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若き日に受けたレジェンドからの言葉……音楽シーンを創り上げてきた日本の超有名ドラマーたちによる知られざるエピソード

STUDIO GREAT

数々の音楽シーンで活躍する日本のドラマーたち。彼らの魅力に迫る人気インタビュー連載が、「STUDIO GREAT~日本のスタジオ・シーンを創造した凄腕ドラマーたち~」として書籍化された。著者は雑誌「リズム&ドラム・マガジン」の編集部に所属し、本連載を担当してきた村田誠二だ。さまざまな時代を生きてきたレジェンドたちが村田に語る、ミュージシャンとしてのルーツ、キャリアや制作の裏側にまつわるエピソードとは?


●若き日の田中清司に影響を与えたレジェンドの言葉

まず本書で紹介されているのは、業界の重鎮とも言える田中清司へのインタビューだ。田中は中学でドラムを始めた。以降はドラマーとしてキャリアを積み、これまで多様なジャンルのアーティストのレコーディングやツアーに参加してきた。

田中がキャリアを積みはじめていた時期、特に好きだったドラマーとして挙げているのがジャッキー吉川だ。吉川は、1960年代後半~1970年代に活躍したバンド「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」でドラムを担当するレジェンド中のレジェンド。田中はジャズ喫茶で彼の演奏を初めて見たときに「この人に習いたい」と感じ、実際に指導も受けにいった。そして吉川は、田中のドラム人生に影響を与える言葉も残している。

新宿ACBでブルーコメッツと2バンドでやったときに、ジャッキーさんのセットを使わせてもらったんだけど、ジャッキーさんが観てるからって、一生懸命、手の尽くす限り叩いたわけ。で、ステージが終わった後、ジャッキーさんが「上でコーヒーでも飲もうか」って言うんで「きた!褒めてくれるんだな」と思ったら、ジャッキーさんが一言「田中、お前、あんなに叩いちゃダメだよ」って。「ドラムっていうのはリズムなんだよ。リズムをちゃんとやらなきゃダメだ」って言われてさ。

「STUDIO GREAT~日本のスタジオ・シーンを創造した凄腕ドラマーたち~」より

「他のドラマーに負けないように」と必死になっていた田中への一言を、彼はその後も肝に銘じているのだという。

●失敗から学び、そしてプロの道へ

インタビューを通して音楽業界の厳しさを語っていたのが、ドラマー・音楽プロデューサーとして活躍する江口信夫だ。江口は大学の先輩だったバンド「PRISM」の初代ドラマー・鈴木“リカ”徹に誘われ、20歳のときに歌手である桑江知子のツアーへ参加することになる。

やったのはいいんですけど、やっぱり失敗が多くてすぐクビになりました。

あの曲、レコーディングは山本(秀夫)さんなんですよね。まさにその曲のテンポ感が難しくてテンポ出しを間違えたり、もうそのツアーは散々で、プロの洗礼を受けて、これはちゃんとやらないとダメだと。

「STUDIO GREAT~日本のスタジオ・シーンを創造した凄腕ドラマーたち~」より

当時の自分について、「周りから天才だとか言われて調子に乗ってた」と振り返る江口。

でもその失敗があって、真剣にやり出したのがプロの道に入るきっかけですね。

「STUDIO GREAT~日本のスタジオ・シーンを創造した凄腕ドラマーたち~」より

●伝説的バンド「REBECCA」加入の裏側

音楽業界の裏話は他にも。語るのは、楽曲『フレンズ』などで爆発的人気を誇ったロックバンド「REBECCA」のドラマー・小田原豊だ。

独学でドラムを始めた小田原は、高校卒業後に複数のバンドを掛け持ち。ライブハウス「Shibuya eggman」を拠点に活動していた。そのときすでに「REBECCA」も活動を始めていたが小田原はもともとメンバーではなかったため、当時はあくまで音楽仲間としての関係性だったそう。ところが小田原はある日、なかなか売れないと悩む「REBECCA」のベース・高橋教之とキーボードの土橋安騎夫からバンドへの加入を打診される。

正直「このバンドかぁ……」って思いましたよ(笑)。

だから土橋さんに、正直に「今のままのレベッカじゃ絶対に売れないと思います。NOKKOの個性を前面に出して、売れるバンドにするつもりで育てていく気がないなら、僕はやりません」ってハッキリ言ったの。そうしたら「実は今、事務所もその方向で動いてる」と。

「STUDIO GREAT~日本のスタジオ・シーンを創造した凄腕ドラマーたち~」より

結果、バンドにとっての転換期に「REBECCA」のドラムも掛け持つことになる小田原。その後すぐに、毎日2時間しか寝られないほど多忙な日々を送ることになっていった。

日本の名だたるドラマーたちから明かされる、無名時代や大ヒット中の裏側といった業界エピソードの数々。本書にはあらゆるジャンルの音楽ファン必見の内容が満載なので、ぜひ一度手に取ってみてはいかがだろうか。

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タグ : レビュー・コラム

掲載: 2024年12月16日 19:30