――農園を企業に貸し出すビジネスモデルは、そもそもどのようにして生まれたのですか。
出発点は障害者の経済的自立を実現させたい、という志だ。エスプールはもともと、人材派遣サービスを通して社会課題の解決に取り組んできた。その中で働きたくても働けない障害者が大勢いて、社会的に孤立している状況を知り、何とかできないかとスキームを考えた。
だから、法定雇用率の達成やダイバーシティーの推進といった、企業側のメリットに主眼を置くわけではない。あくまでも仕事を得られず、生活に困っている人の力になることが目的だ。
当初は農業そのもので利益を出して事業を回すモデルだった。しかしうまくいかず、社員への収穫物の配布という「福利厚生」を担う人材として雇ってもらう形になった。
「隔離」と言われるのは納得できない
――農園での就労は、「その企業の事業とは無関係のことをやらせている」「経済活動に参加させていない」との批判があります。「障害者を隔離している」との声も。
もちろん、本業に関わる仕事で障害者を雇用するのがベストだ。企業だってそうしたいだろう。ただ、そのニーズがない時はどうするのか。障害特性上、できる業務に制約のある人もいる。当社はそうした方々と、本業では雇えない会社をつないでいるだけだ。
私はこの事業を始めた当時、さまざまな障害者雇用の現場を視察した。その中には、オフィスの一室でシュレッダーを1日中かけさせている会社もあった。「本業に関わってさえいればよい」という考えには違和感を覚える。
農園就労は雇用側のサポートがないと成立しない。企業側は監督者を農園に常駐させ、本社部門の人も定期的に様子を見に来る。
ケアは本当に大変だ。服薬しすぎて体調を崩すとか、朝起きられなくて来ないとか、トラブルは日常茶飯事。それでも顧客企業は障害者と真摯に向き合っている。「隔離」と言われるのは納得できない。
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