こんにちは。ライターのさえりです。
皆さんは、昨今増えている「キラキラネーム」をどう思いますか?
「キラキラネーム」とは、読めないような漢字を当てたり、外国人の名前を漢字に当てはめたりした奇抜な名前のこと。光宙(ぴかちゅう)、泡姫(ありえる)、男(あだむ)など、珍しい読み方の名前は、ネットでもたびたび話題になりますよね。
90年代に、とある雑誌で掲載された「キラキラネーム」の特集がブームのきっかけになったと言われています。ネットの意見はさまざまですが、「子どもがかわいそう」「親の常識が疑われ、就活で不利な思いをする」といった批判的な意見もよく目にします。なかには「キラキラネームが嫌で、改名してきた」という実体験をお持ちの方もいるようです。
引用元:無料 赤ちゃん名づけ
http://namae-yurai.net/rareNameKirakira.htm?rankingId=5
実際に「キラキラネーム」を付けられた子どもたちは、どのように感じているのでしょうか。「キラキラネーム」の方を探して、お話を伺ってきました。
キラキラネームの方に会ってきた
今回お話を聞かせてくれたのは、「宇宙」と書いて「こすも」と読む21歳の男性。
福島県で育ち、現在は福島の新聞社で労務管理や事務などの仕事をしているそうです。
「早速ですが、いろいろとお話を聞かせてください。『宇宙』と書いて『こすも』と読むのは珍しいですよね」
「そうですね。同じ名前の人に会ったことは一度もないです」
「最初に確認させていただきたいのですが、『宇宙(こすも)』はキラキラネームなのでしょうか?」
「まあ、世間的にはそうだと思います」
「『宇宙』と書いて『うちゅう』とか『そら』ならいそうですけど、『こすも』は珍しいですよね」
「そうなんですよ。一度で読んでもらえることはほとんどなくて、昔はそれがめんどくさかったですね」
「毎回説明しなければならなかったり、読んでもらえなかったりするのは、ストレスを感じそうですね」
「小学校くらいのときは本当に嫌でした。僕は福島出身なんですけど、学校はそんなに大きくなかったので、すぐ名前のことが話題になるし......。思春期だったんで結構気にしていました」
「そうだったんですね......。ちなみにご兄弟はいらっしゃいますか?」
「一歳年上の兄がいます」
「お兄さんも変わったお名前なんですか?」
「兄は『太郎』です」
「太郎!?」
「太郎と宇宙(こすも)なんですよ。ギャップが激しいですよね」
「でも『太郎』も、もはや珍しい名前のような気も......」
「ですよね......。わかりやすいけど珍しいので付けたらしいです。でも、歳もほとんど変わらないから『宇宙(こすも)のおにいちゃん、太郎なんだろ』みたいにからかわれることもありましたね」
「たしかにそれは言われそう。子どもは悪気なくからかったりもするし」
「ですね。僕が小学校くらいのときに『ウルトラマンコスモス』っていうキャラクターがテレビに出てきたんです。ウルトラマンって『タロウ』もいるじゃないですか。だから『ウルトラ兄弟』ってからかわれたこともありましたね。あだ名も『ウルトラマン』って付けられたこともありましたし」
「たしかに! ウルトラマン......」
「そう。笑っていたけど、やっぱり嫌に思うときもありましたね。母に『なんで宇宙(こすも)なんて名前にしたんだよ』って思ったこともあって」
「今でも自分の名前って好きじゃなかったりしますか......?」
「いえ。今は、すごく気に入ってます」
「何か転機があったんでしょうか?」
「中学校のときから、急に自分の名前を好きになったんですよ」
「何があったんですか?」
「えーと......、モテるようになったんです(笑)」
「ちょっと詳しく聞かせてもらっていいですか?」
「いわゆるモテ期がきて。そのときに役立ったのがこの名前だったんですよね。すぐに人に覚えてもらえるし、自己紹介で『宇宙(こすも)です。兄は太郎です』っていうとそれだけで笑いが取れる。おいしいなーって思うようになっちゃったんです」
「なるほど......! 目立ててうれしいという気持ちにシフトしたんですね」
「そうですね。やっぱり、すぐに覚えてもらえたり、名乗ると『ああ! 君が宇宙(こすも)くんか!』って言われたりして、他校の子にもすぐ覚えてもらえるし。この名前いいなって思うようになりました」
「自分の名前のポジティブな面に気付けたんですね」
「まあその分、名前を覚えられているので悪いこともできないんですけどね......。いや、悪いことをするつもりもないんですけど......」
「じゃあ、名前を好きになったのは『モテ期』のおかげですか?」
「きっかけは『モテ期』だったと思います。やっぱり周りが認めてくれたことって、自分にとってプラスになるので」
「そうなんですね」
「それ以降も『宇宙(こすも)です』と名乗ったときに、嫌な顔をされたことがなかったので。もちろん笑いが起きたりはしたんですけど、嫌には感じなかったです。感じ方の問題かもしれないですけど......」
「たしかに周りの人たちの反応は重要ですよね。思春期くらいのときに『変な名前』とか言われたら、結構気にしてしまいそう」
「そうですね。そのぐらいの時期は敏感だと思うんですよ。でも、その時期を経て、だんだん自分の名前を好きになってくる。それには僕自身の性格や、周りの人のあたたかい反応が不可欠だったと思います」
母親に名前への想いを聞いてみた
「名前には何かしらの想いが込められていると思うんですけど、お母さんはどんな想いで付けたのでしょうか?」
「何度か僕も聞いてるんですけど、せっかくの機会ですし、母に電話して直接話しますか?」
ーー「もしもし?」
「あ、もしもし......。今、名前に関する取材を受けていて、詳しい話をお母さんに聞きたいって言うんだけどいいかな?」
ーー「はーい、もちろん」
「はじめまして。ライターのさえりです」
ーー「はじめまして! 宇宙(こすも)の母です」
「名前についていろいろと聞かせていただければと思います! よろしくお願いします」
ーー「はい、よろしくお願いします」
「早速ですが、宇宙(こすも)さんの名前の由来はなんですか?」
ーー「生まれた1994年の7月に、ちょうど宇宙飛行士の向井千秋さんが宇宙に行ったんです。当時、すごく話題になっていて。そのときに『宇宙』って名前が候補に上がって。そこからいろいろ調べて、いいなと思いました」
「なるほど......! 『宇宙』と書いて『こすも』と読ませたのには、理由があるんですか?」
ーー「宇宙を意味する英語『Cosmos(コスモス)』は、調和とか秩序って意味もあるんですよ。それで、心が広くて、それでいてみんなに調和をもたらすような、そういう子に育ってほしいと思ったんです」
「そうだったんですね。宇宙(こすも)さんは、今では名前を気に入っているそうですが......、小学校のころ、学校で名前をいじられていたことは知っていましたか?」
ーー「ええ、知っていました。子どもも気にしていたので、一度担任の先生に相談したことがあるんです。そうしたら『素晴らしい名前よ』と、適切なアドバイスをくれて。そのおかげでわたしも救われました」
「たしかに、子どものころはなんでも『いじり』の対象になりますもんね。そんなときに担任の先生が味方でいてくれるのは有難いですね」
ーー「そうですね」
「世の中では変わった名前のことを『キラキラネーム』と呼ぶ場合があるんですが、宇宙(こすも)さんもそれに当てはまると思いますか?」
ーー「うーん、どうなんでしょう。特に『奇抜で個性的な名前にしよう!』と意気込んで付けたわけではないので、そのあたりは気にしたことはありません。彼もわたしも『宇宙(こすも)』という名前を気に入っているので、あまり世の中の流れは関係ないというか......」
「そうだったんですね」
ーー「あとは、やっぱり想いを込めて付けた名前なので、堂々と名乗ってくれるようになったのは本当にうれしいですね。名前のとおり、心の広い大人になってくれたらと思っています」
「なるほど......! ありがとうございました!」
ーー「こちらこそ、ありがとうございました!」
「お母さん、『心の広い大人になってほしい』ですって」
「......がんばります!」
「ちなみに、ほかの『キラキラネーム』についてはどう思いますか?」
「『キラキラネーム』で改名をする人がいると聞いて、ちょっと驚いています。たしかに行きすぎた名前もあるのかもしれないですが......」
「でも少なくとも僕は自分の名前が気に入っていますし、自分の名前に見合うように生きたいとも思いますね。くたびれてダルそうにしながら『宇宙(こすも)です』って名乗るのは、ちょっと恥ずかしいかもしれないので......」
「おじいさんになったときに『コスモおじいちゃん!』って呼ばれるのはどうですか?」
「まあ、ちょっと自分でも『それは無いな?(笑)』って思ったりはしますけど、でもそんなに気にしてないです」
「そうなんですね」
「実際、社会人になったからといってこの名前を恥ずかしいと思うことは今のところないんですよ。名刺を渡すだけで『へえ、めずらしいね!』なんて話題のとっかかりになって、便利なくらいです」
「正直、この名前、いいことばっかりですよ」
「なるほど......。ありがとうございました!」
さいごに
お話を聞いていると、宇宙(こすも)さんが本当に自分の名前を気に入っていることがよく伝わってきました。
「キラキラネーム」に限らず、自分の名前や生まれ持ったものを好きになれる・なれないは、性格はもちろん、育ってきた環境による部分が大きいのかもしれません。
周囲の人たちの受け止め方や反応ひとつで、持っていたマイナスな感情がポジティブなものに変わることは多分にあります。周りの人がどのように接してくれたかというのは、それほど重要なものだと思うのです。
そして忘れがちなのが、私たち自身もほかの誰かを「受け止める側」であるということ。
「キラキラネーム」の方が増えてきている時代だからこそ、受け止める側にも考え方の変化が必要なのではないでしょうか。
「周りに恵まれた」と話す宇宙(こすも)さんを見て、それを実感することとなりました。
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