障害者「農園就労」大手エスプールが批判に答えた 「雇用率を金で売る代行ビジネス」との非難も

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エスプールの農園
エスプールの農園。本社人事部から様子を見に来た顧客企業の社員が障害者と一緒に農作業をしていた(記者撮影)
業者が企業に農園などを貸し出し、そこで障害者を働かせる雇用支援ビジネス。障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられる中、新たな手段として注目を集めている。厚生労働省の調査によると、2023年11月時点で1212社以上(同年3月比12%増)がサービスを利用し、少なくとも7371人(同12%増)が就労する。
こうした雇用形態に違法性はないが、「経済活動への参加と言えない」「雇用率を金で買っている」との指摘も多い。2023年1月には、業界最大手エスプールを名指しで非難する報道があり、風評の悪化から東証プライム市場に上場している株はストップ安に。この出来事は「エスプール・ショック」と呼ばれ、関係者に激震を与えた。
エスプールは「農園型就労」を2010年ごろに考案し、現在は首都圏を中心に約50カ所の農園を運営。4200人を超える障害者が働き、顧客企業は約650社に上る。当時の騒動をどう振り返っているのか、そして今なお残る批判をどう受け止めているのか。関連事業を担う子会社エスプールプラスの和田一紀社長を直撃した。

――農園を企業に貸し出すビジネスモデルは、そもそもどのようにして生まれたのですか。

出発点は障害者の経済的自立を実現させたい、という志だ。エスプールはもともと、人材派遣サービスを通して社会課題の解決に取り組んできた。その中で働きたくても働けない障害者が大勢いて、社会的に孤立している状況を知り、何とかできないかとスキームを考えた。

だから、法定雇用率の達成やダイバーシティーの推進といった、企業側のメリットに主眼を置くわけではない。あくまでも仕事を得られず、生活に困っている人の力になることが目的だ。

当初は農業そのもので利益を出して事業を回すモデルだった。しかしうまくいかず、社員への収穫物の配布という「福利厚生」を担う人材として雇ってもらう形になった。

「隔離」と言われるのは納得できない

――農園での就労は、「その企業の事業とは無関係のことをやらせている」「経済活動に参加させていない」との批判があります。「障害者を隔離している」との声も。

もちろん、本業に関わる仕事で障害者を雇用するのがベストだ。企業だってそうしたいだろう。ただ、そのニーズがない時はどうするのか。障害特性上、できる業務に制約のある人もいる。当社はそうした方々と、本業では雇えない会社をつないでいるだけだ。

私はこの事業を始めた当時、さまざまな障害者雇用の現場を視察した。その中には、オフィスの一室でシュレッダーを1日中かけさせている会社もあった。「本業に関わってさえいればよい」という考えには違和感を覚える。

農園就労は雇用側のサポートがないと成立しない。企業側は監督者を農園に常駐させ、本社部門の人も定期的に様子を見に来る。

ケアは本当に大変だ。服薬しすぎて体調を崩すとか、朝起きられなくて来ないとか、トラブルは日常茶飯事。それでも顧客企業は障害者と真摯に向き合っている。「隔離」と言われるのは納得できない。

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