「育児雑誌の特集号についている離乳食は、主婦を専業にしている母親の趣味をみたすようにできているので、実用的でない。すり鉢ですったりする料理がおおいのは、調理が趣味である母親を満足させるためである。」
(文庫版『定本育児の百科 中』p.65)
「ところが、赤ちゃんに楽しい人生を用意しようとしないで、義務の人生をおしつける母親がおおい。(中略)離乳食献立と首っぴきで、離乳食をつくり、毎日これだけは、ぜひ食べさせようと努力する。赤ちゃんが離乳食を食べてくれればよろこび、食べてくれないと悲しむ。こういう母親は、赤ちゃんに1日何カロリー食べさせたかを計算するが、赤ちゃんに今日は、どれだけ楽しい思いをさせたかということをかんがえない」
(同前p.115)
「食事は栄養さえたりていればなるべく簡単にすませて、生活を楽しむことに時間をついやすという人間の生き方に、赤ちゃんもならさねばならぬ。ごはんを食べたがらぬ子には、副食に十分の動物性タンパク(魚、卵、牛肉、豚肉、鶏肉)を与えればよい。それも食べないなら、ミルクや牛乳を今までのようにつづけていい。」
(同前、p.412)
離乳食より楽しい人生。こんなことを言ってくれる育児書がほかにあるだろうか。