から親交のある糸井重里と、横浜スタジアムで話しました。DeNAベイスターズのこと、監督という役割のこと、プロ野球の未来について、恩師である藤田元司さんについて。2013年のシーズンオフの、よく晴れた日に。
もくじ
第1回おもしろいチームをつくらなきゃ。 第6回暴れて、応援団長になった。
第2回注目されっぱなしの監督。 第7回藤田監督の魅力。
第3回5位は悔しい。 第8回野球と人づくり。
第4回やってみなきゃわかんない。 第9回つぎの野球、おもしろい野球。
第5回監督をやりたくなった日。 第10回元気に、前を向いて、一生懸命。
第1回おもしろいチームをつくらなきゃ。
糸井 どうもどうも。
中畑 お久しぶりです!
糸井 いやー、ほんとに久しぶりですね。
中畑 ほんとですねぇ。
まぁ、糸井さんはずっと
ジャイアンツファンだから
なかなか会いに来づらいだろうけど。
糸井 いやいや、そんな(笑)。
中畑 でも、まぁ、
自分がどこのファンかっていうのは
どうしようもないことだから。
糸井 うん。
自分でも、こんなにファンなのは
どうなのかなとよく思うけど、
しょうがないですね。
中畑 しょうがないですよ。
だから、ここ(横浜DeNAベイスターズ)は
ここでよさがあるっていうのが、
少しずつわかってもらえるようになったら、
おもしろいと思います。
糸井 はい。
おもしろいチームになりましたよね、
ベイスターズは。
中畑 おもしろいでしょう?
糸井 うん、おもしろい。
なんというか、ほかのチームに
影響を与えるようなおもしろさがありますよね。
中畑 もう、いい意味で、そうなってくれれば。
まだまだ勝負につながってないところはあるけど、
そういう存在感というか、
個性は出てきたと思うんだよね。
でも、裏返せば、そういうものさえ、
いままではなかったんだから。
糸井 ああ、そうなんですかね。
いや、伝統あるチームなんですけどね。
中畑 でも、まぁ、ここ10年ぐらいは、
選手もフロントの人間たちも
みんなちょっとかわいそうだったな、
っていうのは現実問題として
あるんじゃないかな。
糸井 うーん。
中畑 やっぱり、親会社が変わるっていうのは
大きなことだと思うんですよ。
(※2002年、親会社がマルハからTBSへ。
 その後、売却の話が進行するも合意に至らず、
 2011年12月、DeNAが親会社に)

監督が変わることなんかよりよっぽど大きい。
会社そのものが変わっちゃうんだから。
そういう不安は半端じゃないと思う、ぼくは。
糸井 そうですよね。
中畑 そういう中で、集中してやれって言ったってね。
ぼくがその立場だったら
やっぱり不安でしょうがないですよ。
勝負どころの話じゃないね。
だから、もともと集中できる状況に
なかったチームだと思うんですよ。
選手はもちろん、首脳陣も、フロントもね。
そこからスタートしてるんですから、
やっぱり、これから新しく
つくっていくチームなんです。
糸井 うん、うん。
中畑 それを理解するとね、逆に、
「ああ、いまはまだムリかなぁ」って
妥協しなきゃいけない部分もわかるようになる。
それはもう、しょうがない。
でも、いままでの野球界のやり方で、
ここにこうお金をつかえば勝てるっていう野球は
もういいんじゃないかなとぼくは思う。
糸井 なるほど。
中畑 もちろん、勝ちたいですよ。
勝ちたいということは常に頭にあるんだけども、
その勝つ方法論、勝つことへの意識っていうのは、
これまでの野球界の考え方とは
やっぱり違うものを追いかけていきたい。
このチームならではのオリジナリティを
つくっていきたいですね。
糸井 だから、いまのベイスターズには、
どういう性格のチームが、
どういうふうに勝つかっていう、
ふたつの種類のたのしみがありますよね。
中畑 そうですね、ええ。
糸井 中畑さんが監督になってから2年経って、
どういう性格のチームなのかっていうところは
だいぶはっきりしてきたような気がします。
中畑 そうですね。
できれば、お金はあんまりかけないで、
チームの土台には生え抜きの選手を持ちつつ、
いま勝つための補強はしっかりする。
でも、土台にある自分たちの
オリジナリティは絶対大事にする。
そういうふうにあるべきだと
ぼくはもともと思っているんだけど。
糸井 それは、DeNAの監督になる前から
中畑さんが持ってた考え方ですよね。
中畑 そうです、そうです。
それはだから、曲げる必要ないから、
だから、ぼくやれてるんですよ。
それ、やらしてくれるから。
糸井 じゃあ、そういう意味では、
ここで監督ができてよかったという思いが。
中畑 あります。ここでよかった。
自分のオリジナリティというか、
自分の原点というのはこうなんだということを、
受け入れてもらって
スタートできるわけだから。
つまり、球団は、こういう私を選んで、
責任を与えたわけですよね。
だから、俺がダメだったら、
その責任は選んだ側にもあるんだよ、
っていうところまで言えるわけです。
糸井 なんか、高校野球の、
新しい学校の監督になったみたいな。
中畑 ああー、似てるかもな。
糸井 じゃあ、やっぱり、中畑さんならではの
野球チームをつくらないといけないですね。
中畑 そうそうそう。
いままでにない、
おもしろいチームをつくらなきゃね。
だから、ぼく、評価される監督になりたいとか、
そういうの、ぜんぜんないの。
糸井 はぁはぁはぁ。
中畑 お客さんが満足してくれる、
お客さんがよろこんでくれる野球をしたい。
で、順位はあとでついてくるもんだし。
‥‥っていいながら、
けっこう順位を宣言して、
失敗してるんだけどね(笑)。
でも、そういうふうに、
多少無理にでも目的を持たさなきゃ
いけないチームでもあるわけ。
糸井 観てるほうとしては、それも含めて
おもしろいですけどね。
中畑 いやいや、もう、けっこうな
演出家になってきてるんですよ、ぼく。
糸井 うん、なってきてると思う(笑)。
(つづきます)
2013-12-16-MON
2013年12月17日(火)
3,990円(税込み)
横浜DeNAベイスターズオフィシャルショップ
横浜DeNAベイスターズ公式オンラインショップ

横浜DeNAベイスターズが戦った2013年のシーズンを
詳細に記録した球団公式ドキュメンタリー。
ベンチ裏やロッカールームの様子までを記録。
撮影専門の職員がシーズンを通してチームに帯同し、
すべての試合で撮影し続けました。
その時間は、およそ12,000分。
中畑監督が開幕戦を控えた朝に
選手たちに語りかけるミーティングルーム、
ラミレスや中村が
2,000本安打の重圧と戦うロッカールーム、
主将の石川に2軍行きを宣告する監督室、
引退試合で2本のHRを放ち涙する小池正晃など、
普段は観る事のできない、生々しいプロ野球チームの
真の姿が映し出されています。



見ていただけばわかるけど、
いっさいの演出なし、もちろん演技もなし。
すべて、ありのまま、「真剣白羽撮り」だよ。
このDVDは『ダグアウトの向こう』というタイトルだけど、
俺はこれが「向こう」じゃなくて、
もっと「表」になってほしい。
これまでのプロ野球は、あまりにも秘密が多いというか、
ファンとの距離が遠かった。
でも、もうそういう時代ではない。
もちろん、手が届かない憧れのスターを
つくることも大切なのかもしれないけど、
もっともっと魅力を伝えていくべきだと思うね。
プロ野球選手だって、こんなに緊張して、
こんなに素直に喜んで、こんなに怒って、
こんなに泣きながら戦っているというのを知って欲しい。
そして、これは、今のプロ野球界では、
この横浜DeNAベイスターズでしかできない。
だから、俺はロッカールームにも、監督室にも、
自宅にだってカメラを入れたよ。