政治資金規正法は、政治資金を「賄賂」のように、それ自体を「悪」として規制する法律ではない。政治活動を、それがどのような政治資金によって行われているのかも含めて透明化して国民の監視と批判にさらし、それを主権者たる国民が判断する、という基本理念に基づく法律だ。「規制」ではなく「規正」とされているのも、政治資金を透明化によって正しい方向に向けようとする考え方に基づいている。
同法の理念の実現は、基本的には、法律の内容についての指導・啓蒙、適法性についてのチェック、収支報告書の記載に誤りがあった場合の自主的な訂正、それに対するマスコミや国民の批判などの手段に委ねられるべきであり、罰則の適用は、他の手段では法律の理念が達成できないような場合に限られるべきだ。歴史的に見ても、政治資金は徐々に透明化されてはきたものの、実態と法律の規定との間には相当大きなギャップが存在していたのが現実だ。違反が全くないと言い切れる政治家は少数なのではなかろうか。
政治資金規正法違反を贈収賄と同列にとらえ、政治資金規正法に違反して政治資金の透明性を害した行為があれば、検察は、いかなる行為を選択して摘発することも可能で、それについて説明責任を負わないという考え方は、同法の理念に反するばかりでなく、検察の権力を政治より圧倒的に優位に位置づけることになりかねない。健全な民主主義の基盤としての権力分立の仕組みをも否定するいわば「検主主義」の考え方と言うべきであろう。
今回の事件については、他の手段によって対処可能な単なる「形式犯」ではない、実質を伴った悪質な犯罪だと判断した根拠と基本的な考え方について検察に明確な説明が求められるのは当然だ。
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