(*9/14追記:本記事を読む時は合わせてコメント欄を読んでいただくことを強く推奨します。)
ども宇佐美です。
仕事の合間に書いているので短めの記事です。
コロラド先生なる人が<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」なのか>という記事を書いていて、これがデマだ、ということを指摘したらいわゆる反原発の人に噛み付かれて仕方ないので簡単に反証しておく。
コロラド先生なる人は簡単に言えば「泊原発が動いていたら停電はなかった、ということはありえない」と言っているのだから、これを反証するのは簡単である。泊原発が稼働していて、苫東厚真火力群が脱落しても全道停電しない発電所の組み合わせパターンを示せばいい。なお泊原発は短時間であれば所内単独運転できるので周波数が乱れただけで即座に落ちるということはないことをあらかじめ指摘しておく。
反証にあたっては今年の電力需給の正確なデータは公開されていないので、2017年の9/6のデータ(上表)を参照する。2018/9/6の停電が起きた時の電力需要は286.0万kwhだったようだが、これは2017/9/6の2:00の発電量とほぼ同じだ(*揚水向けに10.3万kw回していることに注意)。この時火力発電は256.4万kw出力している。同日の火力発電所の組み合わせは昨年も今年も、
・石炭(200万kW):厚真165万kW、奈井江35万kW
・重油(140万kW):知内70万kW、伊達70万kW
であったと推測されるので、ここでは仮に今年も火力発電が総計256.4万kW出力していたとする。この時ベース電力の石炭は定格出力200万kWで動いていたと想定されるので、ミドル火力の知内と伊達が残りの56.4万kwを出力していたと推定される。したがって電源脱落時の上げ調整力は出力超過運転分含めば最大で(140-56.4)×1.05で87.78万kw程度はあったと推定される。
つまり、電源脱落がこの規模であれば、一部の負荷を切り離すことで周波数を維持し、一時停電で復旧できたということだ。したがって例えば以下のような組み合わせならば、脱落は70万kW程度ですみ、全道停電は起きなかったと考えられる。(*以下ミスと文章の分かりにくさがあったので修正)
・原子力(90万kW) :泊 90万kW
・石炭(105万kW):厚真70万kW、<追記>奈井江35万kW(*文末に書いていたものを加えた。なお5万kW分調整力は減る。)
・重油(140万kW):知内70万kW、伊達70万kW
「この組み合わせが不自然で経済性を考えれば厚真は130万kWのはずだ」という人もいるかもしれないが、そもそもそのようなことは断定しようもないので、反証としてはこれで十分であろう。
また上の表を見ていただければ分かるが、北海道は昼に太陽光発電との関係で、昨年度ベースで80.1万kW、おそらく今年であれば90~100万kWの出力調整が火力発電系統に求められるため、むしろ調整力を確保するために、厚真を130万kW動かすよりも上記のような組み合わせの方が自然だろう。
30分で書いた記事なので過不足あるかもしれないが、おそらくこれで<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」>という主張の論拠に対する反証にはなっているだろう。過不足あれば指摘を願う。特に反原発派からの指摘を期待している。
とはいえ雑に書いた記事なので、我ながら不十分に感じるところもあり、後日もう少し説明を丁寧にし、詳細を検討した論考をまとめたい。
ではでは今回はこの辺で。
========
追記;
この記事を書いた動機についてだが、私は「泊原発を動かせ」という気はない。それは最終的には道民が決めることだ。ただこの機に乗じてデマを広げようとする人が許しがたいだけだ。
========
9/23追記(所内単独運転に対するavlieopis氏のコメントまとめ):
さて、今更感はありますが、貴記事とそのコメント欄及び貴記事に対する牧田氏の反論記事
(https://hbol.jp/175165/2)を拝見しておりますと、「所内単独運転」について、皆様、正しい認識をされていないように感じましたので、僭越ながらこちらにコメントさせて頂きたく存じます。
なお、何分古い知識ですので、今の原子力発電所の運用とは若干異なる可能性があることにつきましてはご容赦願います。
原子力発電所の設備につきましては、
①非安全系(蒸気タービンや交流発電機等、主に発電事業に関係する設備)と
②安全系(原子炉の停止機能や非常時等における冷却機能に関係する設備)
の大きく二つに分けることが、設計の基本的な考えです。
そして、②安全系は①非安全系から、使用する電源やケーブル、配管、設置位置等を独立させることで、①非安全系での故障を②安全系に波及させないような設計にしています。したがって、電源系につきましても、①非安全系と②安全系とでは独立した発電所内母線から給電するようになっています。当然、発電所内母線につきましても、①非安全系と②安全系とではそれぞれ独立した外部電源(外部送電線)と接続されています。
通常運転時、原子力発電所内の電源構成は以下のようになっているはずです。
・①非安全系の機器には、自前の交流発電機で発電した電気を供給し機器を動作させる
・上記の残った分を①’非安全系の送電線に供給(これが原子力発電所から外部に送られる電気になります)
・②安全系の機器には、②’安全系の送電線から電気を供給し機器を動作させる
ここで、外部電源(送電線)が失われるパターンとしては
パターン1:①’非安全系の外部電源(送電線)のみが失われる
パターン2:②’安全系の外部電源(送電線)のみが失われる
パターン3:①’非安全系と②’安全系の両方の外部電源(送電線)が失われる
の3つが考えられます。
パターン1の場合、原子炉の出力を低下させるとともに、タービンを回す蒸気を「主蒸気ダンプ」によって直接復水器に導くことで、プラントトリップ(原子炉の自動停止)を回避し、外部電源(送電線)の復旧までの時間をしのぐことができます。
これを所謂「所内単独運転」といい、実際、過去にいくつかのプラントで発生しています。
http://www.athome.tsuruga.fukui.jp/nuclear/information/athome/157/t_06.html
なお、上記リンク先に記載の通り、プラントによっては復水器へ逃がせる蒸気量が少なく設計されているため、蒸気発生器の水位が変動し、原子炉が自動停止することがあります。
泊3号機は「所内単独運転」に成功した関西電力 大飯3・4号機と同時期に、同じ三菱重工業によって設計・建設されたプラントですので、原子炉の自動停止は回避可能な設計と推察して良いと考えます。
また、コメント欄で「所内単独運転」の継続可能時間について触れられておりましたが、平成18年には日本原子力発電の敦賀2号機において、「所内単独運転」を約1時間20分(系統並列後の出力上昇開始までにも時間がかかっていますので、実質的には「所内単独運転」に近い低負荷での運転を約4時間)行った実績がありますので、それなりに長い時間継続可能であると付け加えておきます。
http://www.japc.co.jp/news/press/2005/pdf/180212.pdf
次にパターン2の場合ですが、②”非常用系の外部電源(送電線)が失われても、①’常用系の電源が健全なため、プラントトリップ(原子炉の自動停止)には至りません。
とはいえ、②”非常用系の外部電源(送電線)が無く、トラブルに対して脆弱な状況となっておりますので、緊急的に自前の交流発電機、あるいは、非常用のディーゼル発電機から②安全系の機器に給電をし、②安全系の電源を確保した上で、外部電源(送電線)の復旧までの時間をしのぎます(原子炉の安全上重要な機器ですので、②安全系の機器の電源は複数個所から給電できるようになっています)。
最後に、パターン3の場合は問答無用でプラントはトリップしますが、設計上はディーゼル発電機から②安全系の機器に給電し、プラントを安全な状態まで停止させます(この際にディーゼル発電機が何らかの原因で動かなければ、福島第一原子力発電所と同じ全交流電源喪失となります)。
送電系統の運用や北海道の電力系統の状態につきましては門外漢なため、「泊原発が動いていたら停電はなかった」かどうかは分かりかねます。
ただ、北海道胆振東部地震が発生した際に、泊発電所に接続している外部電源が健全、あるいはパターン2の状態ならば、泊3号機からの電力供給が可能ですが、パターン1と3の状態ですと電力供給は不可能だった、ということになると考えます。
ども宇佐美です。
仕事の合間に書いているので短めの記事です。
コロラド先生なる人が<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」なのか>という記事を書いていて、これがデマだ、ということを指摘したらいわゆる反原発の人に噛み付かれて仕方ないので簡単に反証しておく。
コロラド先生なる人は簡単に言えば「泊原発が動いていたら停電はなかった、ということはありえない」と言っているのだから、これを反証するのは簡単である。泊原発が稼働していて、苫東厚真火力群が脱落しても全道停電しない発電所の組み合わせパターンを示せばいい。なお泊原発は短時間であれば所内単独運転できるので周波数が乱れただけで即座に落ちるということはないことをあらかじめ指摘しておく。
反証にあたっては今年の電力需給の正確なデータは公開されていないので、2017年の9/6のデータ(上表)を参照する。2018/9/6の停電が起きた時の電力需要は286.0万kwhだったようだが、これは2017/9/6の2:00の発電量とほぼ同じだ(*揚水向けに10.3万kw回していることに注意)。この時火力発電は256.4万kw出力している。同日の火力発電所の組み合わせは昨年も今年も、
・石炭(200万kW):厚真165万kW、奈井江35万kW
・重油(140万kW):知内70万kW、伊達70万kW
であったと推測されるので、ここでは仮に今年も火力発電が総計256.4万kW出力していたとする。この時ベース電力の石炭は定格出力200万kWで動いていたと想定されるので、ミドル火力の知内と伊達が残りの56.4万kwを出力していたと推定される。したがって電源脱落時の上げ調整力は出力超過運転分含めば最大で(140-56.4)×1.05で87.78万kw程度はあったと推定される。
つまり、電源脱落がこの規模であれば、一部の負荷を切り離すことで周波数を維持し、一時停電で復旧できたということだ。したがって例えば以下のような組み合わせならば、脱落は70万kW程度ですみ、全道停電は起きなかったと考えられる。(*以下ミスと文章の分かりにくさがあったので修正)
・原子力(90万kW) :泊 90万kW
・石炭(105万kW):厚真70万kW、<追記>奈井江35万kW(*文末に書いていたものを加えた。なお5万kW分調整力は減る。)
・重油(140万kW):知内70万kW、伊達70万kW
「この組み合わせが不自然で経済性を考えれば厚真は130万kWのはずだ」という人もいるかもしれないが、そもそもそのようなことは断定しようもないので、反証としてはこれで十分であろう。
また上の表を見ていただければ分かるが、北海道は昼に太陽光発電との関係で、昨年度ベースで80.1万kW、おそらく今年であれば90~100万kWの出力調整が
30分で書いた記事なので過不足あるかもしれないが、おそらくこれで<北海道胆振東部地震「泊原発が動いていれば停電はなかった」論はなぜ「完全に間違い」>という主張の論拠に対する反証にはなっているだろう。過不足あれば指摘を願う。特に反原発派からの指摘を期待している。
とはいえ雑に書いた記事なので、我ながら不十分に感じるところもあり、後日もう少し説明を丁寧にし、詳細を検討した論考をまとめたい。
ではでは今回はこの辺で。
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追記;
この記事を書いた動機についてだが、私は「泊原発を動かせ」という気はない。それは最終的には道民が決めることだ。ただこの機に乗じてデマを広げようとする人が許しがたいだけだ。
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9/23追記(所内単独運転に対するavlieopis氏のコメントまとめ):
さて、今更感はありますが、貴記事とそのコメント欄及び貴記事に対する牧田氏の反論記事
(https://hbol.jp/175165/2)を拝見しておりますと、「所内単独運転」について、皆様、正しい認識をされていないように感じましたので、僭越ながらこちらにコメントさせて頂きたく存じます。
なお、何分古い知識ですので、今の原子力発電所の運用とは若干異なる可能性があることにつきましてはご容赦願います。
原子力発電所の設備につきましては、
①非安全系(蒸気タービンや交流発電機等、主に発電事業に関係する設備)と
②安全系(原子炉の停止機能や非常時等における冷却機能に関係する設備)
の大きく二つに分けることが、設計の基本的な考えです。
そして、②安全系は①非安全系から、使用する電源やケーブル、配管、設置位置等を独立させることで、①非安全系での故障を②安全系に波及させないような設計にしています。したがって、電源系につきましても、①非安全系と②安全系とでは独立した発電所内母線から給電するようになっています。当然、発電所内母線につきましても、①非安全系と②安全系とではそれぞれ独立した外部電源(外部送電線)と接続されています。
通常運転時、原子力発電所内の電源構成は以下のようになっているはずです。
・①非安全系の機器には、自前の交流発電機で発電した電気を供給し機器を動作させる
・上記の残った分を①’非安全系の送電線に供給(これが原子力発電所から外部に送られる電気になります)
・②安全系の機器には、②’安全系の送電線から電気を供給し機器を動作させる
ここで、外部電源(送電線)が失われるパターンとしては
パターン1:①’非安全系の外部電源(送電線)のみが失われる
パターン2:②’安全系の外部電源(送電線)のみが失われる
パターン3:①’非安全系と②’安全系の両方の外部電源(送電線)が失われる
の3つが考えられます。
パターン1の場合、原子炉の出力を低下させるとともに、タービンを回す蒸気を「主蒸気ダンプ」によって直接復水器に導くことで、プラントトリップ(原子炉の自動停止)を回避し、外部電源(送電線)の復旧までの時間をしのぐことができます。
これを所謂「所内単独運転」といい、実際、過去にいくつかのプラントで発生しています。
http://www.athome.tsuruga.fukui.jp/nuclear/information/athome/157/t_06.html
なお、上記リンク先に記載の通り、プラントによっては復水器へ逃がせる蒸気量が少なく設計されているため、蒸気発生器の水位が変動し、原子炉が自動停止することがあります。
泊3号機は「所内単独運転」に成功した関西電力 大飯3・4号機と同時期に、同じ三菱重工業によって設計・建設されたプラントですので、原子炉の自動停止は回避可能な設計と推察して良いと考えます。
また、コメント欄で「所内単独運転」の継続可能時間について触れられておりましたが、平成18年には日本原子力発電の敦賀2号機において、「所内単独運転」を約1時間20分(系統並列後の出力上昇開始までにも時間がかかっていますので、実質的には「所内単独運転」に近い低負荷での運転を約4時間)行った実績がありますので、それなりに長い時間継続可能であると付け加えておきます。
http://www.japc.co.jp/news/press/2005/pdf/180212.pdf
次にパターン2の場合ですが、②”非常用系の外部電源(送電線)が失われても、①’常用系の電源が健全なため、プラントトリップ(原子炉の自動停止)には至りません。
とはいえ、②”非常用系の外部電源(送電線)が無く、トラブルに対して脆弱な状況となっておりますので、緊急的に自前の交流発電機、あるいは、非常用のディーゼル発電機から②安全系の機器に給電をし、②安全系の電源を確保した上で、外部電源(送電線)の復旧までの時間をしのぎます(原子炉の安全上重要な機器ですので、②安全系の機器の電源は複数個所から給電できるようになっています)。
最後に、パターン3の場合は問答無用でプラントはトリップしますが、設計上はディーゼル発電機から②安全系の機器に給電し、プラントを安全な状態まで停止させます(この際にディーゼル発電機が何らかの原因で動かなければ、福島第一原子力発電所と同じ全交流電源喪失となります)。
送電系統の運用や北海道の電力系統の状態につきましては門外漢なため、「泊原発が動いていたら停電はなかった」かどうかは分かりかねます。
ただ、北海道胆振東部地震が発生した際に、泊発電所に接続している外部電源が健全、あるいはパターン2の状態ならば、泊3号機からの電力供給が可能ですが、パターン1と3の状態ですと電力供給は不可能だった、ということになると考えます。
コメント
コメント一覧
いくつか質問させてください。
・所内単独運転についてのリンク先ですが、「泊発電所1号機及び2号機の安全性に関する総合的評価」とあるのですが、3号機についても同様と考えたのはなぜでしょうか?(「主蒸気ダンプ容量が約70%であり、所内単独運転が期待できる設計となっていること」あたりですよね?)
・脱落が165万kwでブラックアウトして70万kw程度なら防げるという根拠はどこにあるのでしょか?個人的にはうまく停電させられば(例えば札幌を切り離す) 165万kw が脱落してもブラックアウトは避けられたのではないかと思っています。
コロラド先生の記事では南早来変電所のダメージについても言及されていますが、この点はこれからの調査待ちですね。
それぞれの点について。
・短い時間で書いたので見逃してました。1、2と3は同じPWRで三菱重工製なので、3になって安全性が落ちるということはないだろうと思いますが、組み合わせとしては1、2を稼働という組み合わせを考えるべきだったかもしれません。いずれにしろ結論は変わりません。
・脱落は厚真の70万kwという想定です。震度2で泊は今まで停止したことはないでしょう。そして上げ調整力が70万kw以上作ることは可能です。
・地震後も17分は送電網は落ちなかったので、変電所は動いていたと考えるべきでしょう
追記:
北電のリリースによると変電所に大きな被害はなかったとのことです。南早来1号線が一部断線とのことですが、負荷が落ちる方向に働く事案ですし、厚真の脱落はすでに記事に織り込み済みです。
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/oshirase/__icsFiles/afieldfile/2018/09/06/h08.pdf
以上です。
>脱落が165万kwでブラックアウトして70万kw程度なら防げるという根拠はどこにあるのでしょか?個人的にはうまく停電させられば(例えば札幌を切り離す) 165万kw が脱落してもブラックアウトは避けられたのではないかと思っています。
>>脱落は厚真の70万kwという想定です。震度2で泊は今まで停止したことはないでしょう。そして上げ調整力が70万kw以上作ることは可能です。
こちら、私の意図が伝わらなかったようです。泊が動いていたら、ということではなく、今回の地震で苫東厚真の165万kwが脱落したわけですが、発電量に合わせて負荷を減らす(停電させる)ことができれば、今回のブラックアウトは避けられたのではないかと思っています。今回のブラックアウトの要因には発電量の変動以外のものもあるのではないかと考えています。であれば脱落が165万kw でも 70万kw でもブラックアウトの可能性はあるのではないでしょうか?
>地震後も17分は送電網は落ちなかったので、変電所は動いていたと考えるべきでしょう
これが不思議なんです。17分の間に発電量に合わせて負荷を切り離すことがなぜできなかったのか。
----
前回のコメントを書いてから気が付いたのですが、単独運転についての資料内の「主蒸気ダンプ容量が約70%」とは、発電用タービンと原子炉を切り離してタービンに供給していた蒸気を捨てられる(ダンプできる)ということではないでしょうか?単独運転できるのは「発電所」ではなく「原子炉」のことではないでしょうか。この状態だと発電機は止まっているので発電所は送電網から脱落していることになります。
もしそうだとすると、宇佐美さんの「周波数が乱れただけで即座に落ちるということはない」という前提は崩れませんか?
簡単に返信します。
====
・今回の地震で苫東厚真の165万kwが脱落したわけですが、発電量に合わせて負荷を減らす(停電させる)ことができれば、今回のブラックアウトは避けられたのではないかと思っています。
→おっしゃる通り原因は他にもあるのかもしれませんが、そこはしばらく調査を待つしかないと思います。ただ北電の負荷切り離しの準備は130万kWということだったので、いずれにしろ電源脱落が全ての契機なのは間違い無いと思います。
・〜もしそうだとすると、宇佐美さんの「周波数が乱れただけで即座に落ちるということはない」という前提は崩れませんか?
→これは他の人にも言われたのですが、この記事は周波数を維持できるという前提で書いているので、ご指摘の部分は本記事の本筋と何も関係ありません。実際そういう記事になってますよね?当初記事を書き始めた時に他の可能性(130万kWの負荷切り離しの余地があるなら、原発もある程度の事故なら一時切り離してその間周波数調整して復帰できますよ、実際そういう例もあるという話)も含めて書こうと思ったのですが、結局短時間でかけるのがこの範囲で、該当部分もやや不自然に残ってしまっただけです。過不足の「過」に当たる部分ですかね。ややこしくて申し訳ありませんが、なにぶん短時間無報酬で書いた記事ですのでご容赦ください。
(ただ、私の中で結論は出ていません。)
追加考慮した方がいいかなと思っているのは、、原発が動いているなら調整用として京極揚水発電所1,2号機(40万kW)も稼働しているはずで、そう考えると調整余裕もあるので厚真は130万kW稼働していたのではないでしょうか。(→事故時の対応力も若干増えますが)
厚真は70万kWの前提、周波数を維持できるという前提、と推測・仮置きが多いのに「この機に乗じてデマを広げようとする人が許しがたい」とまで断言してしまうのは書きすぎのように思います。
(「kw」ではなく「kW」ですね。単位の表記を間違えると記事の信用度も下がってしまうのでご注意ください。。)
指摘については以下の通りです。
・ご指摘踏まえ単位表記修正いたしました。(内容には関係ないので追記しておりません)勢いで一気に小文字書いてしまったのですがよくなかったですね。今後短時間で記事作ってあげるような荒いことはやめます
・揚水の影響などについては今後検証していきます。
・電源構成については、〜だったはずだ、ということはいくらでもできるのですが、そこは詳細なたられば論争になると議論が平行線になってしまうので、何か筋の通った考え方というものが必要な気がします。私自身も今は答えを持ち合わせてないので少し時間をかけて検証してみます。
・私自身は原発推進とまでは言わないまでも、プルサーマルに位置付けられた原発の稼働はやむを得ないという立場です。理由はまた書きますが、そのため「原発が稼働していても停電は起きていた」という主張に関して「そうは言い切れないだろ」と強く感情的に反発してしまったところがありそこは反省しています。ただ表現は”強すぎる”、とは思うものの、自分の主張自体はおかしいとは思わないのでこのままにいたします。
全般的に感情的になりすぎたこと、増長していたことは反省しており、今後は丁寧な議論を心がけるようにします。
なるほど
>ただ北電の負荷切り離しの準備は130万kWということだったので、
私の知りたかったことはここです。コロラド先生の記事では、泊が発電していても、変電所が打撃を受けてもともと弱かった送電網をコントロール出来なくてブラックアウトするだろうという結論ですが、宇佐美さんは送電網に異常がなければ北電の想定内の130万kW未満だからブラックアウトしない、ということですね。(教えてもらったリンクの情報で、厚真の変電所が無傷なことはわかりました。ただ超高圧の送電線が一つ切れているので、これが送電網に与えるダメージが気になるところです)
うーん、私としては不本意ですがどちらの記事が正しいのかは正式な報告書待ちになってしまいました...
あと「所内単独運転」について、もしもっと情報をお持ちでしたら教えていただきたいです。
http://www.yonden.co.jp/press/re1102/data/pr003-01.pdf
によると「主蒸気ダンプ」というのはタービンを回さずに復水器へ戻すバイパス路のようで、これだとエネルギーの逃がし先がなく、割と短時間で停止に追い込まれるように思います。(or 海へ熱湯を排出する?)
もしご存じでしたらよろしくお願いします。
私も詳しいことは知らないのですが、火力発電の場合は10分~15分弱が限界なようですね。原発ならばもう少し短いのかもしれません。
いずれにしろソース引き続き探し続けて何かわかったらコメント欄に追記いたします。
さて、今更感はありますが、貴記事とそのコメント欄及び貴記事に対する牧田氏の反論記事(https://hbol.jp/175165/2)を拝見しておりますと、「所内単独運転」について、皆様、正しい認識をされていないように感じましたので、僭越ながらこちらにコメントさせて頂きたく存じます。
なお、何分古い知識ですので、今の原子力発電所の運用とは若干異なる可能性があることにつきましてはご容赦願います。
原子力発電所の設備につきましては、
①非安全系(蒸気タービンや交流発電機等、主に発電事業に関係する設備)と
②安全系(原子炉の停止機能や非常時等における冷却機能に関係する設備)
の大きく二つに分けることが、設計の基本的な考えです。
そして、②安全系は①非安全系から、使用する電源やケーブル、配管、設置位置等を独立させることで、①非安全系での故障を②安全系に波及させないような設計にしています。
したがって、電源系につきましても、①非安全系と②安全系とでは独立した発電所内母線から給電するようになっています。
当然、発電所内母線につきましても、①非安全系と②安全系とではそれぞれ独立した外部電源(外部送電線)と接続されています。
通常運転時、原子力発電所内の電源構成は以下のようになっているはずです。
・①非安全系の機器には、自前の交流発電機で発電した電気を供給し機器を動作させる
・上記の残った分を①’非安全系の送電線に供給(これが原子力発電所から外部に送られる電気になります)
・②安全系の機器には、②’安全系の送電線から電気を供給し機器を動作させる
パターン1の場合、原子炉の出力を低下させるとともに、タービンを回す蒸気を「主蒸気ダンプ」によって直接復水器に導くことで、プラントトリップ(原子炉の自動停止)を回避し、外部電源(送電線)の復旧までの時間をしのぐことができます。
これを所謂「所内単独運転」といい、実際、過去にいくつかのプラントで発生しています。
http://www.athome.tsuruga.fukui.jp/nuclear/information/athome/157/t_06.html
なお、上記リンク先に記載の通り、プラントによっては復水器へ逃がせる蒸気量が少なく設計されているため、蒸気発生器の水位が変動し、原子炉が自動停止することがあります。
泊3号機は「所内単独運転」に成功した関西電力 大飯3・4号機と同時期に、同じ三菱重工業によって設計・建設されたプラントですので、原子炉の自動停止は回避可能な設計と推察して良いと考えます。
また、コメント欄で「所内単独運転」の継続可能時間について触れられておりましたが、平成18年には日本原子力発電の敦賀2号機において、「所内単独運転」を約1時間20分(系統並列後の出力上昇開始までにも時間がかかっていますので、実質的には「所内単独運転」に近い低負荷での運転を約4時間)行った実績がありますので、それなりに長い時間継続可能であると付け加えておきます。
http://www.japc.co.jp/news/press/2005/pdf/180212.pdf
次にパターン2の場合ですが、②”非常用系の外部電源(送電線)が失われても、①’常用系の電源が健全なため、プラントトリップ(原子炉の自動停止)には至りません。
とはいえ、②”非常用系の外部電源(送電線)が無く、トラブルに対して脆弱な状況となっておりますので、緊急的に自前の交流発電機、あるいは、非常用のディーゼル発電機から②安全系の機器に給電をし、②安全系の電源を確保した上で、外部電源(送電線)の復旧までの時間をしのぎます(原子炉の安全上重要な機器ですので、②安全系の機器の電源は複数個所から給電できるようになっています)。
最後に、パターン3の場合は問答無用でプラントはトリップしますが、設計上はディーゼル発電機から②安全系の機器に給電し、プラントを安全な状態まで停止させます(この際にディーゼル発電機が何らかの原因で動かなければ、福島第一原子力発電所と同じ全交流電源喪失となります)。
送電系統の運用や北海道の電力系統の状態につきましては門外漢なため、「泊原発が動いていたら停電はなかった」かどうかは分かりかねます。
ただ、北海道胆振東部地震が発生した際に、泊発電所に接続している外部電源が健全、あるいはパターン2の状態ならば、泊3号機からの電力供給が可能ですが、パターン1と3の状態ですと電力供給は不可能だった、ということになると考えます。
以上、長文となりお詫び申し上げます。
勉強不足で恥じ入るばかりですが、コメント公開させていただきました。
ここで、外部電源(送電線)が失われるパターンとしては
パターン1:①’非安全系の外部電源(送電線)のみが失われる
パターン2:②’安全系の外部電源(送電線)のみが失われる
パターン3:①’非安全系と②’安全系の両方の外部電源(送電線)が失われる
の3つが考えられます。
もしご異存なければ、コメント繋げたものをブログの本文にも追記で書き足したいと思います。
アゴラフェローの諸葛宗男さんの技術解説は、他ではなかなか聞けないので印象に残りました。
対して宇佐美さんは、やはり元官僚ということで、全体のシステムをどう調整するかを重視しているということでしょうか。
さて、「所内単独運転」ですが、某先生のために英語版の解説を探していたら、こんなのが見つかりましたので、参考までにご報告しておきます。
「Some NPPs are designed to operate in an island mode」とあるので、きちんと設計してあれば大丈夫のようですね。
なお、私は原子力の専門家ではありませんので、内容については残念ながらコメントできません。
《原文》
IAEA-TECDOC-1770
Design Provisions for Withstanding Station Blackout at Nuclear Power Plants
International Atomic Energy Agency
Vienna, 2015
2.2.2. Second level of defense in depth
Some NPPs are designed to operate in an island mode such that the plant supplies power to its own auxiliary systems. This capability is available when the entire external load connected to the power plant is disconnected and there is no reactor or turbine trip. During this ‘house-load’ operating mode, the reactor operates at a reduced power level (typically 5% to 10% of full power) that is sufficient to generate enough electrical power to supply auxiliaries. This type of design affords an uninterrupted power supply for the house loads.
https://www-pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/TE-1770_web.pdf
《仮訳》
IAEA-TECDOC-1770
原子力発電所における停電防止のための設計規定
国際原子力機関
2015年 ウィーン
2.2.2. 第2レベルの防御
原子力発電所の中には、単独で自らの所内システムに電力を供給し、所内独立運転ができるように設計されているものがある。 この機能は、発電所に接続された外部負荷全体が切断され、原子炉やタービンのトリップ[停止]がない場合に利用できる。 この「所内単独」運転モードの間、原子炉は、所内に供給するために低減された電力レベル(通常、定格出力の5%〜10%)で動作する。 このタイプの設計は、所内負荷のための中断のない電力供給を可能にする。
問題の根本は、やはり原発を止めていたことでしょう。そのために、発電設備能力のゆとりが少なくなっていたことが根本原因でしょう。
また、苫東厚真と泊原発は距離的にも十分に離れており、どちらか一方が自然災害などで大きな損傷を受けたとしても、他の一方で代替できるようになって配置され、送電網もそのように作られていたようです。
泊原発周辺は震度2でしかありませんてした。
もしも稼働していても、原発を止める必要もありませんでした。
ブラックアウトはほぼ間違いなく回避できたでしょう。
泊りが原発でなくても、要するに離れた場所に二つの主力発電所があるという事が重要だったわけです。
その一方を止めてしまって、7年間程も放置していたわけですから、残った施設が大規模な災害に襲われたら、全滅もやむなしですね。
今回の状況を見て、非常に恐ろしさを感じたのは東京です。東電の福島と新潟の原発が全て停止したままです。東京電力は遠隔地からの大規模電力供給設備を欠いたままです。
東京を中心とする大震災が発生し、周辺の発電設備を失ったらどうするつもりなんでしょうかね?
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